(せわしない南雲)



携帯が震えた。メールじゃなくて電話みたいだ。発信者の名前を確認してからボタンを押す。もしもし、話しかけると、『もしもし名前?オレだよオレ!』とどこかの詐欺みたいな返事がきた。

「晴矢、何の用?」
『お前に言いたいことがあってさ!』
「うん」

えーと、あのな、と突然言葉が途切れ途切れになった。やがてしばらくの沈黙。

「早く言ってよ。私忙しいんだよね」
『いや、ちょっと待ってろ!』
「は?」
『あと10秒!』
「何言ってんの」
『いいから電話切るなよ』



『…あっ、あけましておめでとう!!』
「え?…あぁ、あけましておめでとう」

テレビを見ると、バラエティ番組で有名人たちが晴矢と同じ言葉を口々に言っている。

『新年、一番に名前にあけましておめでとう言いたかったんだ』
「そっか」

受話器の向こうからも賑やかな声が聞こえる。晴矢の声もなんだか弾んでいるようだった。楽しそうだな。

『後で家行ってもいいか』
「どうぞ。…晴矢、」
『どうした』
「今年もよろしくね」
『ああ!』

それじゃあね。軽く挨拶を交わして電話を切った。
電話を切ると目に映る待ち受け画面。笑顔でピースをしている二人の姿を見ると、胸がじんわりとあったかくなって、自然と笑みがこぼれた。



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