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何か矢継ぎ早に次々と来る質問攻めに、このままじゃ埒が明かねぇって無理矢理頭をリセットしてみた。


「…つーか、なまえって俺より父さんたちと先に仲良くなってっから、なまえの部屋が出来たのだって夏や」
「夏休みって文化祭前じゃねーか!」

「その頃からちょくちょくなまえちゃん工藤ん家に泊まってんのか?!」

「ちょくちょくって程でもねぇけど、夏休みの終わりはずっとうちで過ごしてたぜ?父さん達がアメリカ行く前も、なまえが出来るだけ父さん達と一緒に居てぇんだっつって学校帰りにそのままうちに来て、週末は今みてぇに泊まってたし…」


あん時はマジでなまえが父さんに四六時中ベーーーッッッタリ!で、俺と二人きりの時間なんか一っっっ切!なかったから、後少しの辛抱だって自分にひたすら暗示かけて、止めに入らねぇように我慢してたんだよな…我ながらよくやった!俺!!
ホンットに!仲良過ぎなんだよ!!あの二人はっ!!!

って愚痴ってたら、俺の顔の熱もいつの間にか引いていた。
こいつらが異常に興奮してたのも、どうやら山場を越えたのか、ちょっと落ち着いて来たみてぇだし(いや、まだ目が何か企んでる園子みてぇに異常に輝いてっから油断は出来ねぇけど)、これでやっと一息つけるって思ってたら、それは次のバカデケェ嵐の予兆に過ぎなかったらしい。


「工藤、さっきの言葉訂正する!」

「へ?」


さっきのって…どれのことだ?


「“同棲”じゃなくて、お前となまえちゃんは今“新婚生活”のリハーサルを過ごしてたんだな!」

「はぁ!!?しんっ?!!…なっ…なな…」


し、新婚生活!!?
こいつ、突然何言って…つーか同棲から更にレベルアップしてんじゃねーかよ!!


「親公認の交際で?寧ろ、工藤の両親がみょうじさんWelcome!な感じで?みょうじさんの部屋まで工藤の家にあるんだろ?未来の準備は万全じゃねーか!!嫁姑問題もない円満な新婚生活が約束されてんだぜ?」

「んで、週末は泊まり込みでなまえちゃんは家事とかお前の身の回りの世話してくれて、毎日美味っしー夕飯作って工藤の帰り待っててくれてんだろ?まさに良妻の鑑!!」

「ついでに!毎っ日!愛情たーっぷりな愛妻弁当まで持たせてくれてるし?」

「「「まんま新婚じゃん!!」」」

「な…な…なな何……何言っ」


テメーら何言ってんだよ!?
そんなに俺をからかって遊ぶのが楽しいか!!?
…って怒鳴りてぇのに、身体中の熱がどんどん顔に集まってるみてぇで、口も身体も上手く動かねぇ!!


「工藤、耳どころか首まで真っ赤だぜ?文化祭ん時みてぇ!!」

「バーカ!そんだけみょうじさんが自分の世話してくれんのも、自分の家に泊まんのも当たり前だって思ってたってことだろ?俺らに言われるまで劇のキス一つでこんなんなってたシャイな工藤くんが意識しねーくらいに工藤の生活にみょうじさんが溶け込んでたってことじゃねーか!」


ケラケラと俺を指差して、心底おかしそうに笑ってやがるこいつら、全力で蹴り飛ばしてもいいか?いいよな?
今なら俺、こいつらに何しても許されんじゃねぇのか?


「つーかさ、お前ん家になまえちゃんの部屋まであんなら、お前ら一緒に住めばいいのに」

「んなっ!!?」


笑い過ぎて涙まで浮かべてやがるこいつらを、マジで一人ずつ蹴っ飛ばす!って軽く殺意すら覚えながら立ち上がろうとしたら、その一言で椅子から転げ落ちそうになった。
い、一緒に住むって…それじゃあマジで同棲だろうがっ!!


