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それから、暗くなってきたからそろそろ帰るわって新一が出て行ったのを見計らったかのように携帯が鳴った。
嫌な予感はやっぱり当たるらしく、着信は服部くんからだった。


『もしもし?』

「付き合い出したってホンマか!?」

『和葉ちゃんからメールいったんとちゃうの?服部くんにも送るて書いてあったけど』

「そのメールが来たから、ホンマなんかって聞いてんねや!」

『ホンマやで?うちもメールしたやんか。昨日告白されて付き合うことになってん』


何か服部くんがえらく不機嫌な声だと思ってたら、あの写メが原因だったらしい。


「あんな顔だけの男なんか辞めとき。俺の方が絶対ええ男になるさかい」

『あの人、顔だけとちゃうで?サッカー出来るし、頭もええし、服部くんと同じ探偵志望やで?』

「何やって?」

『せやから、服部くんと同じ探偵志望者やって言うてん』

「はっ、あんなヤツに探偵なんか勤まるかいな」


いや、数年後には西の服部、東の工藤と言われる間柄になるんですが。


「おもろいやないか。せやったら、あいつよりも俺が凄いっちゅーとこ見せたるわ」

『え?』

「和葉はお似合いのカップルや言うてたけど、俺はあいつのこと認めてへんからな。せやから、お前のこと諦めるつもりもないから、それだけは覚えときや?」

『でも、うちが好きなんは』

「今は、やろ?人間なんかいつ気が変わるかわからへんねんから、こっぴどいフラれ方するかもしれへんで?」


それはそうだけど。
やっぱり蘭のことが、とか言われたら、あぁ、やっぱりそうかって納得はしてもかなりヘコむだろうしな。


『それやったら、服部くんかて、別に好きな人出来るかもしれへんやん』

「俺はこれからもなまえ一筋やって」

『そんなんわからへんやろ?』

「せやったら、こうしよか。俺が次になまえに会うんは、俺が探偵になってからや」

『え?』

「そん時、まだ俺のキモチが変わってへんかったら、また告白するよって、そん時また返事聞かせてくれや」

『そん時、うちがまだあの人と付き合うてたら、諦めてくれるん?』

「そん時は、俺に惚れさせて別れさせたるわ」

『何勝手なこと言うてんの…』


ホントに、快斗も服部くんも、何でここまであたしに執着するんだろう。
二人とも可愛い幼なじみがいるんだから、あたしなんか忘れて、原作通り幼なじみに恋したらいいのに。

そんなことを思いながら、電話を切って、園子に電話すると、色黒くんも本気だったのねってまた感心してた。


『だから、そんなとこで感心しなくていいから!諦めてくれると思ってたんだけどなぁ…』

「でも、色黒な彼氏の方は探偵になるまではなまえと会わないって言ってたんでしょ?その頃には気が変わってるかもしれないじゃない。探偵なんて早々なれるもんじゃないだろうしさ」

『そうだけど…快斗の方はどうするのよ?あたし、家まで知られてるんだけど』

「まぁ、頑張って断りなって。何なら新一くんに追っ払ってもらえばいいじゃない」

『想像するのも怖いから、お願いだから、二人のことは言わないでね?』

「分かってるわよ。言ったら言ったで面白そうだけど、なまえに嫌われたくないしね。ところでさ、冬休みは予定あるの?」

『え?冬休み?今のとこ何も予定ないけど…急にどうしたの?』

「だったらさ、一緒にスキーしに行かない?蘭と泊まりがけで行こうって話になってるんだけど、なまえも誘おうって話が出たのよ」

『園子、あたし、スキー出来ないって前に言ったわよね?忘れたの?』

「あんなの練習すれば何とかなるって!なまえは運動神経いいんだしさ」


何ともならないから言ってるんだけど?
そりゃあ、数えるほどしかスキー行ったことないけど、それでもスキーが向いてないって実感するには十分なくらいの無能ブリを晒したっていうのに。


「あ、先に言っとくけど新一くんは誘わないわよ?女だけで行くことに意味があるんだから!」

『男探しに行くとか言うんじゃないでしょうね?』

「ぴんぽーん♪大正解♪」


こいつ、中学の時からこんな性格だったのか…。
寧ろ、中1の子どもだけで泊まりがけの旅行とか大丈夫なわけ?


