×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



(後日談)新婚生活のリハーサル!?


「ったく!いい加減にしろよな!?父さんも母さんも毎日毎日しつけぇんだよ!!!」


父さん達がアメリカに行ってから、半月弱。

あの日、アメリカに着いたって俺に連絡を寄越した母さんからの第一声は「今ロスの家に着いたんだけどね、」でも何でもなく、空港に着いた途端に掛かって来た「なまえちゃん迎えに行くから、これからそっちに帰ってもいいかしら!?」だった。

何でも別れ際になまえが渡してた手紙を機内で読んだ二人はえらくそれに感動…つーか、感激っつーか、とにかく心打たれるものがあったらしい。

別にそれはいい。それはいいんだ、けど…さすがにこれは解せねぇ。
つーか、はっきり言って迷惑以外の何物でもねぇ。


「毎日毎日毎日っ!!朝っぱらからなまえ迎えに来てぇって俺に連絡して来るってのは、一体何の嫌がらせだよ!!?」

「嫌がらせじゃないさ。我々は至って本気だからね」

「余計にタチが悪ぃだろうがっ!!!」


父さん達がアメリカで暮らし出してからと言うもの、俺は毎日、セットした目覚まし時計より一時間は早く起こされ る。

父さんか母さんからの国際電話で。
しかも、内容が二人揃って毎回同じ!
「なまえをアメリカに連れて行きたい」それだけだ。


「なまえは俺と日本で暮らすんだって何回言や分かんだよ!?父さん達だって、納得してそっち行ったはずじゃねーか!!!」

「それはそうなんだが…。あの涙で文字が滲んだ感動の手紙を読んでしまったら、なまえ君を手放すのが惜しくなってしまってね」

「んなこと、俺が知るか!!」


なまえが寝不足になってまで綴ったあの手紙に何を書いたのかは知らねぇけど、さすがに毎日毎日朝っぱらから叩き起こされっと、俺のイラつきもストレスも溜まっていく一方だ。


「お前が一言、なまえ君がアメリカで過ごしても構わないと言ってくれさえすれば、我々も二度とこの件で電話はしないさ。代わりに早速なまえ君を迎えに」
「誰がんなこと言うかよ!!いい加減諦めやがれっ!!!」


こんなやり取りが、俺の朝練の時間までか、なまえが泊まりに来てる時なら、あいつが飯が出来たって俺を呼びに来るまで延々と続く。

何でも なまえにアメリカに着いたって父さんが連絡した時に同じことをあいつに言ったら「それは心揺れる魅力的なお誘いですけど…あたしはずっと新一の傍にいると約束したので、申し訳ありませんが」とあっさり断られたらしい。

正直言うなら、そこは心揺らしてねぇで即答で断って欲しかった、んだけど…本人に断られてんだったら、そこで大人しく諦めてろってんだ!!

そっから何をどうしたら、俺が頷けばなまえを連れて行けるって発想に変わんだよ!!?


「工藤、今日も随分と荒れてんなー。まだ親父さんたちから毎朝モーニングコール来てんのかよ?なまえちゃん迎えに来たいってさ」

「あいつら、何回繰り返し断っても納得しねぇんだよっ!!!」

「お前の頑固なとこは親譲りだったんだな。しかも両親共。そりゃー、お前の血も濃くなるわ。
もうここまで来たらお前が頷くまで永遠に電話来るんじゃねーの?って勢いだもんな」

「テメー、他人事だと思って面白がってんじゃねぇよ!!お陰でこっちは睡眠時間が削られて、まともに眠れやしねぇんだっつーのっ!!!」


毎朝部活でストレス発散。これも最早恒例になって来 た。

初めこそ先輩達にも「私情を部活に持ち込むな!」って文句言われてたけど、俺の寝不足とイラつきの原因がサッカー部周知の事実となった今では、同情されてんのか、何言ってもムダだっつって諦められてんのか俺の好きにさせてくれてる。

