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「#幼馴染」のBL小説を読む
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昨日は新一と久しぶりにゆっくりとした時間を過ごせた。
バレンタインだって張り切っていろんなお菓子を作り続けていたあたしだけど、さすがに数日そんな状態が続けば疲れるし、新一に予想以上に喜んでもらえたのもあって緊張の糸が切れたのか、あの後は随分新一に甘えてしまった。

普段は恥ずかしくて滅多に出来ない行動でも、弱ってるとやっぱり甘えたくなるらしい。
昨日の帰りはいつも頬キスで別れる新一が、普通にキスしてくれたのも嬉しかった。

だから、今日はその幸せな余韻に浸ってゆっくり起きようと思っていたのに、さっきからオートロックの呼び出しが止まらない。

しばらく居留守を決め込んでいたんだけど、しつこく繰り返されるオートロックからの呼び出しに仕方なく動くかと時計を確認するとまだ7時を少し過ぎたばかりという時間だった。
こんな時間じゃ宅配便ってわけもないし、誰だよ。
こんな朝っぱらから嫌がらせ行為するヤツは。


『はい』

「やっと出た!なまえ、俺俺!約束のチョコもらいに来たぜ?」


こんな朝早い時間だと言うのに、えらく上機嫌なワンコのテンションメーターはどうやら壊れているらしい。
そんな大声で喚くな、近所迷惑だから。


『快斗、今何時だと思ってるのよ?』

「今日の朝一でもらいに行くって言ったじゃん!俺、あれから今日まで大人しく待ってただろ!?早く俺のチョコプリーズっ!!」

『近所迷惑だから大声出さないでくれる?今開けるから上がってきて』

「おう!」


どうにも暴走気味なワンコにこれ以上オートロックの前で叫ばれてはあたしが管理人さんからクレームをくらってしまうと仕方なく解除ボタンを押した。

まだ寝起きだったからとりあえず髪を手櫛で整える。
昨日はラフな格好で寝てて良かった。
あの勢いじゃ、着替えてる暇どころかブラッシングしてる暇もなくこの部屋まで来てしまうだろうし…


ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン


言ってる傍から、チャイムを連打されてため息が出た。
朝からあのテンションに付き合いたくないんだけど、早く出ないと今度は部屋の前で喚かれること間違いなしだ。


『何もこんな朝はや』
「寝起きのなまえかっわいー!!!」


玄関を開けて、何もこんな朝早く来ることないでしょ?と文句を言おうとしたら、それより早く勢いよくあたしに抱きついて来たワンコ。むしろ飛びつかれたに近い。
お前は迷子中に飼い主に見つけてもらったワンコなのかと言いたくなるくらいには鬱陶しい。
しかも、朝早くから叩き起されてあたしの機嫌も悪い。


『快斗、今すぐ離れないと約束のチョコもあげないわよ?』


不機嫌な声のままそう言うとぱっとワンコが離れた。
どうやらチョコを貰えなくなるのは困るらしい。
大人しくなったワンコを放置してとりあえず玄関を閉めた。

うちのマンションはそこそこ防音がきいてるから、部屋に上げてしまえばお隣さんの迷惑にもならないだろうし。


『とりあえず上がって?』

「おっ邪魔しまーす!!!」


あたしからのgoサインが出た途端に元のテンションに戻った快斗はホントにワンコそのものだと思う。
とりあえず、リビングまで連れて行くとワンコはすごい勢いで吠えだした。


「にしても、いつものなまえも可愛いけど、寝起き姿ってたまんねーな!彼氏くんはいつもこんななまえを週末の度に見てんのかよ!?羨ましいヤツだな!!!」

『見せたことないわよ。いつもあたしの方が早起きだし、支度整えてからしか部屋出ないから』

「マジで!?え?もしかして俺のが先に無防備ななまえ見れたってことか!?ラッキー!!!」


ん?ちょっと待って。
寝起きで頭回ってなかったけど、なんでワンコがあたしが週末になると新一の家で過ごしてることを知ってるの?
あたし、そんな話した覚えないんだけど。


