×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



「へぇ。この景色とかキレイに撮れてるじゃない。一面に空と海が一望出来るなんて、あんたが好きそうな景色ね」


「これがなまえが最期に見た景色、か。あんたの好きそうな景色だね。一面に海と空が広がってる」


園子の言葉に、倒れた時に見た夢の中の瑠架の台詞が被って、あの時のことを思い出していた。
あの時の瑠架はホントに寂しそうに悲し気に笑ってたから、今でもあの顔が忘れられない。


「なまえ?どうしたの?」

『ううん。なんでもないよ。それはね、先生があたしに見せたかったんだって連れて行ってくれた場所なの』


蘭が心配そうにあたしを覗き込んだから、意識を無理矢理現実に戻した。
今のあたしの現実は、この世界が全てなんだ。
どうなってるか分からない向こうのことを考えてたって、答えなんて出ないんだから。


「でも、夕日と朝日の写真まであるなんて、あんたずっとここにいたわけ?」

『あー…実はさ、昼間に連れて行ってもらったんだけど、あたしがそこからの景色に感動しちゃって、もう少しもう少しって動かなくてさ。それで、夕日まで見たんだから、せっかくだから朝日も見て行かないかって話になったんだよね』

「あんたらしい理由ね。でも、なんでそんな苦笑いしてんのよ?」

『新一が有希子さんと出かけるっていうから、先生と二人で見に行ったんだよ。このネックレスの下見に何件か有希子さんの案内でお店回ってたみたいなの。でも、先生と一泊して帰っちゃったから、新一がめちゃくちゃ怒ってて大変だったなって思ってさ』


日が上る瞬間も写真に撮って、満足してたら「さぁ、またなまえ君が動けなくなる前に帰ろうか」って先生に言われて帰ったら、家の中に入った途端に「テメー、なまえと外泊なんて何考えてんだよ!?」って新一が先生の胸ぐら掴むから、有希子さんと二人で新一を先生から引き剥がすのに苦労したんだよね。
新一は完全に頭に血が上っちゃってて、ずっと先生に罵声浴びせてたしさ。
いつもの頬キスも通用しなかったから、最終的には唇にキスして無理矢理黙らせたんだけど。


「工藤くんも、他の男の子と外泊したんならともかく、自分のお父さんとなんだから怒らなくてもいいのにねー」

「仕方ないよ。新一、自分のお父さんが最大のライバルだと思ってるんだもん」

「まぁ、なまえはおじ様と特別仲がいいもんね。新一くんも、自分よりおじ様の方がなまえと親密なのが悔しいんじゃない?」

『ははは…でも、一緒に射撃に行った時、的を先生だと思って撃ってたからすっきりしたって聞いた時にはもう苦笑いしか出なかったよ』


そりゃあ、もうホントにすっきりしました!っていう爽やかな笑顔をしてましたから。
しかも、連れて行ってくれた先生の目の前でそれを言う度胸がすごい。
あんなことしてるから、いつまで経っても先生に遊ばれるんだって何で気付かないかな。


「なまえも射撃に行ったの!?」

『え?うん。そうだけど…どうかした?』

「女のコをそんなとこに連れて行くなんて、あの推理オタクは一体何考えてんのよ!!やっぱり一回完璧にぶちのめして…」

『蘭、落ち着いて。新一に無理矢理連れて行かれたんじゃなくて、あたしが行きたいって言ったんだよ』

「え?」

『日本じゃ絶対経験出来ないでしょ?だから、行ってみたいって言ったんだよ。その時の写真も確かあったはずだけど…ほら、これだよ』

「わぁー!なまえちゃん、すっごくカッコイイ!!」


射撃してる姿を横から先生が撮った写真を見せると明日香が感嘆の声を上げた。
カッコイイか?これ。


「こんな顔出来るなんて、普段の笑ってるなまえからは想像出来ないわね」

「ホント!すっごく真剣な表情してる」

『それなら、蘭が空手やってる時と似たようなもんだって。蘭が空手やってる時も惚れちゃうくらい真剣な表情しててカッコイイもの』

「あんたってホントに蘭のことも大好きよね」

『園子のことも大好きよ?』

「ねぇ、なまえちゃん。だったら、なまえちゃんが男の子だったとして、あたしと蘭ちゃん、園子ちゃんが告白したら誰と付き合うの?」


呆れたように言う園子に蘭が空手やってるのがカッコイイのはホントのことなんだから仕方ないじゃないってやり取りをしてたら、明日香がキラキラした瞳で究極の選択を迫って来た。


「私も気になる!ねぇ、誰?やっぱり河野さん?」

『んー…あたしが男だったら誰に恋してるか分かんないから、誰を選ぶかは分かんないけど…』

「はっきりしないわね。ビシッと言っちゃいなさいよ!」

『明日香が彼女だったら、それこそバカップルって言われるくらいに明日香溺愛して、人前でも気にしないくらい四六時中一緒に居て可愛いがってると思うし』

「え?何か真剣に改めて言われると恥ずかしいよ…」

『蘭が彼女だったら、いつも一人で頑張り過ぎちゃう蘭が無理しないようにさりげなくフォローして、あたしに甘えてくれるようにしたりとか、蘭に負担かけないようにいつも気を配ってるだろうし』

「えっ?」

『園子が彼女だったら、カッコイイ男の子見つける度に目移りしちゃう園子に相手の男の子に嫉妬して、自分だけに夢中になってくれるようにいろんな手を尽くして頑張ってると思うわよ?』

「なまえ…あんた生まれてくる性別間違ったんじゃない?」

『何さりげなくヒドイこと言ってくれちゃってんのよ?』


ってか三人とも仄かに顔が赤いんだけど、どうかしたのかしら?


♪〜♪〜


『あ、先生からの電話だ。ちょっと待っててね』


微妙な空気が部屋に流れたと思ったら、その空気を掻き消すように先生専用の着うたが流れた。
三人が安堵の息を吐いてたのは見えたけど、みんな一体どうしたっていうんだろう?


『もしもし?』

「なまえ君、帰国早々学校お疲れ様だったね」

『いえ、始業式だけだったので平気ですよ。それより、どうかしたんですか?』


今日も夕食は工藤家でご一緒することになってるのに、わざわざ電話だなんて何かあったのかって思うじゃない?


「なまえ君と仲のいい蘭君を含めた三人の友人がいただろう?」

『え?はい。今ちょうどその三人がハワイの話聞きに家に来てるところですけど…』

「それは都合がいい!少し話があるんだが、みんなで家に来てはもらえないかな?そんなに時間は取らせないから」

『え?ちょっと待って下さいね。
先生がみんなに話があるんだって。そんなに時間はかからないみたいだけど、みんな時間大丈夫?』

「あたしは大丈夫よ?」

「あたしも大丈夫だよ?」

「私も平気だけど…」

『ありがとう。
あ、先生。お待たせしました。みんな大丈夫みたいです』

「そうか。それは良かった。それじゃあ、これから家に来てくれるかい?」

『分かりました』


それで電話は切ったんだけど、皆に話って何なんだろう?


「ねぇ、なまえちゃん。工藤くんのお父さんの話って何なのかな?あたし、工藤くんのお家に行くのも初めてなんだけど…」

『あたしも分かんない。みんなに話があるって言ってたけど、何なんだろうね?』


皆で工藤邸に移動中、あたしたち4人は先生に呼ばれた理由が分からなくて、不思議に思っていた。



- 303/327 -
prev next

戻る
[ +Bookmark ]