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あたしが不思議に思ってると、新一は自分に呆れてるように苦笑いしながら、昔話の続きを始めた。


「俺ってバカだよなぁ。オメーと初めてまともに喋った…つーか、俺が河野泣かせちまって、オメーに怒られた時からなまえのこと意識してたのに、それ自覚したのが文化祭だぜ?」

『明日香のことであたしが新一を怒った時から?』


それって、ホントに一番最初の接触じゃない。
しかもあたしが一方的に言いたいこと言ったってだけの。


「あん時、オメーすっげー怒ってただろ?」

『え?うん…』


何余計なこと吹き込んで明日香泣かせてんだよ!?って、軽くぶちギレてたけど。


「いつも笑ってた印象しかなかったオメーがあんな風に怒るからビックリしてさ。友だちに対してあんだけ熱くなるんだったら、彼氏なんて出来た日にはどうすんだって考えてたら、俺、フリーズしたんだよ。オメーに彼氏がいるかどうか何て知らなかったからな」

『…』

「で、今度は俺に向けられた笑顔が見たくなって、どうしたらなまえに許してもらえんだろうってそればっか考えてた」

『あの時2回もあたしに謝って来たのって、それでだったの?』

「あれは放課後に謝りに行った時、なまえが俺のことムシしてたからまだ怒ってんだと思ってたんだよ」

『ムシしてたつもりはなかったんだけどなぁ…。あたし、新一を教室から連れ出した時に言いたいこと言っちゃったから、それでもう終わった話だと思ってたってだけで』


あの頃、君はあたしの目の保養なイケメン観察対象だったんだよ。
だから、それがバレたのかと思って、どう対応していいのか分かんなかったから逃げたんだよねー。
とまでは暴露出来ないしなぁ。


「オメーは聞こえてなかったみてぇだったから知らねぇだろうけど、俺、なまえと初めて二人で帰った時に、“俺が傍に居てやっから”ってつい言っちまってたんだぜ?」

『え?それって新一と番号交換した時のこと?ほら、何でか分かんないけど、有希子さんが急に夕食食べに来てって誘って来た日』

「あー、それも俺のせいなんだよな。なまえを夕飯に誘ってもいいかって言ったら、母さんが速攻でオメーに電話しちまったんだよ。俺の気が変わっちまう前にってな」

『そうだったんだ?』


変だと思ったんだよね。
有希子さんが唐突に今日の晩御飯は家に食べに来て!なんて言うからさ。

でも、新一、そんなこと言ってたんだ?
じゃあ、あの時新一が走って帰ったのも自分の発言に照れて赤くなった顔をあたしに見られないようにする為か。
新一はその頃から照れ屋だったのは変わってないんだなって思うとつい笑ってしまった。


「なまえが泣いてんの初めて見た時も、蘭使ってまで理由が知りたかったのは、あの時のオメーの顔が忘れらんなくて気になったからだしな」

『あー、あのボロボロ泣いてる時に新一があたしの部屋に入って来た時ね。あたし、てっきり先生が戻って来たんだとばかり思ってたんだよね。迂闊だったわ』

「へぇ?じゃあ、あの時扉を開けた俺をすがるような瞳で見てたのは、俺のこと、父さんだと勘違いしてたからなんだな?」

『…』

「まぁ、それは俺の顔見るなり涙拭って、いつも通りの平気そうな声出したオメーを見た時から分かってたことだけどな。でも、今はもう俺の前でも泣いてくれるようになったんだし、そんなことどうでもいいって」


すがるような瞳ってどんなんだ?とは思ったけど、新一的にはあたしが新一の前で泣くようになったことで満足してるのか、頬にキスしてきた。
新一ってホントにあたしの頬にキスするの好きだよね。


『でも、どうして急にそんな昔話始めたの?』

「ん?オメーが俺のこと考えるように仕向けたかったのと、俺のなまえに対するキモチのデカさを伝えたかったから?」


いや、前半は分かるけど、後半はどうかな?
一学期は新一も蘭のこと気にしてたの知ってるからなぁ。
あたしのことも意識してたっていうのにはビックリしたけどさ。


「オメーは俺の知らない表情を見せる度に俺の心を奪っていったんだよ。んで、ロミオしてる時に俺に向けられたあの視線を普段の俺にも向けて欲しくなったんだ。あの俺だけを想って、俺だけを映してる瞳でな」


何恥ずかしいこと言ってくれちゃってんだ。こいつは。
あれはそういう役だったんだから、仕方ないじゃないか。
…今のあたしはどんな瞳をしてるんだろう?
園子が文化祭の後に言ってた、恋する瞳、になってるのかな?


「なまえ、ちゃんとこっち向けよ」

『うん?』

「なまえのこの瞳がずっと欲しかったんだ」


新一の顔がゆっくりと近付いて来たから、あたしは瞳を閉じた。
どうやら、今のあたしはちゃんと恋する瞳になってるらしい。

ちゃんとキスしてくれるのかと思ってたんだけど、キスされたのは両方の瞼で…ここは普通にキスするシーンじゃないの?とも思ってたんだけど、今はあたしもこの甘い幸せな時間に浸っていることにした。


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