※『少年』は風丸、『少女』のビジュアルはリンドウ主(中身はそれではない)だと思って読んでくださいませ。2人の間には何の関係もありません。


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少年は家路を歩いていた。
蝉の声が重力に加えて重くのしかかって、それはまるで身体中に絡みついてくるようにして少年の動きを鈍らせた。気だるい。少年は足を前に出し続ける。
すっかり頭上に昇った太陽と、アスファルトからの照り返しが二倍の暑さを感じさせるような気がした。これをなんとか現象っていうんだっけ、なんだっけ。考えようとするけれど蝉の声がそれを邪魔してうまくまとまらない。もういいやと考えるのをやめて、もうすぐ渡る横断歩道を一瞥した。
歩行者用の青信号はチカチカと明滅して、赤色に変わった。その様子をぼんやり眺めていると、横断歩道に走っていく人影が視界に写る。
(……え?)
瞬間、心臓が浮いたかと思うほど大きなクラクションが鳴り響き、その隙間で鈍い音、何かが人形のように宙を舞い、


「────、」
蝉の声が止んだ。

突然、辺りが静かになる。見回すと写真みたいに動きを止めた人たちがいた。見上げると翼を広げたまま固まった鳥がいた。
どういうことだ。動いているのは少年だけ。周りの景色は変に色褪せているような気がして、頭がぐらぐらした。

「────、」
背後に妙な気配を感じて振り返ると、そこでは少女がひとり、ガードレールに座り、軽く組んだ両手で目を覆いながら空を仰いでいた。
その少女はなんだかおかしかった。不思議なまでに白かった。目を覆っている手、腕も、脚も、着ているパーカーも、そしてゆるく横結びにされている髪の毛も、すべてが真っ白だった。ただひとつ、髪の毛を束ねている淡いサーモンピンクのリボンだけがやけに映えた。古ぼけたガードレールよりもずっと綺麗な白色の少女は、この空間の中ではかなり異質で浮いていた。

少女を眺めていると、ゆっくりと組まれていた指がほどかれていった。まさか目まで白いんじゃないだろうか。少年は半ば期待を込めながらその様子を見つめていた。横一線に切り揃えられた前髪の間から、伏せられていた瞳がそっと開く。それを見て、少年は息を詰まらせた。
(…………赤、い)
予想の斜め上だった。少女の瞳は、鮮やかなスカーレットを携えている。少年はいつのまにか見惚れていた。

「────、」
目が、合った。
少女は赤い目を大きく見開いて、しかしすぐに怪訝な顔になって、少年を見ている。少年はそんな少女から目をそらせないでいた。やがて少女はガードレールから立ち上がり、少年のほうへ歩き出した。少年は驚いて、また焦って踵を返そうとするが、足が動かず、気付けば少女が目の前に立っていた。ほぼ同じくらいの身長で、目線が合う。少女のガラス玉のような瞳に自分が写り込んだ。

「ねえ」
どきりとした。少女の声は鋭いメゾソプラノで、けれどその雰囲気はどこか飄々としたようで、なんだか矛盾を感じさせる。
「君には、僕が見えるのかい」
は?と間抜けな声を漏らす少年を、少女は真面目な顔で見ていた。つり目がちな瞳が少年を射抜く。
「……ああ、成程、隻眼だからか」
「!?」
すっと顔を覗き込まれて反射的に後退りをした。少女は何も言えずに口をぽかんと開けたままの少年を見て軽く首を傾げてから、にやりと笑った。

「両目で、世界を見て御覧よ」
そうしたら面白い事が起こるよ。そう言って少女は挑発的な目を向けてきた。終始笑顔だった。
好奇心も相まって、よくわからないまま、左目を隠す髪の毛をそっと持ち上げた。

「其れじゃあまた、『今日』に」

至極楽しそうな少女の言った言葉の意味を理解しようと思った瞬間、耳を包み込むようなノイズと真っ白になった視界が少年の感覚を支配していく。自分は今ちゃんと立てているのか、それすらもわからない程、頭がじんじんと痺れる。
少女の愉悦に満ちた赤い目が、こちらを見ていた。


「────、」

力いっぱい、目を開いた。
目の前に広がるのは見慣れた天井、
(……夢)
ふう、と小さく溜め息をついて起き上がり、枕元のデジタル時計を見る。きちんといつも通りの起床時間を示す時計をぼんやり眺めて、ゆっくりと起き上がり、朝の支度を始めた。


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っていう『モノハの世界事情(仮)』でした(笑)
この先の設定も考えてたんですけど難しいことになりそうだったので諦めました。
ちなみに『少女』は死神で、交通事故で亡くなった人の魂を持っていこうとしてた所に風丸くんがイレギュラーでなぜか死神の世界に嵌まっちゃってタイムループから抜け出せなくてなんだよこれ!ってなる感じの話でした。(大雑把)

こういうパロディっぽいの好きなんですがなかなか形にできないのが難点ですな(´∵`)


ではでは、読みづらい文章だったと思いますが、ここまで見てくださってありがとうございました〜!



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