『朝一で取りに来るからってこんな時間に来た快斗のせいでしょ?それ以上騒ぐなら本気でチョコあげずに追い出すわよ?』

「待て待て待て!待ってくれって!俺が悪かったから、チョコ没収だけは勘弁してくれよ!俺、なまえのチョコ貰うのが待ちきれなくて早く来ちまっただけなんだって!!!」


その場に土下座する勢いのワンコにとりあえず追求は辞めてあげた。
ワンコの家からここまでどのくらい時間がかかるのか知らないけど、私服姿のワンコは学校に行く前に一度家に帰らないといけない筈だし。
無駄話するよりさっさとチョコ渡して帰ってもらおう。


『はい、これ。約束の余り物』

「サンキュー!」


準備してた皆へ渡した残りを詰めた袋を渡すと、ワンコは心底嬉しそうに受け取った後さっそく中身を確認し始めた。


「すっげー!オメーこんなにいろんな種類作ったのかよ!?」

『実際にはホールであげたヤツとかもあるからその倍は作ってるけどね』


ワンコに渡したのは友チョコの残りとクラスやサッカー部の皆に渡した端数だ。
全部ラッピングするのは面倒だったから、一つずつ皆と同じラッピングをして、クッキーとトリュフはそれぞれ袋詰めしたけど、残りは簡単にタッパーに詰めた。
これで文句言われたら、来年からは何を言われようが残りもんだろうと渡してやんない。


「なぁ、こっちはわかっけど、これで本命じゃねーのか?」


ワンコはラッピングされたものをテーブルに出して、クラスの分は分かるけど、と不思議そうな声をあげた。


『そっちのブラウニーとスティックタルトの詰め合わせは友チョコ用で、トリュフの詰め合わせはサッカー部へ渡したヤツだけど?』

「オメーすげー手間かけてんな!」

『友チョコは普段から仲のいい3人に渡すために見た目も可愛いの作ったけど、トリュフは量が作れるから選んだだけよ?それなら部活帰りにつまんだりも出来るかなって』

「ってことは、こっちの菓子は彼氏くん食ってねーんだな?」


友チョコの箱を持ってどこか勝ち誇ったように不敵に笑ったワンコ。
何を考えているのか簡単に分かったから、一旦喜ばせてから叩き落とすことにした。


『そうよ?新一はそっちのクラス用とサッカー部のだけ。他の男の子にあげるなら自分にも寄越せって言ってきたから』

「んじゃ、彼氏くんも食ってねーこれを食べれるのは残りもんくれって頼んだ俺だけってことだな。俺やっぱあったまイイ!残りもん頼んで正解だったぜ!!」


尻尾をパタパタと振って喜びに浸ってるワンコに、さてそろそろ現実を見せてやるかと携帯を取り出した。


『代わりに本命あげたんだけどね』

「本命ったってたかが一つだろ?それなら俺のが断然お得じゃん!この量もらえんだぜ?」


嬉しそうに紙袋を持ち上げて笑うワンコに緩みそうになる口をなんとか抑えてポーカーフェイスを保つことに成功した。
このワンコまだ分かってないな。
と、夕食の写メをワンコに見せた。


「なんだよ!?この豪勢な料理の数々!!!」

『本命チョコのオマケのあたしの手料理よ』

「はぁ!?あの彼氏くん、こんな豪華な料理いつも食ってんのかよ!?ってか、オメーこんな本格的な料理まで作れんのかよ!!?」


だから、なんで他校生のあんたがあたしが新一の夕飯を毎日作ってることまで知ってるんだ。
ってか「あの」彼氏くんって新一のことまで調べたのか?
あたし、新一との写メは和葉ちゃんにしか送ってないんだけど。
まぁ、和葉ちゃんによって自動的に服部くんのとこには送られちゃったけど。


『で、こっちが本命チョコ。ちなみに今年はフォンダンショコラ作ってみたの』


写真を夕食の写真から本命チョコの写真に変えてワンコに見せた途端、今度こそワンコが固まった。
ザマーミロ。人を朝っぱらから叩き起した挙句に抱きついてきた報いだ。
もう少し時間を考えて来てくれてたら、せめて何時にここに来るかメールの一本でも入れてくれてたら普通にチョコあげるだけで済ませてあげたのに。


「ちっくしょー!!!なんだよ!?なまえの彼氏になったら毎日の弁当や夕食だけじゃなくてバレンタインはこんな豪勢に祝ってもらえんのかよ!!?あのヤローマジふざげんなっ!!!!」


しばらく静止画よろしく固まっていたワンコだったけど、突然悔しそうに叫びだした。
だから、なんでワンコがあたしが新一のお弁当作ることまで知ってるんだ。
こいつどこからそんな情報仕入れてんのよ?


