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(番外編)新一side


「はぁ?工藤、お前まだみょうじさんとヤってなかったのかよ?」


そろそろ俺の理性が持たなくなりそうだって話をしたら、呆れた様に言われた。
まだって…俺ら、まだ中学生だぜ?
体の関係持つには早くねぇか?


「もったいねぇー!なまえちゃんのあの体を味わってねぇなんて!!」
「テメー、経験者みてぇに語ってんじゃねぇよ」
「く、工藤、落ち着けって!お前、目がマジだからっ!!」


俺の彼女と関係持ったみてぇに言ったテメーが悪ぃんだろうがっ!!
蹴り飛ばさなかっただけ有難いと思いやがれ!


「お前何とも思わねぇわけ?この前の水着姿なんか俺らでもドキドキしたってのに」
「何とも思わねぇわけねぇだろーが!あれが頭に焼きついちまったせいで、なまえと居るとあればっか思い出してこっちは大変なんだよっ!!」
「だよなぁ。挙句、毎日家に帰れば美味い飯作ってお前のこと待っててくれるんだろ?マジでテメー殺したいくらい羨ましいんだけど」
「そんなくだらねぇ理由で殺されてたまっかよっ!」
「でもなぁ、工藤。みょうじさんみてぇないい女、なかなか居ねぇぜ?」
「だよなぁー。なまえちゃんのあの体!」
「テメー、いい加減にしろよ?マジで蹴っ飛ばすぞ」
「じゃなくて。考えてもみろよ?いっくら彼氏の両親が海外行ったからって、毎日手の込んだ弁当と夕飯作ってくれて、その上自分の休み潰してまでお前んとこのでっけぇ家の掃除までしてくれるとか、普通あり得ねぇだろ?」
「それは俺も思ってる」


たまに業者に頼めば済む話なんだから、掃除なんかしなくてもいいって言ってんのに、「新一にはサッカーに専念して欲しいから、あたしに出来ることはしたいんだよ」って何でもねぇことみてぇに笑ってくれる。
部活から疲れて帰って来ても、美味そうな飯の匂いと一緒に「おかえりなさい。今日も部活お疲れ様」ってなまえに笑顔で出迎えてもらった途端に疲れなんかどっかにぶっ飛んじまうんだから、なまえはスゲーよなっていつも思ってる。
もし、なまえがいねぇ状態であの家で一人暮らししてたら、俺はたぶん飯だけでも相当苦労してた筈だしな。


「でも、週末になるとなまえちゃん工藤ん家に泊まってんだろ?お前大丈夫なのかよ?」
「大丈夫じゃねぇよ。まだ1年の時ならなまえの風呂上がりでも気にせずになまえの部屋に入れてたけど、今ならぜってー襲っちまう自信がある」
「あー、海ん時も濡れてるみょうじさんヤバかったもんなぁ…」
「オメー、何想像してんだよ?」
「だから、イチイチ怖ぇ顔して睨むなよ!あれはあの場にいた男なら絶対感じてる筈だ!」


こいつが言ってる意味は分かる。
まだガキっぽい体型のヤツが多い中、なまえは既に女らしい曲線を描いていた。
背も高い方だし、余計にスタイルがよく見えるのも分かる。
しかも、水着がビキニ!
いや、ビキニ着てるヤツは多かったけど、あの谷間が…だーもうっ!こいつらが余計なこと言うせいでまたなまえの水着姿思い出しちまったじゃねぇか!


「工藤、悪いことは言わねぇから、さっさとみょうじさん襲っちまえ。お前が持たなくなるのは目に見えてる」
「…それで、なまえに嫌われたらどうしてくれんだよ?」
「お前なぁ…彼氏に抱かれたからってみょうじさんに嫌われるわけがねぇだろ?」


ホントにそうか?
心の準備が出来てねぇからって、俺のこと好きだっつーのに、俺の告白に待ったをかけたようなヤツだぜ?
無理矢理抱いた日にはまた昔みてぇに避けられんじゃねぇかと思うと怖くてそんなマネ出来っかよ。
いや、避けられるだけならまだいい。
そんな人だとは思わなかった!とか言われてフラれれでもしたらどう責任取ってくれんだ?
そんなことになったら、俺、落ち込むどころの騒ぎじゃ済まねぇぞ?


