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(番外編)友だちとしての想い


「わぁー!なまえちゃん、すっごくカッコイイ!!」


なまえちゃんが射撃してる写真を見せてもらった時、あたしの口から出たのはそんなありきたりな言葉だった。

ホントはね、もっと別の言葉が言いたかったんだよ?
だって、その写真のなまえちゃんは横顔だったけど、すっごく真剣な表情で、いつもあたしを見てくれる時には優しい瞳もキリリとしてて、なんて言ったらいいんだろう?
そう、こっちを向いてくれたら、きっとドキドキが止まらなくなると思うんだけど、でも、その瞳にあたしを映して欲しくなるような、そんな表情だったんだよ。

そんなこと、今まで男の子にだって思ったことないのに。不思議だよね。
何だろう?そこら辺の男の子なんかより、もっとこう…凛々しい?勇ましい?あー、もうっ!うまく表現出来ないよっ!!


「あんたってホントに蘭のことも大好きよね」
『園子のことも大好きよ?』


あれ?何だろう。
あたしが抱きついたら、なまえちゃんもあたしに大好きだよってよく言って、抱き締めてくれるのに、何か今ちょっとだけ寂しく感じた。
蘭ちゃんと園子ちゃんをなまえちゃんに紹介したのはあたしで、二人と仲良くなってくれてホントに嬉しかったのに。あれ?


「ねぇ、なまえちゃん。もし、なまえちゃんが男の子だったとして、あたしと蘭ちゃん、園子ちゃんが告白したら誰と付き合うの?」


何でこんなこと聞いちゃったのか自分でもよく分かんないけど、何か真剣に悩んでるなまえちゃんに何て言われるんだろうってすっごいドキドキしてる。


『んー…あたしが男だったら誰に恋してるか分かんないから、誰を選ぶかは分かんないけど…』
「はっきりしないわね。ビシッと言っちゃいなさいよ!」
『3人の中の誰が彼女だとしても、誓って悲しませて泣かせたりなんてしないし、全力で大事にするのは当たり前だけど、』


さっきまで真剣に考えて言葉を発していたなまえちゃんが急にあたしの方を見た。
何だろう?


『もし、明日香が彼女だったら…』
「えっ!?」


なまえちゃんがあたしの頬を右手でそっと触って、いつもよりずっと柔らかくて優しい、その視線だけであたしを抱き締めてくれてるような瞳で、まっすぐにあたしの瞳を見てるから、視線が逸らせないよ…


『間違いなく明日香のこと溺愛してるでしょうから、人前でも気にしないくらい四六時中一緒に居て可愛いがってると思うな。それこそバカップルって言われるくらいにね』
「何か改めて言われると恥ずかしいよ…」


なまえちゃんに言われた言葉にもだけど、最後の悪戯っぽい笑顔にキュンってなって、心臓がドキドキしちゃって、今、ボフッって音がしたんじゃないかってくらいに顔が熱くなった。
なまえちゃんは蘭ちゃんや園子ちゃんにも何か言ってるけど、それを聞く余裕もないくらいに、あたしの頭の中ではなまえちゃんの最初の優しい瞳と最後の笑顔が焼き付いて離れてくれない。


「なまえ…あんた生まれてくる性別間違ったんじゃない?」
『何さりげなくヒドイこと言ってくれちゃってんのよ?』


♪〜♪〜


『あ、先生から電話だ。ちょっと待っててね』


そう言うとなまえちゃんは席を立って部屋から出て行ってしまった。


「なまえがあんなこと言うから、私ドキドキしちゃった!まだ心臓煩いくらいだよ」
「蘭ちゃんも?良かったー。ドキドキしたのあたしだけかと思ってたんだ」
「あんな前置きするから、何だろうって思ってたけど…まさか一人ずつ口説いていくとはね。ありゃ、男だったら落ちてるわ」
「そうだよね!なまえが男の子だったら、やっぱりモテてるよね!?」
「なまえちゃん、今でもモテてるよ?」
「河野さん、違うわよ。今でもなまえはモテてるけど、なまえって友だち以外の男の子には素っ気ないでしょ?」
「え?うん。そうだね?」


園子ちゃんは何が言いたいんだろう?


