おかしい。

僕の彼女、名前のことだ。



昨日の帰り際に、明日空いてるかな?と尋ねたら、彼女は宿題おわってないんだよね、と苦笑いで言った。


「手伝おうか?」
「ありがとう。でも、いつも照美くんに頼ってばかりだから、たまには自分の力で頑張りたいなー、なんて」
「そう?」
「うん」
「じゃあ、わからなくなったらいつでも聞きにおいで」
「そうするね」

この時点で不自然だと気付かなかったのか。


そして今日、デメテルと電話をしていたら「名前ちゃんならお洒落してどこかに出かけて行ったぜ」とか言うじゃないか!
いったいどこに行くというのか。それよりもなぜ僕に嘘をついたのか。不安がぐるぐると頭の中を渦巻いた。



携帯が震えた。メールだった。

『商店街の雑貨屋で名前ちゃん発見
男連れてる
話しかけるか?』

男を連れてる、だと

『僕が行く』

短く返信して家を飛び出した。



「アフロディ、こっちだ」

雑貨屋の前でデメテルが待ち構えていた。ずっと見張っていたのかこいつ

「…ほら、あそこ」

指差す先には名前と雷門中の吹雪士郎がいた。

「なんで吹雪くんが」

名前と吹雪くんは仲良さげに会話をしている。名前はこのために僕に嘘をついたというのか。

何かを買ったようで、会計を済ませて店を出る2人を陳列棚の影から覗いていた。


「まだ尾行するのか?」
「もちろんだ。いかがわしい事などあってはいけない」
「……へえ」

デメテルに礼を言い、2人の後をつけることにした。一応バレないようにサングラスを着けて髪を後ろでひとつにまとめている。



途中、クレープを買っていた。吹雪くんのおごりのようだ。これじゃあまるでデートじゃないか。

いらいら。


会話をしているときに名前がいきなり立ち止まった。驚いた表情で、少し顔が赤いようだ。僕にそんな顔したことがあったかな。

いらいらいらいら。




商店街を抜けたところで、2人は別々の方向へ歩き出した。デートは終わりかそうかそうか。
名前のほうを向くと、なぜか彼女は全力で走っていた。

「え!?」

僕もその後を追いかける。

曲がり角を曲がる、と、

「…あれ、」

誰もいなかった。そんな馬鹿な。ゆっくりと歩みを進める。





「照美くん!!」

背後から名前を呼ばれた。どきっとして振り向くと、そこには名前が腰に手をやって立っていた。

「や、やあ名前」
「ずっとつけてたでしょ」

バレてる。

「いつから知ってた」
「雑貨屋出た時から」
「…完璧に変装できたと思ったのに」
「むりむり。照美くんイケメンだから何しても超目立つよ?」
「そう…かな…」
喜んでいいのか。

それより、
「なんで吹雪くんと一緒にいたんだい?」
「メル友だし」
「出かけるなら僕がいるのに」
「…照美くんじゃだめなの!」

ずきーん

「え、名前、それ、どういう事」
「あああもう!いいや!」

ずいっ、と目の前に雑貨屋の袋が現れた。「あげる!」と投げやりに言われ、そっと受け取った。

「見ていい?」
「どーぞ」

袋の中には包装紙でラッピングされた、小さな包みが入っていた。
それも開けると、
「……ミサンガ」
白、青、黄色の三色で作られたミサンガが出てきた。


「今度、雷門と練習試合でしょ?だから、お守り」
「僕に?」
「もちろん、」

僕は名前を抱き締めていた。

「ありがとう名前、嬉しいよ」


しばらくそのままでいると、
「…ねえ、照美くんもしかして嫉妬したの?」
と言ってきた。

「え?…うん、まあ」
「ふふ、私には照美くんしかいないよ」

安心してね、と背中に名前の腕が回された。なんだかたまらなく愛しくなって、
「僕も名前がいちばん好きだよ」
とわざとらしく甘い声で囁いてやると彼女の耳が真っ赤になった。




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