「だからって好きな女が同じ家で寝泊まりしてて、理性保っていられる程、お前の理性は強ぇのかよ?」
「だから、なまえにも家に泊まったりとかして欲しくねぇんだけどよ…そんなこと言えねぇじゃねーか」
「そうだよなぁ。みょうじさん、あれだけ工藤の為に尽くしてくれてんだし、寧ろみょうじさん何も悪くねぇしな」


今日は金曜日。
いつもなまえが泊まりに来る日だ。
頼むから、今日と明日の2日間、俺の理性持ってくれよ。

最近じゃ、なまえを見てもつい唇や胸に目がいっちまうから出来るだけ自分の部屋にいるようにはしてんだけど…。
付き合い出してから今まで散々なまえを抱きしめてたせいで、あの温もりと甘い香りが恋しくて仕方ねぇ。

でも、抱きしめちまったらキスしたくなるだろうし、今までみてぇに頬や触れるだけのキスで我慢出来る自信がねぇ。
でも、それをヤっちまうと、絶対歯止めが利かなくなる。
くそっ!どうしろって言うんだよっ!!


「ただいまー」


一人悶々としながらも玄関を開けたら、家ん中が真っ暗だった。
いつもは香ってくる晩飯の匂いさえしねぇ。


「なまえ?」


父さんたちがアメリカに行ってから、こんなことは初めてだった。
もしかして、調子でも悪くなって寝てんのかとなまえの部屋まで行ったけど、そこに主は居なかった。

何か忘れもんでもして自分の家に帰ってんのかもしんねぇ。
夕飯作ろうとして、足りないものがあったとかでスーパーに行ってるだけかもしんねぇ。
色んな言い訳を並べては、直ぐになまえがこの家に帰って来るって胸ん中から体全体に広がっていく不安を何とか掻き消そうとしたけど、いっくら待っても玄関が開く気配がなくて、ついに限界が来た。


「何で電話にも出ねぇんだよ!?」


なまえの携帯に電話をかけたけど、一向に繋がんなくて、何度かけてもコール音が続いた後に留守番サービスの無機質な声に繋がっから、もう不安を通り越して恐怖が俺を包んだ。
まさか、また倒れてるとか言わねぇだろうな?
あんな思いをすんのは二度とごめんだっつっただろうがっ!!

家を飛び出して、なまえん家までダッシュして、管理人さんに事情を説明して開けてもらったけど、ここにもなまえは居なかった。


「すみません。まだ帰ってないだけみたいですね。ありがとうございました」


こんな時間なのにあいつどこに行っちまったんだよ!?
あいつの帰れる場所はここと俺ん家しかねぇはずだろ!?
いつも行ってるスーパーに行っても居ねぇし、夜の帳が下りてる中、歌ってるわけもねぇとは思ったけど、念のために河原沿いに走ってみたけど、やっぱり人影すらねぇ。

なまえがいなくなった…?
なぁ、冗談だよな?


「もしもし?新一、どうしたの?」
「蘭!なまえそっちに行ってねぇか!?」
「なまえ?今日は来てないけど…何かあったの?」
「家に帰ったらなまえがいなくて、いっくら待ってても中々帰って来ねぇから、なまえの家にも行ったんだけど、あいつ何処にもいねぇんだよ!」
「嘘っ!?ちょっと待って。私もなまえ探しに行くから!」
「頼む。見つけたら連絡してくれ!」
「うん、分かった!」


心当たりは全部探しちまったから、後はしらみ潰しに探すしかねぇって走りながら蘭に連絡を入れた。
せめて蘭のとこに居てくれたら安心出来たのに!
ちくしょー、なまえのヤツ、一体どこに行っちまったんだよ!?
まさか事件に巻き込まれてるとかねぇよな?
事故って病院に行ってるとかねぇよな?
さっきからなまえがいなくなるんじゃねぇかって最悪なことしか頭に浮かばねぇ。


