涼野くんから、告白されたわけだが。

二日経ってもわたしは答えを出せずにいた。別に涼野くんが嫌いなわけではないんだけど、どうして涼野くんがクラスの隅っこにいるわたしに好意を持っているのか、それがわからなかった。もしかしたら罰ゲームかな、とか考えもしたけれどそれは自分が虚しくなったので考えないことにした。

一方の涼野くんはいつもと変わらなかった。普通に生活してる。それがまたわたしを混乱させた。





昼休み、トイレに向かおうと廊下に出たところで「名字名前!」と名前を大声で呼ばれた。びっくりして声のした方を向くとそこには南雲くんが仁王立ちしていた。

「はい…?」
「ちょっと来い」
「え!?」

腕を掴まれ引っ張られてそのまま屋上手前の階段までやって来た。わたしは南雲くんになぜか睨まれている。訳がわからない。泣いてもいいですか。

「お前さあ、結局どうなの?」
「な、何がですか」
「風介に告られただろ」
「…え」

風介って、す、涼野くんのことだよね。というかどうして南雲くんが知ってるんですか。突然のことにわたしは何も言えなかった。
きょろきょろと視線を泳がせていると、南雲くんは大きなため息をついた。ひいい怒ってる!

「早く返事してやれよ」

そう言うと南雲くんは背中を向けて階段を降りていった。呆れたような声だった。

南雲くんの姿が見えなくなったのを確認してから、わたしも階段を降りた。当初の目的を果たさなければ。

「…トイレ…」



いい加減言わなければいけない。というか、また南雲くんにああいう事されるのが怖い。覚悟を決めろわたし!
しかし、頭では言わなきゃ言わなきゃと思っているのに、わたしはタイミングさえも掴めずにいた。
そして、なんだかんだで放課後になってしまったわけで。

(…明日、頑張ろう)

そうやってズルズル引っ張るのがよくないのに。自分を引っぱたきたい気持ちでいっぱいだった。(でもそこは思いとどまる)

帰り道、大通りの歩道をとぼとぼ歩いていた。隣を自転車が通りすぎていく。何気なく大通り沿いのコンビニを見ると、

「!」

入り口に涼野くんがいた。一人で携帯をいじってるみたいだ。っていうかわたし立ち止まっちゃった!どうしよう!

『早く返事してやれよ』

南雲くんの言葉が浮かぶ。そうだ、今はチャンスなんだ!話しかけるぞ!


「涼野く…」

言いながら涼野くんに近付くと、ちょうどコンビニから赤い髪の男の子が出てきた。まさかの…南雲くんだ。

「…………」

き…気まずい!タイミング悪すぎる!微妙な距離で動きを止めてしまったわたしは、つい二人を交互に見た。
にやりと笑う南雲くんが見えた。

「…じゃあオレ、先に帰るから」

南雲くんは涼野くんの背中をばちんと叩き、肉まんを渡して自転車で走り去ってしまった。…これって、

(ふ、二人きり!)

そうだ、言うなら今なのか!南雲くんありがとう!

「あの、す、涼野くん!」

ずんずんと近付いて彼の前で立ち止まり、言おうとしたところでふと思った。

(…なんて返事するか決めてなかった…!!)

うわあああわたしの無計画、せっかく南雲くんがお膳立てしてくれたのに!結局この間と同じようにええと、あの、と繰り返した。ガチャン、音が聴こえてふと見ると、涼野くんがすぐ隣にある自転車のストッパーを外しているところだった。

「歩きながら話そう」
「は、い」

自転車を押して歩く涼野くんの背中を追った。





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