(卒業試合前の部室にて)





オレの中学校生活も終わりを迎えようとしている。
円堂の誘いで、卒業試合をすることになった。みんな着替えて部室を出ていく中、オレはひとりでセンチメンタルな気分になっていた。

(この雷門ユニフォームも、もう着ないのかな)

しんみり。


:


「──風丸さん!!!」

ばたーん、と勢いよく部室のドアが開かれた。大声でオレの名を叫んだのは、

「宮坂!?」

陸上部の後輩、宮坂だった。
なんで宮坂がサッカー部に来たのか。


「卒業おめでとうございます!!」
「あ、ありがとう…」
「先輩に頼みがあって来たんですけど!」

すごい気迫だ。よっぽど重要なことなんだろう。




「先輩の第2ボタンをください!!」

かちん、思考が止まった。




「み、宮坂、どういう…」
「欲しいんです!」

じりじりと間合いを詰めてくる。あげます、と言わなくても制服からボタンをむしりとっていきそうな勢いである。 というかなんだか急かしているようにも見えた。何をそんなに急いでいるのか、



「風丸せんぱーい!!」

再び、ドアの方からオレを呼ぶ声が聞こえた。懐かしい声に鼓動が少し速くなった。(目の前では宮坂がチッ、と小さく舌打ちをしている)

そこには陸上部マネージャーの名字が立っていた。

「名字…?」
「先輩卒業おめでとうございます!突然ですが先輩の第2ボタンくださげっ宮坂!!」

名字は宮坂を見付けて立ち止まった。宮坂も名字のほうを向き、互いに睨みあっている。

「なんで宮坂がここにいるのよ」
「目的は名字と同じだよ」
「…あんた男でしょ!」
「男だから何」
「男なのに第2ボタン欲しいの?ホモなの!?」
「ホモじゃないよ!憧れ!」

2人の間に火花が飛びそうだ。


「先輩!僕にボタンを!」
「いいや私に!」
「「お願いします!!」」

2人して右手を差し出しお辞儀をした。動きがぴったり揃っている。


どうしようか。いや答えは最初から決まっているのだけど。


ロッカーに吊るされた制服の、上から2番目のボタンをぶちりと取った。絡まる糸を外して、差し出された手にそっと置く。


「試合、見にきてほしい」


誰にでもなく言って、部室を出た。



女子特有の、柔らかい丸みを帯びた手がオレのボタンをやんわりと握った。














「僕の負けだよ、名字……名字?」
「せっ、せせせ先輩が私にボタン…第2ボタンを…」
「落ち着いて」
「だって!嬉しい!!……嬉しい…!」
「お、おい、泣くなよ…」
「あとで先輩のメアド聞かなきゃ…ひっく」
「ちゃっかりしてるな……ほら、泣いてると先輩が心配するだろう、涙拭いて」
「…宮坂は陸上部の先輩さようなら会行かないの」
「風丸先輩の試合のほうが見たい」
「あっそ…」



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