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「なまえっ!!」
『新一、部活お疲れさま』


目が覚めたって情報しかなかったから、まだベッドにぐったりしてんのかと思ってたら、まるでこの3日間がなかったみてーになまえは普通に本を読んで、いつも通りに笑ってた。
それが嬉しくて、どうしようもなくて、思わず力の限りなまえを抱き締めた。
なまえが笑ってる、ただそれだけのことがこんなにも嬉しいとは知らなかった。

でも、なまえが目が覚めたって聞いてから暴れて部活して、オマケに病院までダッシュして来た俺は体力をとっくに使いきっていて、なまえの身体にも何の異常もないことを知るとそのまま床に座り込んだ。
ダメだ。しばらく動けそうにねぇ…

でも、なまえが普段通りに笑ってっからいっか。
なんて思ってる俺は、ホントにどうしようもねぇくれーになまえに惚れちまってるらしい。

先輩たちも帰ってった頃、まだ力は入んねぇけど、やっと動けるようになった。


『新一、部活サボってばっかだとレギュラーから外されるよ?』


なんて、呆れたようになまえに言われたけど、そんなんどうだっていいんだよ。
元々サッカーは探偵に必要な運動神経を付ける為にやってるだけだしな。
それに、


「俺にとってはオメーのことが最優先なんだから」


今回のことで思い知らされた。
俺にはなまえがいねぇと何も意味がねぇんだよ。
なまえがいねーと、俺は何も手につかねぇんだ。


『でも、あたしサッカーしてる新一好きなんだけどなぁ』
「え?」


今なんつった?

好き?
サッカーしてる俺が好き?
…サッカー頑張っかな。
元々中学まででサッカー辞めるつもりだったし。


『新一、高校ではサッカー続けるつもりないんでしょ?』
「何でオメーがそのこと知ってんだよ?俺、まだ誰にも言ってねぇぜ?」
『新一は分かりやすいんだよ』


って悪戯に笑われた。
なぁ、分かりやすいっつーんだったら、俺のキモチに気付いてくれよ。
もうとっくに知ってんだろ?
だったら、そろそろ返事くれたってよくねぇか?

そんなことを考えながら、少しでもなまえの傍に居たくてなまえのベッドに腰をかけたら視線を逸らされた。


『違ったらいいなぁーって思ってたから』
「え?」
『あたし、誰かに必要以上に好かれるのが怖いんだよ』
「…」
『だから、違ったらいいなぁって思ってたの』


園子からその話は聞いていた。
だけど、実際になまえの口から聞くと、やんわりと俺を拒絶されてる気がした。

今の関係を壊しちまうのは怖ぇ、けど、それでも、なまえには俺のキモチをちゃんと知っていて欲しい。
ちゃんと俺のキモチに答えて欲しい。

俺はいつからこんなに欲張りになったんだろうな。
きっと文化祭でオメーの恋した瞳を見た時から、あの視線を俺に向けて欲しくなったんだ。


「なぁ、なまえ」
『なぁに?』
「ちゃんとこっち向いてくんねぇか?」


園子が言っていた。
なまえは自分から告白はしねぇんだって。
抱き締められて拒絶されねぇんなら、俺に気があるってことだろうって。
だったら、先に進みてぇなら、俺から言うしかねぇじゃねぇか。

でも、なまえが俺の顔を見るなり、不安気に瞳を揺らすから、俺も言おうかどうしようか悩んじまった。

けど、なまえにはちゃんと言葉で伝えてぇんだ。


「なまえ、俺はオメーのこと」
『待って』


いざ、言おうとしたら、なまえの指先が俺の口元に当てられた。


『ごめん。その先を言うの、今はまだ、待って…』


今は?
どういう意味だ?


『お願い…もう少しだけ、待って、くれない?』


今にも泣き出してしまいそうななまえを見たら、言えなくなっちまった。
なまえのキモチが決まるまで待てって意味か?


「わーった。だから、んな泣きそうな顔すんなよ」
『ごめん、なさい…。もう、少し、だけ、待って…』
「わーったから。だから泣くなって」


なまえは俺の言葉を遮っちまった罪悪感に耐えきれなくなったように、ごめんなさいとボロボロと泣き出してしまった。
前みてぇに抱きしめて慰めてやりてぇ、けど


「なまえ、もっかい抱き締めていいか?オメーの涙が止まるまででいいから」


小さく頷かれたのを見て、なまえが壊れちまわないように、そっと抱き締めた。
泣き出したこいつは、簡単に壊れちまいそうなくらい脆く儚く見えっから。
でも、離すとどっか行っちまいそうで、怖ぇから、せめて俺の腕ん中に居て欲しい。

昨日まで眠っていたなまえは精神的に不安定だったのかも知れない。
そうじゃなくても、この涙は俺が流させちまった涙だから、せめてこいつが泣き止むまではこうしていたい。

なぁ、“もう少し”がいつまでか知らねぇけど、“待って”ってことは、ちゃんと俺に言わせてくれるって意味だよな?

ちゃんと伝えれる日が来るまで待ってっから、それまでは俺の傍から離れんなよ?



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