「なまえーっ!!」


もう体力が限界になって来たところで、念のために園子たちにも連絡を入れてみることにした。
園子たちのとこに居んだったら、とっくに蘭から連絡が入ってる筈だ。けど、なまえが無事だっつー望みを捨てたくなかったから、藁にもすがる思いで、電話をかけたんだけど。


「何よ?」


えらく不機嫌な感じでイライラしてる園子が電話に出た。


「新一くん、明日時間作ってくれない?」
「はぁ?今はそれどころじゃねぇっつーの!なまえ探してんだってさっきから言ってんだろうが!!」
「だから、そのなまえを泣かせたあんたに話があるって言ってんのよ!」
「は?何言って」
「あんたのバカな発言のせいで、なまえボロボロに泣き崩れてたんだからね!?」
「なまえそこに居んのか!?」
「居るわよ?」


それを聞いた瞬間、体中から力が抜けた。
良かった。無事だったんだな。
なんか園子がなまえが泣いてたとか気になること言ってっけど、なまえが無事だってことだけで、とりあえずはいいじゃねぇか。


「なぁ、なまえに代わってくんねぇか?一言だけでも声聞いて安心してぇんだけど」


今は無性になまえの声が聞きたかった。
泣いててもいい。
なまえの声で俺の名前を呼んで欲しかった。
たぶん、それだけで俺の中の不安なんかどっかに消えちまうはずなんだ。


「あんた、あたしの話聞いてた?なまえなら泣き疲れちゃって寝てるわよ。どっかの誰かさんのせいでね!」


さっきから園子は俺がなまえ泣かせたみてぇに言ってっけど、俺、何もしてねぇぜ?
第一、なまえとはクラスも違ぇし、昼飯はオメーらと一緒に食いてぇからって断られっから、朝弁当渡してもらった時にしか会ってねぇんだけど。


「じゃあ、明日あたしたちに会うまでに今日の放課後の自分の発言思い出してなさい!」
「ちょっと待てよ!俺、明日も部活が」
「へぇ?なまえよりサッカーが大事なんだ?分かったわ。じゃあ、これから今日のこと新一くんのおじ様に連絡してあげる。多分一番早い便でなまえのこと迎えに来てくれるわよ?」


俺には何の心当たりもねぇけど、園子の口調がシャレじゃなく父さんが迎えに来るレベルのことをしたんだっつってたから、明日蘭の家に行くことを了承した。

なまえを探し回ってくたくたの体で家に帰って来たけど、いつもなら居るはずのなまえが居ねぇってだけで胸に穴でも空いたみてぇに虚しさに襲われた。

なまえが泣いてたって何だよ。
俺がなまえを泣かせたってどういう意味だよ。
そんなこと、俺がするはずねぇだろ?
あいつは俺にとって誰よりも何よりも大事なヤツなんだ。

あいつの不安も寂しさも俺が消してやんだって俺は俺自身に誓ってたんだ…なのに、何でオメーは園子んとこで泣いてんだよ?
俺が居るじゃねぇか。
泣くんなら、俺んとこで泣いてくれよ。
じゃねぇと抱きしめて慰めてやることも出来ねぇじゃねーかよ…


「なまえ…」


いつもなら、俺が名前を呼ぶとたったそれだけで嬉しそうに笑って俺の名前を呼んで返事をしてくれるのに、今日は俺の声が夜の闇に溶けていくだけだった。

泣き疲れて眠ってしまう程、なまえが泣いてたんだって園子は言っていた。
あいつなら冗談でもそんくれー言いそうだけど、あれだけ俺のこと怒ってたんだ。
きっとマジでなまえはそれだけ泣いてたんだろう。
でも、それだけなまえを苦しめて追い詰めた原因なんか、何にも思い付かねぇよ…。



答えの出ない問いかけに頭を使いながら、せめて少しでもなまえの存在を感じてたくて、その日はなまえのベッドで眠りに着いた。

すっげー落ち着くなまえの香りはすっけど、あいつの温もりがねぇんじゃ、意味がねぇんだよ。


なぁ。早く、俺んとこに帰って来てくれよ。



(じゃねぇと、なまえが居ねぇこの空間に耐えられずに、俺がぶっ壊れちまいそうだ)



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