理由は何にしろ、これで俺も心置きなく暴れられるってもんだ。


「まぁ、お前のイラつきも教室に入るまでの辛抱だから、もうちょっと我慢しろよ」


そう言って俺の肩を叩いた篠原のこの発言は実に的を射ていたりする。
なんでかって?そりゃ、朝練が終わって教室に行きゃ、いっつも、俺の席になまえが来てくれっから。


『新一、おはよー。今日も朝練お疲れ様』

「はよ、なまえ」


なまえが笑顔で俺の席に来てくれた途端に、あんだけイラついてた朝の電話のことなんかどうでもよくなんだから不思議だよな。


『はい、新一のお弁当』

「サンキュな」


朝一番に教室でなまえから弁当を貰う。

これが父さん達がいなくなってからの俺の日常。

なまえは相変わらず蘭たちと弁当食ってっから、一緒には食えねぇんだけど、なまえに弁当を手渡されるこの瞬間が結構幸せだったりする。


「なまえちゃん、はよ!」

『おはよ。篠原くんも部活お疲れ様』

「なぁ、今日は工藤の弁当何が入ってんの?」

『今日はね、』

「ストーップ!オメーら、俺の楽しみ取んなっての!!」


篠原と話してたなまえの口を俺の右手で塞いで無理矢理会話を終了させた。

昼飯ん時に今日は何が入ってんのかってドキドキしながら弁当開けんのが楽しみなのもマジだけど、俺の目の前で他のヤローと楽しそうに話してんじゃねぇよ!


『ぷはっ。新一、ずっと口押さえられてたら苦しいってば』

「あ、悪ぃ。つい…」


俺ばっかなまえんとこに行ってた時には気にもしなかったんだけど、なまえが俺のとこに来てくれるようになって嬉しい反面、必然的に俺の周りを囲んでたヤロー共とも話すようになって、気がついたら意外と仲良くなってたっていうこの現状が結構複雑だったりする。

楽しそうに話してやがるのが尚更ムカつく。


「工藤、自分の彼女が別の男と話してんの見て妬くのは分かるけど、さっきのはねーだろ?」

「そうそう。クラスメートなんだから、会話ぐらいするって。篠原はサッカー部でも顔合わせてんだから尚更だろ?みょうじさん、サッカー部が試合する度に差し入れしてるって聞いたぜ?」

「まぁ、なまえちゃんが女の子女の子してなくて、話易いってのもあるけどな」

「あれはマジで意外だった!見た目スゲー気ぃ使ってるぽいし、普通に可愛いから中身ももっと女の子してんのかと思ってたのに、話してみたら意外とさっぱりしてて話が合うんだよな!」


なまえが河野んとこ行った途端にこいつら盛り上がってっけど…女って話してっとめんどくせぇってイメージがあったのに、なまえはそれに該当してなくて話し易いんだと。

俺はなまえ以外の女子っつったら、蘭と園子ぐれぇしかまともに会話しねぇけど、確かに応援してます!とか部活中に声掛けてくる奴等は何か苦手だ。

なまえにこの話をしたら、あっさりと「あたし、友だちは男女問わずで作るタイプだからじゃないかな?」って返って来た。
男女問わずでダチ作るとか、たぶんいいことなんだろうけど、その男友だちん中になまえ狙ってるヤツが居んじゃねぇかと思うと俺は気が気じゃない。

それ以前に、文化祭ん時には学校で仲のいいヤツって枠に俺しか男が入ってなかったってのに、今では他のヤローの名前も入ってるかもしれねぇって考えるだけで気が狂いそうになる。

独占欲が強いだけのただの嫉妬だって分かってても、そう簡単に割り切れっかよ!

第一、俺はなまえのアメリカ行きの話が出た時に告って来たっていう他校のヤロー共ときっちり話がついたかどうかだって知らねぇってのにっ!!





何か日に日に不安の種だけ増えてってる気がすんのは、俺の気のせいか?





- 314/327 -
prev next

戻る
[ +Bookmark ]