「なまえ!」

『今度は何?』

「俺に朝飯作ってくれ!!」

『は?』


こいつはいきなり何を言い出すんだ?
いや、そろそろあたしもお弁当仕上げて朝ごはん食べて支度しないといけないんだけど。


「頼む!それ食ったら今日は大人しく帰っから!!」

『いや、約束のチョコはあげたんだから、それ食べなくても大人しく帰ってよ。あたしもそろそろ朝ごはん食べて支度しなきゃな時間だし、快斗も家帰らなきゃでしょ?』

「だから!普段、休日は彼氏ん家で過ごしてるってことは彼氏くんはその度になまえの手料理の朝飯食ってるってこったろ!?」

『さっきからずっと我慢してたんだけど、どっからそんな情報仕入れてんのよ?』

「もう我慢ならねー!普段からなまえの手料理散々食っておきながら、バレンタインはあんな豪勢に祝ってもらうとか、あいつ何様のつもりだよ!!?」

『あたしの彼氏様だけど?』


当然の事実を伝えてるのだけど、きっと今のワンコには聞こえてないと思う。
新一に対する罵詈雑言を吐いては地団駄踏んでるんだから。


『ねぇ、ホントにそろそろ帰ってくんない?あたしご飯食べる時間なくなるんだけど』

「だから!せめて俺にもなまえの手料理プリーズ!!朝飯で我慢すっから!」

『いや、意味わかんないんだけど』


どうしてあたしがワンコの為なんかに手料理作ってあげなきゃいけないのよ。
本来あげる予定のなかったチョコあげただけでも十分でしょうが。


「どうしてもダメか?」

『作る義理ないでしょ?しかも、あたしに諦めません宣言してる相手にどうし』
「断ってもいいけど、そしたら困るのはオメーだぜ?」

『え?』

「作ってくんねーんなら、俺、今日から毎日なまえの学校まで押しかけてやっから」

『はぁ!?何馬鹿い』
「ついでに!彼氏くんの前で堂々と宣戦布告してやるよ。必ずオメーからなまえ奪ってやる!ってな」


このワンコなら本当にやりかねないから怖い。
他校生が毎日うちの学校に来るだけでもすぐに噂になるだろうに、新一にそんなことされたら手がつけられなくなる。
ワンコからの告白に話がついたかどうかも新一には話してないってのに。


『でも、あたしの朝ごはんのおかずは今日のお弁当の残り物よ?』

「それこそ大歓迎じゃねーか!俺、なまえの手作り弁当なんか食ったことねーもん!」


最後の抵抗で言った台詞は、むしろワンコを喜ばせただけだった。
はぁーと思い切りふっかーいため息をついて諦めることにした。
まだ新一とワンコを会わせるわけにはいかないし、それに学校でそんな宣戦布告をされた日には園子の玩具にされるのは目に見えてる。


『ホントに朝ごはんだけ食べたら大人しく帰ってくれるんでしょうね?』

「おう!」

『勿論、学校に来たり、新一に宣戦布告したりもしないんでしょうね?』

「約束するって!俺、他の誰との約束は破っても、なまえとの約束だけはぜってー守っから!」


あたしが諦めたことを知って、いつものキラキラした無邪気な笑顔に戻ったワンコにもう一度ため息をついて、朝ごはんの支度をすることにした。
何を言っても無駄なこのワンコの無駄話に付き合ってたらホントに遅刻してしまう。

あたしが出した朝ごはんにこれうめー!あれうめー!彼氏くんは毎日こんな弁当食ってんのかよ!?ホントに羨ましいヤツだな!!と騒ぎまくったワンコは、約束通り朝ごはんを食べ終わると「ごっそさん!じゃあ、またな!」と満面の笑顔でチョコの詰まった袋を持って帰って行った。

もう、朝から疲れたから今日は学校休みたいんだけど。
そうは思っていてもそんな理由で学校をサボるわけにはいかないので、あたしも急いで支度することにした。


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