「でも、なまえって女のコは大事にするから、今以上に熱を上げて夢中になる相手が増えるだろうって意味よ。いつも優しく接してくれる相手が急にあんなこと言ってみなさいよ。口説かれてるって勘違いするに決まってるじゃない」


あー、そういう意味だったんだ!
うん、なまえちゃんが男の子だったら、あたしもなまえちゃんのこと好きになってると思う!
だって、女のコなのにあんなにドキドキしたんだもん。
男の子だったら、もうあたし気絶しちゃってるかもしれないじゃん!


「あーあ、なまえに兄弟とかいたら絶対あたし狙ってるのになー」
「もう…園子ったら」
「でも、なまえちゃんって何で一人暮らししてるんだろうね?家族の話とかあたし聞いたことないよ?」
「そういえば、あたしも何も知らないわ。蘭、何か聞いてる?」
「ううん。私も聞いたことないよ?」
「なまえちゃんから聞く大人の人の話って言ったら工藤くんのお父さんやお母さんの話だけなんだよねー」


なまえちゃんは基本的にいつも聞き役だから、あんまり自分のことは話さない。
いつもあたしの話をにこにこしながら聞いていてくれる。
それが嬉しくて、あたしはいろんな話をなまえちゃんにしたけど、なまえちゃんのことって実は何にも知らないんだって気付いてしまった。
工藤くんのお父さんたちと仲がいいのは知ってるけど、なまえちゃんのお父さんたちの話って一度も聞いたことがない。
あたしがなまえちゃんと一番仲よしだって言われてるのに何にも知らないなんて、あたしってなまえちゃんの友だちとして失格かな?
そう考えるとなんだか悲しくなってきちゃった。


「…さん、河野さん!」
「え?なぁに?」
「大丈夫?何か深刻そうな顔してたよ?」
「あのね、あたしっていつもなまえちゃんと一緒に居るのに、なまえちゃんのこと何にも知らないから友だち失格かなぁって思ってたら悲しくなっちゃって…」
「そんなことないわよ。なまえ、いつも河野さんの話嬉しそうにしてるわよ?」
「えっ?」
「そうそう。今日明日香がデートに誘ってくれたんだ、とかって河野さんのことよく言ってるよ?」


知らなかった。
なまえちゃん、あたしの話とかしてくれてたんだ。
何かそれだけでほんわか嬉しくなった。


「まるでなまえって河野さんの彼氏みたいねってみんな言ってるの知らない?」
「ううん。そんな話聞いたことないよ?」
「なまえって、いつも河野さんと一緒に居るでしょう?ほら、前に河野さんが体調悪くて倒れちゃった時も体張って守ってたし!だから、みんなそんな風に思ってるんだよ」
「まぁ、決まって最後にあんな彼氏絶対いないわよね、って付くんだけどね。理想の彼氏超えちゃってるってさ」
「だから友だち失格とかそんなこと絶対ないよ!なまえ、河野さんがそんな風に考えてるって知ったら絶対悲しむよ?」


うん。なまえちゃんだったら、きっとそうだと思う。
なまえちゃんはいつもあたしや蘭ちゃん、園子ちゃん…友だちみんなのことを一番に考えてるから。
だから、きっとあたしがこんなこと考えてたって知ったら、悲しんでくれるだろうし、どうしたらあたしのこの不安なキモチがなくなるんだろうって一緒に考えてくれると思うんだ。
それを考えるだけであたしはこんなにも嬉しくなるのに、何であんなこと考えちゃったんだろう?


「蘭ちゃん、園子ちゃん、さっきの話、なまえちゃんには内緒にしてくれる?」
「「もちろん」」



あたしの中にあった不安なキモチも、悲しかったキモチもなくなったところでなまえちゃんが部屋に顔を出した。
電話が終わったのかなって思ってたんだけど、携帯を持ってるところを見ると違うみたい。


『先生がみんなに話があるんだって。そんなに時間はかからないみたいだけど、みんな時間大丈夫?』


あたしたちはみんな大丈夫だって答えたけど、話って何だろう?
なまえちゃんが言う先生って言うのは、工藤くんのお父さんのことで、あたし、工藤くんともそんなに仲がいいわけじゃないのに。
戸惑って蘭ちゃんたちを見たけど、蘭ちゃんたちも分からないみたいだったし、電話が終わって部屋に戻ってきたなまえちゃんも、不思議そうに首を傾げていた。


『とりあえず、先生のところ行こうか?』


なまえちゃんのハワイの話の続きはまた今度ってことになって、あたしたちはなまえちゃんと一緒に工藤くんのお家に向かうことにした。




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