「おい!何処まで行くんだよ!」
ついに痺れを切らした工藤新一が叫んだ所で、あたしも足を止めた。
『なんで?』
「は?」
『なんであの日のことを明日香に言ったのかって聞いてんの!』
振り向いて工藤新一を睨み付ける。
何が起こってるか分からないって表情だ。
この鈍感バカめ。
「なんでって…あの日の放課後、たまたま保健室行ってよ。事情聞いちまったから、助けられた本人も当然知ってんだろうと思ってたのに呑気なこと言ってたから教えてやったんだよ」
その最後の言葉にあたしの中で何かがプツンとキレた。
『教えてやった?』
殊更ゆっくりとさっきの台詞を繰り返して、工藤新一の瞳をまっすぐに睨み付けた。
後はもう言葉が止まらなかった。
『誰がそんなこと頼んだのよ!明日香めちゃくちゃ泣いてたんだから!
あのことは明日香が自分を責めることが分かってたから、あたしが自分で先生に口止めしたの!
熱で倒れた明日香本人には何処にも非がないし、あれはあたしの意思でやったことだから自業自得なの!
ついでに言わせてもらうけど、真実はいつも一つかもしれないけど、知らなくていい真実ってのもあるのよ!人を傷つける真実をえらそーに語らないで!』
フンッと言いたいことだけ言って、工藤新一をおいてけぼりにして教室に戻った。
あー、すっきりした。
こんなんで懲りるなんて思わないけど、天狗になりかけの高い鼻はしっかり叩いとかないとね。
それにしても、よく本人目の前にして啖呵切れたな、あたし。
あの真っ直ぐな瞳見るのって勇気いるんだけど、勢いってすごいな。
「明日香ー」
好き放題言ったあたしはにこやかな笑みで自分の席へと戻っていった。
工藤新一の席から、授業中に度々視線を感じたのは気のせいってことにしておこう。うん。
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