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ここ数日、あたしは新一との甘い時間どころか睡眠時間までも削ってひたすらお菓子作りを続けていた。
初めは数日の徹夜くらい平気だろうって新一とのゆったりとした時間は確保したままお菓子を作る予定だったんだけど、新一に「そんなことしてたらオメーが倒れちまうだろーが!」と怒られて、夕食だけ一緒に食べてその後の普段はのんびりと過ごす時間をフルに使ってお菓子を作る時間に費やした。

けど、それだけでは到底追いつく筈もなくて結局睡眠時間を多少削ってるのが現状だ。
でも、それで皆に喜んでもらえるなら頑張る甲斐があるってもんだ。
喜んでくれるかな?少なくても明日香たちはいつも通りオーバーなくらい喜んでくれるだろうと、それを思うだけであたしは渡す前から幸せな気分に浸りながら上機嫌で次々とお菓子を作っている。
今やキッチンテーブルは常に数種類のお菓子が所狭しと並んでいる状態だ。

まぁ、前の世界でも高校時代から年々渡す相手も増えて、必然的に作るお菓子の種類が増えてたあたしだから、この光景に懐かしささえ感じているんだけど。

和葉ちゃんたちにはサプライズで渡したいから、バレンタイン当日に届くように発送して、「二人で食べ比べ出来るように違うの渡してるからわけっこしてね」と、直接手渡しが出来ない代わりに手紙も同封した。

ホントは諦めません宣言されちゃった服部くんにはあげるかどうするか悩んでたんだけど、和葉ちゃんだけに贈ってしまうと「なんで平次のはないん?喧嘩でもしたん?」と質問攻めに合うのは目に見えてるから、「家族で食べてね」と銘打って送ることにしたのだ。

新一からも友達の家族までは許容範囲だと許可が下りてることだし、問題ない、と思いたい。
服部くんがあたしに告白してきていて、諦めません宣言してることが新一にバレた日には後が怖いけど、服部くんと新一が顔を合わせるのはまだまだ先の話だし、大丈夫だろう。



というわけで、数日お菓子を作り続けたあたしは全てのお菓子を作り終えると達成感さえ感じていた。
この数のお菓子、よく作りきった!あたし!

作っただけで満足してはいるものの、皆の反応が楽しみなあたしはバレンタイン当日、いつもの通学用の鞄と一緒に大量の紙袋を抱えて登校していた。


「なまえ、おはよー!」

『園子、おはよー』

「なまえ、今日はやけに機嫌がいいわね?…って何よ?その大量の荷物は!?」

『勿論バレンタインのチョコに決まってるじゃない』

「あんた、どれだけバラ撒くつもりなのよ?」

『これでも減らした方なんだよ?本当は職員室にもいくつか種類の違うホールケーキとかタルトとか持って行くつもりだったのに、新一が“他の男に渡すなら俺にも寄越せ!”とか言い出すから諦めたんだもん』

「そりゃそうでしょうよ。新一くんからしたら、自分の彼女が他の男に義理でもチョコ渡してるとこなんか見たくもないでしょうしね」

『残念ながら、初めから義理チョコなんか作ってませーん。園子たちにあげる友チョコとクラスやサッカー部の皆に渡す日頃の感謝のお礼チョコだけでーす』

「あんたがそういう性格だってこと、すっかり忘れてたわ」


すっかり上機嫌なあたしは額を叩いて呆れたような声を出した園子の言葉なんか聞こえてすらいなかった。
新一くんも苦労するわね、なんてその後に呟いてたなんて勿論知る由もない。


『明日香ー!おはよー!』

「なまえちゃん、おはよー!」


教室についたあたしは荷物を自分の机に置いて、明日香に抱きついた。
これはもう毎朝の習慣みたいなもんだから直せる筈もなければ、端から直すつもりすらない。


「あたしね、なまえちゃんにバレンタインチョコ作って来たんだよ!」

『あたしもよ。すぐに出すからせーので交換しない?』

「もちろん!あたしもすぐに出すからちょっと待ってね」


お互いバレンタインチョコを準備しながら、手元に出したところで更に笑みを深めて同時に差し出して口を開いた。


「なまえちゃん、パッピーバレンタイン!」
『明日香、ハッピーバレンタイン!』


バレンタインチョコを一番に渡すのは明日香にしたかったんだよね。
もう明日香のチョコが貰えただけで幸せだったからその箱を抱きしめて幸せ気分に浸っていると、あたしが渡したチョコを見た明日香のテンションメーターが振り切れたのか、明日香が感嘆の声をあげた。


「何コレ!?お店でもこんなの売ってないよ!ラッピングもすっごく可愛いけど、それ以上に中身が可愛い!これ、今食べちゃダメかなぁ?でも、ラッピング解くのももったいないから、帰ってからゆっくり食べたい気もするし、どーしよ!?」

『明日香、落ち着いて。誰も明日香のチョコ取ったりしないから。寧ろ、そんなヤツいたらあたしがぶっ飛ばしてるから』


明日香たち友チョコ用に作ったのはマーブルのスティックタルトだった。
初めはブラウニーにしようと思ってたんだけど、それだけじゃ見た目が淋しいから、ホワイトチョコをベースに普通のチョコと抹茶のチョコでマーブルスティックタルトを作ってブラウニーも含めた3種類を2本ずつ入れてある。
見た目も楽しんで欲しかったから、中身が見えるように箱の表部部分は可愛い柄で縁どられてるけど、それ以外の部分はプラスチックで綺麗に並べられたそれらが見えるようにした。

想像以上にはしゃぐ明日香が嬉しくて自然とあたしの表情も柔らかくなる。
喜んでもらえたみたいでホント良かった。
これにして正解だったな。と、未だにはしゃぐ明日香の頭を優しく撫でた。


「河野さん、何をそんなに騒いでるの?」

「蘭ちゃん!園子ちゃん!見てよコレ!!なまえちゃんからもらったんだけど、すっごく可愛くない!?こんなのお店にだって売ってないよね!?あたし食べるの勿体無いくらいなんだけど!!」


明日香の興奮はまだ収まらないらしく、やってきた蘭と園子にもあたしのチョコを自慢していた。
もう、明日香がこんなにも喜んでくれるんだったらバレンタインじゃなくったって腕によりをかけてお菓子作ってあげるのに!
いや、今でも結構なペースで明日香たちにはお菓子作る度に渡してるんだけどさ。


「なまえ、これ勿論あたしたちの分もあるのよね?」

『当たり前でしょう?それは明日香と蘭と園子の分の特別な友チョコよ?』

「じゃあ早くあたしにもそれちょうだいよ!」

「園子、その前に私たちもなまえたちに友チョコ配らないと。ね?」

「あ、そうだった!あんなもん見ちゃったからすっかり忘れてたわ」


どうやら園子たちもあたしと明日香に友チョコを準備してくれていたらしい。
背後に両手を隠してるからどうしたんだろうとは思ってたんだけど、どうやらチョコを隠していたみたいだ。


「「なまえ、ハッピーバレンタイン!」」

『二人共ありがとう!はい、これあたしからの分ね。園子、蘭、ハッピーバレンタイン!』


あたしたちが友チョコを渡し合っているように、今日はクラス中でチョコが行き来している。
やっぱり女の子にとってバレンタインは特別な日よね。・





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