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父さん達がアメリカに行っちまってから、俺が学校で心待ちにしてる時間がある。
毎日その時間が近付くに連れ自然とテンションが上がっちまうのがなまえの手作り弁当が食える昼休みだ。
腹減ってる時なんか特に昼休みが待ちきれずに、下らねぇ授業なんかすっ飛ばしてくれよ!ってずっと時計とにらめっこしてたりする。

なまえの弁当を開けるこの瞬間はどうしても自然と表情が緩んじまうのは自分でも自覚してっけど、そんだけ楽しみなんだからどうしようもねぇ。
初めてなまえの手作り弁当貰った日なんか、朝からテンションが底無しに上がり続けっからマジで大変だったしな。
こういう時は(認めたくねぇけど!)やっぱ俺も母さんの血、引き継いでんだなって改めて思う。


「うーわっ!何だソレ!?今日もなまえちゃんの弁当めちゃくちゃ美味そうじゃねーか!」

「バーロー!“美味そう”じゃなくて、実際すっげー美味ぇんだよ!!」

「工藤、俺、これが食いてーんだけど」

「誰がオメーなんかにやっかよ!これはなまえが俺の為だけに作ってくれた弁当なんだっつーの!!」


なまえの弁当を開けるとまずこのやり取りからスタートする。もうこれもこのクラスの日常のヒトコマと化して来た。

毎日このやり取りをする俺らを見かねたなまえが「おかず余分に作って来ようか?」って聞いて来たこともあったけど、盛り上がる周りのヤツらを無視して俺が全力で断った。
なまえの手作りを他の奴等にやるなんて勿体無ぇこと出来っかよ!


「それにしても、みょうじさんも毎日よく続くよなー」

「あ?何がだよ?」

「その弁当だよ。彼氏の弁当作るっていや、そりゃ初めの2、3日なら気合いも入っかもしんねーけどさ。俺、ここ半月一回も手抜きされてんの見たことねーぜ?」

「付け加えんなら、休日の部活で工藤が持ってくる弁当も同じ様に手が込んでるぜ?寧ろ休日の分はパワーアップしてる気さえするな」


今日もなまえの弁当はやっぱ最高だな!とか思って愛情いっぱいの弁当に幸せを感じて癒されながら食べてっとそんなことを言われた。


「あー、何か自分一人なら手抜きしてもいいけど、俺は成長期だし、サッカーもやってっから栄養バランスとか考えて作ってくれてんだって前になまえが言ってたぜ?」

「「「はぁ…」」」


なまえが前に蘭たちに言ってたことをそのまま伝えっと、何故か揃って呆れたようなため息を吐かれた。何だ?


「工藤、お前なぁ…。何でそれが当たり前だって思えんだよ!?」

「は?」

「寧ろ俺の母さんにその台詞を聞かせてやりたいね!中1の女の子が彼氏の為にそこまで考えて毎日毎日見ただけで分かるくれーに手の込んだ美味そうな弁当作ってんのに、自分の息子には何も思わねーのかよ!?ってな!」


全くその通りだ!って深く頷いて同意してる周りを見て、食べかけの弁当を改めて見てみた。

周りの奴等と違って、夕飯の残りや冷食なんか一切入っていないなまえの弁当。もちろん、同じ品が二日続けて出てきた試しもない。
そういえば母さんの弁当だった頃は違った気もする。
あの頃は食えたら何でも良かったから、たいして記憶にすら残ってねぇんだけど。

なまえの弁当は開けた時の彩りからして綺麗だから見てるだけでも楽しいし、見ただけじゃ何か分かんねぇのもあったりして、その度に「これはどんな味がすんだろうな」ってワクワクしながら食ってる。
少なくとも、母さんの弁当の時には、見てて楽しいとかワクワクしたことなんかなかったはずだ。


「工藤、この際だからついでに言わせてもらうぞ」

「何だよ?」

「普通、中1の彼女が彼氏ん家の家事をするとかあり得ねーんだからな?」

「は?父さん達がアメリカ行くって話になった時になまえが自分からするって言い出したんだぜ?俺にはサッカーに専念して欲しいから、家事は全部自分がするってよ。最初は朝飯も作りに毎朝通うっつーから、わざわざ遠回りしなくても学校がある日は俺が自分」
「だーかーらっ!それがまずあり得ねーんだって言ってんだよ!!」


何で分かんねぇんだって感じで机叩いてっけど、そんなんで分かっかよ。
論理付けて説明してくれ。


「工藤、こいつが言いたいことは俺も分かるぜ?中1云々の前にそんなこと自発的に言ってくれて、尚且つ文句一つ言わず笑顔で実践してくれるなまえちゃんみてーな彼女探す方が難しいって」

「は?オメーまで何言い出すんだよ?」

「いや、弁当くらいなら普通にあるかもしれねーけど、工藤の場合は毎日夕飯もなまえちゃんに作って貰ってんだよな?」

「そうだけど?なまえ、一人暮らししてっから一緒に食おうぜって俺ん家で食ってるぜ?」

「んで、掃除洗濯云々のお前ん家の家事全般もなまえちゃんが全っ部一人で引き受けてんだよな?」

「だから、何度もそう言ってんじゃねぇか」


なまえと暮らし出してから何度となく話してるはずのことを改めて聞かれたから、不思議に思いながらもそれに答えてたら、こいつら、また揃ってふっかーいため息吐きやがった(今度は全員揃ってアカラサマに肩まで落とされた!)
さっきからテメーら一体何が言いてぇんだよ!?
言いたいことがあんならハッキリ言いやがれってんだ!!
って俺が痺れ切らしてイライラし始めた時だった。


「工藤、普通そこまで世話してくれる彼女って言ったら同棲してる女くらいだ」

「どっ!?なっ…!!?」


いきなり何言い出すんだよ!?こいつは!!
俺となまえは同棲してる訳でも何でもなくてだな!!
付き合い出してそんなに経ってるわけでもねぇし!!
第一、俺らまだ中1だし!!
デートだってまだ数えれるくれーしか!!

突然の言葉に、音を立てて顔に熱が集中したかと思えば、俺の脳内回路が完全にパンクした。


「つーか、それ、あながち間違ってなくね?だって、みょうじさん、週末は工藤ん家で過ごしてんだろ?」

「お、おぅ…。俺となまえん家って意外と離れてっからイチイチ通うのも大変だし、俺ん家になまえの部屋もちゃんとあっからわざわざ荷物持って来る必要もねぇし、俺が部活してる間に普段は出来ねぇとこ掃除するっつって…」


両肩を掴まれて“同棲”とか真面目に言われたからまだ顔が熱ぃんだけど、状況を一から説明することでさっきからバクバクと煩ぇ心臓を落ち着かせようと試みたのに、これが完全に裏目に出た。


「はぁ!?工藤ん家にみょうじさんの部屋があるってどういうことだよ!!?」

「と、父さんと母さんがなまえのこと本当の娘みたいに溺愛してて…つーか自分達の愛娘だとか堂々と公言してるくれーだし、なまえがうちに泊まるって話になった時に父さんたちが部屋用意して、そっから色々揃」
「なまえちゃん、工藤の両親が居た頃からお前ん家に泊まってたのか!!?」


俺、さっきから遮られてるせいで最後までちゃんと発言すらさせてもらえてねぇんだけど…こいつら何をんなに興奮してんだ?

パンクした頭じゃ、身を乗り出して次々質問してくるこいつらの相手をしてるだけで精一杯だっつーの!
俺が一旦落ち着いて冷静になる為にも!先ずはテメーらが落ち着きやがれっ!!





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