次の日、学校に登校するなり俺の席にみょうじが来た。
あれ?
俺の席にこいつが来るとか初めてじゃね?
とか思ってたら、普段優しく笑ってるみょうじの顔が、黒いオーラを纏って妖艶に笑っていた。
痛いくらいに腕を掴まれ、どんどん人気のない場所へと連れて行かれた。
声をかけても一切反応しないみょうじにイラついて、思わず声を張り上げた。
「おい!何処まで行くんだよ!」
『なんで?』
俺を見ないままみょうじが話し出した。
『なんであの日のことを明日香に言ったのかって聞いてんの!』
腕を離して貰えたかと思ったら、怒りに震えるみょうじが俺の方に振り向いた。
なんか、毛を逆なでてる猫みてぇだなとか思いながら、その時のことを話すと、みょうじの怒りは更に爆発した。
『教えてやった?』
声は静かなのに、俺の瞳をまっすぐに見据えるみょうじの瞳が確かに怒りに燃えていた。
『誰がそんなこと頼んだのよ!明日香めちゃくちゃ泣いてたんだから!
あのことは明日香が自分を責めることが分かってたから、あたしが自分から先生に口止めしたの!
熱で倒れた明日香本人には何処にも非がないし、あれはあたしの意思でやったことだから自業自得なの!
ついでに言わせてもらうけど、真実はいつも一つかもしれないけど、知らなくていい真実ってのもあるのよ!人を傷つける真実をえらそーに語らないで!』
一気にまくし立てられて、呆然としてる俺を置いてみょうじは教室へと戻って行った。
そういえばみょうじの制服が濡れてたな。とか、それは河野の涙だったのかとか頭の隅で考えてたけど。
それ以上にさっきのみょうじが普段のあいつと違い過ぎて頭に焼き付いちまったせいで、俺の思考のほとんどを奪っていた。
授業中もあいつ、他にどんな表情するんだろう。とか、友だちに対してあんだけ熱くなるんなら彼氏なんて出来た日にはどれだけのキモチをぶつけるんだろうとか考えて気がついた。
あれ?
あいつ彼氏いんのか?
そこで俺の思考はブツリと止まった。
とりあえず、次は俺に向けられた笑顔が見てみてぇから、謝ってみるか。
実は自分が無意識にみょうじに目をやってるなんてことは、最後まで気付かないままだったりする。
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