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「なまえ!迎えに来たから一緒に帰ろうぜ!」


園子たちが怒ってるとも知らずに、新一は実に爽やかな笑顔で嬉しそうにあたしを誘った。


「新一、」

「ん?なんだよ」

「今度なまえとのデートすっぽかしたりなんかしたら…」

「ら、蘭!ちょ、ちょっと待て!落ち着けって!!」


構えた蘭に新一が慌てて止めに入った時には、既に蘭の足が新一の頭を狙っていてあたしは思わず目を閉じた。


ガコッ


「新一のお父さんたちの代わりに、私たちが許さないから覚悟しなさいよ?」


蘭の足が砕いた壁がパラパラと音を立てて落ちてる…。
現実にこんなことあるんだってあたしはその光景に顔がひくついてしまっていた。
うん、蘭だけは絶対に怒らせないようにしよう。


「新一くん、今回誰のおかげでなまえと一緒にX'mas過ごせるようになったのか、ちゃんと自覚してる?」

「は?そりゃあ、なまえが俺のこと愛してくれてるからに決まっ」

「蘭、もう2、3発ヤっちゃって。新一くんに当てちゃって構わないから」

「待て!マジで構えんなよ!!ちゃんと、園子には感謝してるって!」

「そう?ならいいけど。今度何かやらかしてみなさい。冗談抜きでなまえ狙ってる子になまえの情報売り渡してやるんだから」

『園子…それはあたしが困るから辞めて欲しいんだけど?』

「あー、なまえを困らせた新一くんへの制裁にあんたに迷惑かけるわけにはいかないわね。じゃあ、こうしましょ。なまえ、新一くんに泣かされたらいつでも言って。あたしが、アメリカ行きのチケットいつでも準備してあげるから」

「園子、テメー何勝手なことほざいてんだよ!?マジでいい加減にしろよ!?」

「何言ってんのよ!それはこっちの台詞よ!だいたいあんたがねぇ、」

『ちょっと二人とも落ち着いて!』

「なまえ、止めないで。私も加わるから。新一!あんたがねぇ、」


蘭も加わってしまっては下手に止めるわけにもいかない。
蘭があたしを狙うことはないって分かってるけど、止めに入って間違って拳の一つでも喰らったら、あたしの骨があの壁と同じ運命を辿ってしまう。
これはもう3人の気が済むまで待っていようと、のんびり紅茶を飲みながら観戦してることにした。


「俺はなまえ泣かせたりしねぇし、もう二度とデートすっぽかしたりもしねぇって!だから、オメーらもいい加減落ち着けよ!」

「今回はこれで許してあげるわ」

「そうね。でも、次はないから新一覚悟してなさいよ?」


やっとまともに会話が出来るまで落ち着いた頃には三人とも肩で息をしているような状態だった。
これだけ怒鳴りあってるのに、小五郎おじ様はこの部屋まで来て止めに入ろうとはしないんだ…。
もしかして、蘭と新一のこう言った喧嘩って昔から日常茶飯事だったりするのかな?
…単に怒ってる蘭が怖いだけかもしれないけど。


『終わった?あたし、そろそろ夕食の準備に帰らないといけないんだけど』

「え?…嘘っ!?もうこんな時間!?あたしも帰らなきゃだわ。もうっ!新一くんのせいでなまえとゆっくり話出来なかったじゃない!!」

「俺のせいだっつーのかよ!?」

「新一のせいに決まってるじゃない!せっかく三人で楽しく喋ってたのに邪魔したんだからっ!!」

『はい、三人ともストーップ。第2ラウンドは辞めてね?入口塞がれたままだと、あたしが帰れないから』


息が切れるまで散々やらかしたはずの白熱した言い争いをまた始めそうになったから、すかさず止めに入った。
なんか見えないゴングが鳴りそうな気がしたんだよね。


「ったく。なまえ帰るぞ」

『あ、ちょっと引っ張らないでよ!蘭、園子またね』

「こんなヤツらほっときゃいいんだよ!」

『新一、あたしの親友悪く言わないで』

「…」


なんか新一が園子たちを悪く言いそうだったから、その前に止めた。
ら、悔しそうな顔はしたけど黙ってくれた。
いくらあたしの好きな人だろうと、あたしの友だちを悪く言うのだけは許せないし、許さない。


「新一くん、言いたいだけ言ってくれていいわよ?」

「そうそう。なまえに嫌われてもいいんだったら、好きなだけ私たちの悪口言えば?」


蘭や園子の勝ち誇ったような強気の発言に新一は舌打ちだけするとあたしを引っ張って蘭の部屋を後にした。


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