気付くと名前と一緒に歩道を歩いていた。
日射しが強い。太陽は俺たちの真上で照っているから今は正午くらいだろう。名前はつばの広い帽子をかぶっている。
今日って何日?と訊ねると、彼女は携帯を開いて15日だよ、と答えた。そういえば俺たちはこれからどこに向かうんだろう?まあいいか。
夏なんて嫌い。ふと名前が呟いた。どうして、と俺が問うたのに答えようとする彼女に強い風が吹いた。帽子がふわりと飛ぶ。
名前は慌てて帽子を追いかけてそのまま車道へ飛び出した。危ない、叫んだ時にはすでに名前の体は綺麗な放物線を描いて宙を舞っていた。

呆然とする俺の隣で髪の毛がボサボサな俺が腹を抱えて笑っていた。バカみたいに笑う俺になぜかひどくデジャヴを覚えた。どうして笑ってるんだ、訊ねると俺は「お前が気付かないからだろう」と言ってまた笑い出した。瞬間、視界がぐにゃりと歪んで地面に崩れた。耳に残る笑い声が響いていた。





気付くと名前と一緒に公園のブランコに座っていた。
太陽が沈んでいく。夕焼けが名前の顔を橙色に染めた。キイキイと古びたブランコの音がして、それに蝉の鳴き声と近くの工事現場の騒がしい音が重なった気持ち悪いそれを聴いていた。
なんだか違和感があった。名前はさっきトラックに跳ねられて死んだはずじゃないのか。でも彼女は確かに俺の隣にいるわけだし、たぶんそんな夢を見たんだろう。不謹慎だな。
もう帰ろうか。名前が言ってブランコから立ち上がった。俺も立ち、出口に向かって走る名前を追いかけた。
ガシャ、上の方で何か金属が擦れるような音が聴こえた。刹那、名前の影は落ちてきた大きな影に潰されてしまった。
鼓膜が破れそうなほどの轟音の後、見ると、さっきまで名前がいた場所に鉄の塊が積み重なっていた。

呆然とする俺の隣で眼帯の破れた俺が指を差して笑っていた。狂ったように笑う俺にはやっぱり見覚えがあって、お前はまた笑っているな、話しかけると俺は「お前が動かないから何も変わらないさ」と言ってまた笑い出した。
ぶちん、意識がそこで途切れた。






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