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さっきから携帯がずっと鳴り響いてる。
ウッセーな。一体誰だよ?

無理矢理覚醒させられた意識の中に、なまえの香りを感じて、あいつが帰って来たんじゃねぇかってガバッと起き上がったけど、部屋には俺以外誰も居なかった。
つーか、そこは俺の部屋ですらなくて、俺の一番愛しい人の部屋だった。


「そっか…俺、昨日なまえの部屋で眠っちまったんだったな」


俺が起きたら、昨日は心配かけてごめんねってなまえがいつも通りに笑ってくれてんじゃねぇかってどっかで期待してた分、かなり落胆した。
ははっ、俺、ホントにあいつが居ねぇってだけでダメな人間に成り下がるんだな。
未だに鳴り続けてる携帯が煩わしくて、電話に出たら蘭からだった。


「遅っい!私が何回電話したと思ってんのよ!?」
「朝っぱらからウッセーな。そんで?用件は何だよ?」
「さっさとうちに来なさいよね!あんたに話があるんだから!!まだ寝惚けてるんだったら、あんたの家に乗り込んで、その頭に私得意の回し蹴り入れて叩き起こしてやるんだから!」
「わーった。これから支度して行くって」


オメーの蹴りなんか喰らったら、目が覚めるどころか永眠しちまうだろうが。
ったく、あの暴力女、ちったーなまえを見習えっつーんだ。


「あっぶねーな!オメー、いきなり何しやがんだよ!?」


蘭の部屋に入った途端に俺の頭目掛けて蘭の足が飛んで来た。
おいおい、今すっげー風を切る音が聞こえたんだけど?
あんなの喰らってたら、俺、マジで死んじまうだろうが!


「なんであんなこと言ったのよ!?」
「はぁ?」
「なまえ泣かせて…今日こそは新一許さないんだから!!」


完全に頭に血が上っちまって、いつもより感情的になってる蘭の攻撃を交わすのは簡単だったけど、ホントに俺が何したって言うんだよ?


「ちょっと、新一くん!昨日の発言はどういうことなのか、きっちり説明してもらいましょうか!?」


しばらく蘭と狭い部屋の中で危ねぇ鬼ごっこをしてたら、勢いよく入ってきた園子は俺んとこまでまっすぐ来て襟首を掴んで来やがった。
ったく、何なんだよ?
こいつらが本気で怒ってんのは分かっけど、俺はホントに心当たりがねぇんだって!
何度そう繰り返しても、蘭たちの怒りは収まるどころか爆発して、二人に声を揃えて
「ふざけんじゃないわよ!」
って怒鳴られた。


「いいこと教えてあげるわ。なまえ、今何してると思う?あんたん家の自分の部屋整理しに行ってるのよ。おじ様にもらった合鍵も返さなくちゃって言ってたわよ?」
「なっ!?」


何だよ、それ!
まるでなまえが俺ん家から出て行くみてぇじゃねぇか!!
誰がそんなことさせっかよっ!!!

なまえを止めに行こうと蘭の部屋から飛び出そうとしたら、二人が俺を力ずくで止めてきやがった。


「離しやがれっ!テメーらと悠長に喋ってる場合じゃねぇんだよっ!!」
「だから!昨日の発言の言い訳くらいしてから行きなさいって言ってんでしょ!?」
「昨日からオメーらは一体何のことを言ってんだよ!?」
「なまえが新一くんの家に泊まりに来て欲しくないけど、本人に言えないってあんたが言ったんでしょう!?」
「なっ…」


何で園子が昨日のこと知ってんだ?まさか!?


「そうよ!なまえが聞いてたの!だから、もう新一くんに捨てられるんだって昨日散々泣いてたのよ!!」


俺に捨てられる…?
まさか、あいつそこだけしか聞いてねぇのか!?
何でよりにもよってそんな誤解を招くような発言だけ聞いてんだよ!


「あいつ、そこだけ聞いたんなら勘違いしてんだ!早く行かねぇとっ!!」
「新一!なまえんとこ行きたいんだったら、その前に私たちに弁解してから行きなさいよねっ!!」
「げほっ…おい、蘭。テメー、今のモロに入ったぞ?」


あいつが泣いてた原因がやっと分かったからその誤解をときに行こうとしたら、蘭が実力行使で俺を止めやがった。
情けねぇけど、動けねぇ。
こいつ、本気で膝げり入れやがった!


