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01


「ただいまー」
『新一、お帰りなさい。今日も部活お疲れ様』
「今日は昼までだったから楽だったけどな。ちょっとシャワー浴びて来るわ」


先生たちがアメリカに行ってしまってから、あたしは工藤家で夕食を作って新一と一緒にご飯を食べている。
やっぱり広いキッチンの方が料理しやすいしね。
で、週末はあたしの家までの往復が面倒だし、普段はあまり出来ない掃除もしたいしで工藤家にお泊まりさせてもらってるんだけど…。


『ねぇ、新一』
「ん?どした?」
『さっきから何やってるの?』
「なまえ抱き締めてんだけど?」
『それは分かってるんだけど…いつまでこれやってるつもりなの?』
「もうちょいこのままで」


あたしの頬にキスして誤魔化した新一。

お昼を食べて、いつものように二人で後片付けをしてる時までは、普段の新一と何も変わりはなかったはずだ。
ただ、「俺の部屋行こうぜ?」って誘われて、新一の部屋に来てから、ずっとあたしは新一の腕の中にいる。

新一が時々甘えたになるのはいつものことだけど、今日は何かいつもと雰囲気が違う気がするんだよね。

『ねぇ、どうしたの?何かあった?』
「え?」
『新一、いつもと様子が違うよ?』
「最近あんまりなまえ抱き締めてなかったから、なまえ不足で充電してんのと、」
『と?』
「…」


抱き締める力が強くなったと思ったら、新一は黙り込んでしまった。
確かに最近は一緒にいる時間が増えたせいか、前よりは抱き締められなくなってたけど…。
あれは抱き締める時間が減っただけで、回数的にはちょくちょく抱き締められてるんだけどな。
先生たちがいた頃は、新一って一度あたしを抱き締めるとなかなか離してくれなかったから。


「オメー、この前また告白されてたんだって?」
『ちゃんと断ったよ?新一っていう彼氏がいるんだから当たり前じゃない』


しばらく黙ってたと思った新一が言葉を発したと思ったら、そんな下らないことだった。
誰に聞いたの?なんて気かなくても分かる。
こういう情報の発信源は決まって園子なんだから。


「今日、さ」
『うん?』
「卒業前にオメーに告白するんだっつってた先輩が居てな」
『うん』
「オメーには俺がいんのに、告白すんのかよって思ってたら…」
『思ってたら?』
「俺になまえはもったいねぇし、自分が告白したら、オメーの気が変わるかもしれねぇっつってて」
『そんなこと気にしてたの?』


そんな自意識過剰なバカなんか放っておけばいいのに。


「でも、蘭にもよくなまえは俺にはもったいねぇって言われっからさ。蘭の言葉なんか気にしてなかったんだけど、園子が女子に人気がある先輩だっつってたヤツだったから、ちょっと、な」
『ねぇ、新一。あたしが蘭にそれ言われた時、いつも何て返してるか知ってる?』
「いや?知らねぇけど…」
『“新一にあたしがもったいないんじゃなくて、あたしに新一がもったいないんだよ”』
「え?」
『いつもそう言ってるの』


そう笑って伝えて、あたしは少し驚いたようにきょとんとしてる新一の頬にキスをした。

たいていのことなら、新一はこれで機嫌を直してくれるから、落ち込んでる感じの新一も少しは元気になってくれるかなって。

元気になったかどうかは分からないけど、新一は顔を赤く染めてしまった。
あたしの発言になのか、キスしたせいかは分かんないけど。


『それに新一だってよく告白されてるじゃない。美人な先輩とかにさ。あたしの方が不安だよ。元々、新一にはファンが多いんだから』
「バーロー。俺はなまえ以外の女になんか興味ねぇよ」


そう言って、新一もあたしの頬にキスを返してくれた。


『ファンがいるのは仕方ないとは思うんだけどね。サッカーしてる新一っていつにも増してカッコイイから』
「俺はオメーがそう言ってくれっからサッカーしてるようなもんだしな」
『あれ?探偵に必要な運動神経つける為にしてるんじゃなかったの?』
「前まではそうだったけど、なまえにサッカーしてる俺が好きだって言われてからはオメーの為にやってんだよ」
『だって、ホントにサッカーしてる新一見てるの好きなんだもん。でも、あたしは新一の全部が好きだよ?』
「え?」


自分で言ってて恥ずかしくなったから、あたしも新一を抱き締めた。
人を好きになるっていうのは、〜だから、そこが好き、なんじゃなくてその人だから、その人のいろんなところを含めて好きになるんだと思うんだ。


「なまえ、こっち向けよ」
『ちょっと待って』
「俺、今すげぇなまえにキスしたくなってっから向いてくんねぇと困るんだけど」
『え?』


新一がそんなこと言うの珍しいなって、少しだけ新一の方を向いたら、クイッと顎を持たれて、触れるだけのキスを何度もされた。





【たまには甘い時間を】

いつもの和やかな時間も好きだけど、たまにはこんな甘い時間があってもいいよね。
新一のキスが終わった後に、あたしからもお礼のキスをした。


『新一、顔真っ赤だよ?』
「ウッセー。オメーからキスしてくんのなんか珍しいから慣れてねぇんだよ!」
『もう一回してあげようか?』
「……おぅ」


すぐに照れちゃう可愛い君が大好きなんだって、頬にキスしてから唇にもキスをした。



→あとがき

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