授業の中休み、いつものように本を読んでるみょうじに近づいてみた。
「何読んでんだ?」
『あ、工藤くん。推理小説だよ。君のお父様の作品の』
嬉しそうに本の表紙を俺に見せるみょうじに、少し胸が騒いだけど、とりあえず今ははっきりさせなきゃいけないことがあっから、無理矢理落ち着かせた。
「みょうじって菓子作るの好きなのか?朝、河野と話してただろ?」
『うん。お菓子作りはあたしの趣味兼気分転換だもん。急にどうしたの?』
話してる最中に開いてる窓から風が吹き込んで、ふわりとみょうじの髪が靡いたと思ったら、確かに甘い香りが広がった。
やっぱり犯人はこいつらしい。
「今日も差し入れありがとな。まだ食ってねぇけど、今回もすんげぇ美味そうだったぜ?」
軽くカマをかけるつもりで、そう話しかければ、大きな瞳が少し悪戯っぽく煌めいて、みょうじはにっこりと微笑んだ。
『喜んでもらえて良かった。ちゃんと数は足りた?』
「おー。つーか、余っちまって先輩たちが取り合いしてた」
『クスクス。そんな取り合いするほどのもんじゃないけどね』
はぐらかされんじゃねぇかと思ってたのに、予想外にみょうじはあっさりと犯行を認めた。
ってか初めてまともな会話をしてる気がする。
後一押しだ。
「そんなことねぇだろ?母さんなんかいっつもみょうじが菓子持ってきた日はテンション高くて大変なんだぜ?」
『うん。テンション高い有希子さんはあたしも止められないの。優作先生がストッパーしてくれるから、二人セットだと大丈夫なんだけどね』
「つまり、親父への差し入れもサッカー部への差し入れもお前が犯人なんだな?」
『ご名答。名探偵』
そう悪戯に笑ったみょうじに、なんだかまた胸が高鳴った気がした。
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