「まさかなまえが心配してたみたいに、単なる便利な家政婦だと思ってるとか言うんじゃないでしょうね!?そんなこと言ってごらんなさい。その根性叩き直してあげるんだから!!」
「は?何のことだよ?」
「なまえが言ってたのよ。最近新一くんが自分のこと避けてるから、もう冷めちゃったんじゃないかってね」
「んなわけねぇだろうがっ!!」


床から園子たちを睨んだけど、二人に冷たい視線を浴びせられるだけだった。
俺がなまえに冷めただって?
何だってそんな話になってんだよ!


「でも、なまえ言ってたよ?みんなで海に行った辺りから、新一に避けられてるって。初めは気のせいかと思ってたけど、最近酷くなったって」
「…」
「なまえがあんたの家に行った時もあんたが食事の時以外部屋に籠って出て来ないから、ろくに話もしてない、とも言ってたけど?」
「そ、それは、だな…」
「「それは?何よ?」」


理由を言わねぇとこのままリンチにされそうなくれぇに二人が怒りに燃えた視線で睨んで来っから、仕方なく理由を話すことにした。


「海に行った時のあいつの水着姿見て、理性抑えきる自信がなくなったんだよ」
「は?」
「え?」
「最近じゃ、あいつと一緒にいたら、唇や胸に目がいっちまうし、手ぇ出さねぇように部屋に籠ってたんだよ!」
「…」
「…」
「昨日もその話をクラスのヤツらとしてて、このままじゃ無理矢理襲っちまいそうだから、うちに泊まられるのが困るって話をしてたんだよ!」


ヤケになって理由を説明してたら、二人にすっげー呆れられた瞳を向けられた。


「なまえもまたタイミングの悪いとこだけ聞いたのね…」
「だね…でも、さ」
「うん」
「「あんたバッカじゃないの?」」
「…」


さすが長年の親友、息がぴったり合ってる。


「あんたたち、まだヤってなかったわけ?あんた、この2年間何してたのよ?」
「…」
「なまえの水着姿見てから理性抑えきる自信がなくなったからってなまえのこと避けるとか、新一バカじゃないの?それでなまえを不安にさせてどうすんのよ!?」
「…」
「寧ろ、抑える必要ないでしょうが。あんたたち付き合ってるんだから」
「…」
「あーあ。そりゃあなまえも不安になるわ。自分に触って来ないわ、自分のこと避けられてるわ、挙句昨日の発言?新一くんに捨てられるってちょっとなまえオーバーかなぁって思ってたけど…全っ部あんたが悪いんじゃないっ!!」
「…スミマセンデシタ」


なまえがそんな風に不安になってたとか、俺は全然知らなかった。
そういえば、俺のことでいっぱいいっぱいだったけど、抱きしめなくなってからも、俺が部屋に避難するようになってからも、なまえからは愚痴の一つも言われてない。
朝はいつも笑顔で弁当くれてたし、夕方も笑顔で出迎えてくれてた。
だから、気付かなかった…なんて言い訳にもなんねぇんだろうけど…。

あいつ、そんな不安を全部自分一人で抱え込んでたんだろうか?
…なまえはそういう性格だよな。


「ほら。もう動けるんでしょう?さっさとなまえんとこ行って、誤解といて、ついでに押し倒して来なさいよ」
「押しっ!?オメー、何言ってんだ!それでも女かよ!?」


ホントに信じらんねぇ!
園子がこういうヤツなのは知ってっけど、オメーもなまえ見習えよ!
何でそんな台詞が普通に出てくんだよ!?


「新一、どうでもいいけど、早く行かないとなまえホントにアメリカ行っちゃうかもしれないよ?」
「テメーらが無理矢理引き留めたんだろーがっ!!」


俺は荷物を整理してるって聞いた時も、なまえが誤解してんだって分かった時もちゃんとなまえんとこ行こうとしてただろ!?

ホントに信じらんねぇ!
何でこんなヤツらがなまえの親友なんだよ!?
河野みてぇに素直なヤツがなまえに懐くのは分かっけど、こいつらがなまえの親友だってのが、マジで信じらんねぇ!!
これ以上こんなヤツらに付き合ってられっかと、俺は自分家までダッシュで帰った。

あいつが俺ん家を出て行くってことは、俺の前から消えようとしてるってことだ。
ぜってーそれだけは阻止しねぇと!



頼むから間に合ってくれ!



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