翌日、珍しく蘭が部活が休みだっていうことで、みんなでカフェにでも行こうよって園子に誘われて、明日香も交えた4人でケーキを食べながらのんびりとお喋りをしていた。
「…なの!ねぇ、なまえちゃん、聞いてる?」
『えっ?』
「あんた、さっきからボーッとしてどうしたのよ?今日一日中そんな感じじゃない」
「もしかしてなまえ何かあったの?」
『え?えっと…その…』
「はぁ…また何かあったのね?聞いてあげるから話しなさいよ。あんたってすぐ何でも背負い込もうとするんだから」
『実は、さ』
心配そうにあたしを覗き込む3人に昨日の出来事を相談することにした。
正直、あたし一人で考えるには荷が重かったのだ。
「夏の大阪旅行ってその男の子に会いに行ってたの!?」
『じゃなくて!その子とその幼なじみの女のコのとこに遊びに行ってたの!!』
「ねぇ、なまえ。問題のプリクラってどんなのなの?」
『え?ちょっと待って』
蘭にプリクラの話をされたから、携帯のデータの中から例の予約中って落書きされたヤツを探して3人に見せた。ら、呆れられた。
ちょっと、何でよ?
「あんた、何でこれ撮った時に気付かなかったのよ!?」
『え?だって撮る直前に帽子被せられて、何がしたいのか分かんなかったし、昨日までその落書きもふざけてるんだと思ってた、し』
「なまえちゃん、その男の子、本気でなまえちゃんのこと好きなんだと思うよ?」
『でも、あたしはその幼なじみの女のコが好きなんだと思ってた、から』
「でも、昨日告白されたんでしょ?アメリカ行かずに大阪においでとまで言われてるんじゃ、絶対冗談とかじゃないよ」
やっぱり、そうなんだろうか?
冗談だったら良かったのに…。
でも、あんなに真剣に言われたんじゃ冗談でしょって笑い飛ばすことも出来なかった。
「あんた、それちゃんと好きな人いるんだって断ったの?」
『昨日は一方的に言われて、電話切られちゃって…』
「つまり、ちゃんと断ってないのね?」
『うん…』
だって、なんか、服部くんと話すの気まずい、し。
あんな時間だっていうのもあって、直ぐにこっちから電話かけられなくて。
今日になったら、余計に言いにくくなっちゃったし…。
「なまえ、あんたの好きな人は誰?」
『新一、です』
「なら、さっさとこの色黒の彼にお断りの電話入れなさいよ!今すぐ!!」
『えっ!?い、今!?』
「あんたのことだから、時間が経てば経つ程言いにくくなるでしょ?だったら、あたしたちがいる今のうちに電話しちゃいなって!」
『でも、たぶん今部活中だと思うんだけど…』
「そんなのは電話して繋がらなかった時に考えればいいでしょうが!!」
園子に怒られて、どうしようって蘭と明日香を見たけど、二人とも園子の意見に賛成らしい。
あたしと視線が合うとうんうんって頷かれた。
仕方なく、携帯を手に服部くんへと電話をした。
頼むから出ないでって念じてたんだけど、そういうのは決まって叶わないと相場が決まっている。
「なんや?なまえから俺に電話してくるなんて珍しいやんか」
『あ、あのね、昨日のこと、なんだけど、』
「あー、それな。好きなヤツおるからあかんとか言うんやったら、俺諦めるつもりないで?」
『えっ!?』
「声聞いたら断りの電話やってことくらい分かるわ」
『…』
「俺は諦めるつもりないさかい、アメリカ行き考えるくらいやったら、こっちに転校してくること考えとき。ほなな」
昨日と同じく、服部くんは一方的に電話を切ってしまった。
ホントにどうしたらいいんだろう…。
「ちょっと!何ではっきり好きな人がいるからごめんって言わなかったのよ!!」
『言わなかったんじゃなくて、言わせてくれなかったのよ。好きな人がいるって言うんだったら、諦めるつもりないって言われちゃったの…』
「うわぁ…かなり本気なんだね。その男の子」
『みたいだね。アメリカ行き考えるくらいなら、大阪に転校するの考えろって言われちゃったし…』
はぁ、って大きなため息を吐くと、蘭と園子に力説された。
「こうなったら、もう怖いだなんだ言ってないで、さっさと新一くんの告白受けちゃいなって!」
「そうそう!新一となまえは両思いなんだし!なまえが付き合い出したら、その男の子も諦めてくれるって!」
『なんか話が変わってる気がする…』
「でもなまえちゃん、工藤くんの告白は途中で止めちゃったんでしょ?他の男の子からは告白されてるって知ったら、工藤くん、心穏やかじゃないと思うよ?」
『うー…』
何だってこう次から次へと問題が出てくるんだ。
あたしはアメリカ行きの話と新一のことだけでいっぱいいっぱいだっていうのに!
「それになまえにはまだ告白されそうな人が残ってるしね」
『え?』
「ほら、文化祭の時にマジックで花束出してくれたっていう例の男の子!」
『いや、さすがにそれはないって』
ワンコには可愛い可愛い幼なじみが居るんだし。
服部くんに続いて、ワンコにまで告白されるなんて、まさかそんなことあるわけがない。
「でも、その子もなまえのアメリカ行きの話知らないんでしょ?」
『え?うん。話す必要もないと思うし』
「でも、バレちゃったら、さっきの男の子みたいに告白されそうな気がするんだけどなぁ」
『蘭、怖いこと言わないでよ…。あたし、もう既にキャパオーバーでパンクしそうなんだけど…』
もう既に自分が何に悩んでるのか分かんない状況なのに、これ以上問題が増えてたまるか。
頼むから、一回全部を整理するだけの時間をくれ。
「だーからっ!なまえが新一くんの告白受けちゃえば、全部の悩みがいっぺんに解消するでしょうが!!」
『そんな余裕どこにもありません…』
その後も園子にずっと怒られながら、あたしはひたすら頭を抱えていた。
もう先生がいなくなる不安だとか、新一の告白遮っちゃった罪悪感だとか、そんなことさえ考えられないくらいにあたしの頭の中はぐちゃぐちゃだった。
これはホントに一回整理しないと、何も考えられない。
明日にでも歌いに行って、一回リセットしよう。
うん。それから、どうするか一つずつ考えることにしよう。
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