「そうだよなぁ。親がなまえちゃんの部屋用意するくらい、なまえちゃん溺愛してんだろ?寧ろ、なまえちゃんをアメリカに連れて行こうとしてるくれーなんだよな?問題なくね?」


ある!問題ならある!!
俺だって思春期の男なんだから、問題あるに決まってんだろ!?
第一、そんなことしたって父さん達にバレてみろ!!
マジでなまえがアメリカに連れてかれちまうだろうがっ!!!

父さん達がなまえのこと溺愛してんのは事実だけど、そこらの箱入り娘が束になっても太刀打ち出来ねぇレベルの溺愛っぷりなんだよっ!!!!
息子の俺でも1000%以上の確率で、確実に娘をタブらかした害虫扱いされるっつーのっ!!!!!


「みょうじさん、一人暮らししてんだろ?中学生の女の子が一人暮らしとか工藤は心配じゃねーのかよ?」

「心配に決まってんだろうがっ!!だから、俺が毎日部屋まで送ってんだよ!!!」


父さん達がマジギレしてんの想像したら、一気に頭が冷めた。けど、さっきとは別の意味で頭に血が上った。

俺がなまえの心配してねーわけねぇだろ!?

アイツ、普段はホントにタメか?ってくれーしっかりしてんのに、変なとこで危機感ねぇ上に抜けてっし!
なまえに告ったっていう、あのマジシャンもどきもなまえのマンション知ってるって話だし!!
何より、俺が帰った後にまた倒れんじゃねぇかって考えたら心配通り越して俺の方がぶっ倒れんじゃねぇかってくれーにすっげー恐ぇんだっての!!!


「だったら、尚更みょうじさんと一緒に住んだ方が工藤も安心出来んじゃねーの?」

「そうそう。とりあえず、工藤が一緒に居んなら、虫避けにもなるだろーし、しつけーヤツならお前が直接ぶっ飛ばせばいいだろ?」

「なまえちゃんに何かあっても一緒に住んでんならお前がすぐに対応出来るだろうしな」

「…」


勢いに任せて、どんだけあいつに不安材料があるか必死こいて並べてたら、何故か「一緒に住めよ」的なノリ…つーか、空気になってた。

いや、だからそれは怒り狂った般若が2匹…違ぇな。実際そうなったら、蘭と園子も黙ってるわけがねぇから、4匹か?
父さんと母さんですら単体でも既に厄介だってのに、あいつらまで加わったら確実に俺の手に負えねぇ!…寧ろ、4人に追撃された後に俺の命(もしくは骨)が残ってるかどうかの心配をしてくれ…。


「でも、現実問題なまえちゃんもそっちの方が楽じゃね?自分家とお前ん家の往復もしなくていいし、2つの家を管理するとか絶対大変だろ?俺、自分の部屋だけでも無理だから、想像も出来ねーけどさ」

「…」

「それにみょうじさんも工藤と一緒に住んだ方が安心すると思うけどな。みょうじさんにどんな理由があって一人暮らししてんのか俺は知んねーけど、やっぱこの歳で一人暮らしじゃ寂しいし不安だろ?みょうじさんは女のコなんだから尚更じゃねーか」

「…」


一人で居るのが当たり前だっつってたなまえが、一人暮らしを寂しがってんのかどうかは分かんねぇけど、父さん達がアメリカ行っちまってから、俺と二人で過ごす時間が増えたのは事実だ。
それが、あの日の約束を守ってるだけなのか、父さん達がいねぇ寂しさを紛らわしてんのかの区別も俺にはつかねぇ…

父さん達を見送ったあの日、これからの俺との時間が楽しみだっつってたなまえが、ずっと幸せそうに俺の隣で笑ってたから、俺は今までそんなこと考えもしなかった。

こいつらが言ってるみてぇに、実際は大変…なんだろうと思う。
なまえは父さん達がいつ帰って来てもいいようにって、父さん達の部屋のシーツや布団まで手入れしてんのも知ってる。
でも、アイツは愚痴一つ言わねぇし、俺の前でも学校でも、ずっと楽しそうに笑ってたから考えもしなかった。
2つの家を管理する大変さ、なんて。

オメーの居場所が…帰れる場所が2つあんだって、そんな楽観的な言葉しかかけてねぇ…





結局俺は自分のことばっかで、あいつの視線で物事を見ようともしてなかったんだって…今頃気付いた。





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