昼休みはみょうじと話がしたいと言って、二人で屋上へと向かった。
綺麗な青空に誘われたのか、意外と人が多くて隅の方で座って弁当を広げる。
「ったく。オメーもこんなめんどくせぇことしねーで、さっさと名乗り出れば良かったじゃねぇか」
『だって、あたしが初めて先生にお食事に誘われた時は工藤くんと一言も話したことなかったのよ?急にそんなクラスメートと一緒に食事って言われても困るでしょ?』
「そりゃーそうだけどよ…おかげで俺は父さんと母さんにつつかれて遊ばれてんだよ」
『それはごめんなさい』
クスクスと楽しそうに笑うみょうじは、何だか今まで見てきたみょうじと別人の様な気がした。
「ってか父さんたちのことは仕方ないとしても、なんでサッカー部にまで匿名で差し入れしてたんだよ?」
『あれは園子が楽しそうだからって』
「園子の野郎…」
『まぁ、あんまり怒らないであげて?先生の本読んでるだけじゃ気付いてもらえなかったからって、園子からしたらサービスヒント出してるつもりだったんだから』
「はぁ。まぁいいけどよ。俺がお前見つけられなかったのは確かだしな」
『ありがとう』
「でも、いっこだけ頼みがあんだけど」
『聞けることなら。何かしら?』
「サッカー部に顔出してくんねぇか?みんなオメーに直接礼が言いてぇつってんだよ」
『そのくらいなら喜んで。サッカーのルールも分からないような初心者だけど』
そう言ってみょうじはまた楽しそうに笑ってた。
デザートにみょうじが作ったマフィンを食べたら、仄かなバナナの甘味とくるみの食感が組み合さった食べたことのない味が広がった。
「うめぇ」
『それ、あんまり甘くないでしょう?バナナは果物の甘味を出す為にブラウンシュガーを使ってるの。潰したバナナと砕いたくるみで食感も楽しいしね』
「こんなことだったら俺も争奪戦に参加しとくんだったかな?」
『残念でした。園子は全部食べたいって言ってたから全種類あげたけど、もう残ってないのよ』
いつも軽く俺を避けてたみょうじから、打てば返ってくる言葉が嬉しくて昼休みが終わるギリギリまで俺たちは屋上でダベっていた。
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