「それは大丈夫よ。行くのはあたしの別荘があるところだし、姉貴もついて来てくれるからさ。じゃあ、考えといてね?」


スキーかぁ…。
園子と蘭と旅行って言うのは魅力的だけど、転けまくってまともに滑れた試しがないんだけどなぁ。


♪〜♪〜


どうしようかと考えていたら、先生からの着信が入った。
何か先生からの電話って久しぶりな気がする。


『もしもし?』

「なまえ君、冬休みのことなんだが、なまえ君のパスポートも作ったことだし、今度こそ一緒に旅行でもどうだい?」

『先生、夏休みも言いましたけど、あたし、家族旅行に加わる勇気ないですよ?』

「ハワイの別荘にご招待、なら受けてくれるんじゃなかったのかい?」


あー、何かそんなこと言ってたような気もする。
あの時はパスポートがないって断れたけど、パスポートは先生が2学期が始まる前に作ったよって渡してくれたしなぁ。


『実は友だちからスキー旅行のお誘いをさっき受けまして』

「おや?なまえ君はスキーやスケートは苦手だと言ってなかったかい?」

『はい…苦手も苦手で全然出来ないので、どうしようかと悩んでいたところです』

「それなら、ハワイの方が魅力的じゃないかい?せっかくうちの愚息と付き合うことになったんだ。遠慮することはないんだよ?」

『そうですねぇ…ハワイって一度行ってみたかったんですが』

「そうか!来てくれるか!有希子、なまえ君もハワイに来てくれるらしいぞ」

『え?先生?あたし、まだ行くとは言ってないんですけど?』

「もしもし?なまえちゃん?ハワイ楽しみにしててね!色んなとこ連れて行ってあげるから!」

「え?はい…」


有希子さんの勢いに負けてつい、yesと言ってしまった。
その後、有希子さんに今度の日曜日に一緒に買い物に行こうと誘われたので、今度の日曜日は有希子さんと久しぶりにデートすることになった。


♪〜♪〜


先生と有希子さんとの電話を切ってすぐ、また着信が入った。
今日はよく電話がある日だなぁって思ってると相手は新一からだった。


『もしもし?どうしたの?』

「オメー、今度の日曜日って空いてるか?さっき部活が休みになったって連絡が入ったから、どっか一緒に」

『ごめん、新一。日曜日、有希子さんとデートなの』

「母さんと約束してんのか。なら仕方ねぇな」

『後5分早かったら、フリーだったんだけどね』

「…さっき母さんと約束したとこなんだな?」


最初はちょっと緊張気味なくらいテンションが高かった新一が、一気にテンションが落ち着いた。
まぁ、初デートのお誘いをしようとしたら、自分の親と約束してるからって断られたらこんな感じだろう。


「なまえ、ちょっと待っててくれ。
母さん!日曜なんだけどさ、俺、部活休みになったから、なまえ譲ってくんねぇか?」

「やーよ。あたしが先になまえちゃんと約束したんだから!新ちゃんはあたしたちがアメリカ行ってからでもなまえちゃんとデート出来るでしょう?お母さん、絶対譲らないからね!」

「そこを何とか頼むって!俺、部活ばっかで中々休みねぇんだから」

「絶対ダメ!日曜日はお母さんがなまえちゃんとデートするの!」


あのー、お二人さん?
会話丸聞こえなんですけど、一体どんだけ大声で話してるんですか?
そんなことを思いながら、母子のあたしのデート権を巡ったくっだらない言い争いを延々とあたしは電話で聞いていた。
もちろん、言うまでもなく新一が有希子さんに勝てたわけがないんだけど。


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