検査が終わって、病室に運ばれたなまえは、いつもより肌が白くて、眠ってるっつーより、まるで…
何考えてんだ！
縁起でもねぇ！！
「いつ目が覚めるかわかんねぇ、だって？」
「あぁ。検査結果には異常がなかったらしい。つまり、倒れた原因が分からないということだ」
嘘、だろ？
さっきから母さんはなまえの手を握って必死に呼びかけてるけど、そういうことだったのかよ！？
「新一、学校には明日父さんが連絡するが、なまえ君の親しい友だちにだけでも今の内に連絡してあげなさい」
父さんに言われるままに蘭と園子に連絡して、河野の連絡先は知らなかったから二人に頼んだけど、正直何言ったのか、あんまり覚えてねぇ。
三人とも夜中なのに、連絡してそんなに時間が経ってねぇ内に病院まで来て、病室にいるなまえを見て、河野が抱きついて泣きじゃくっていた。
なぁ、なまえ。河野が泣いてるぜ？
慰めんのがオメーの役目じゃねぇのかよ？
俺が河野泣かせた時はあんなに怒鳴ってたじゃねぇか。
頼むから、起きてくれよ…。
三人が帰った後に、初めてなまえに触れたら、あんなに温かかったはずのなまえの手が、ひんやりと冷たかった。
「悪ぃ…」
大事な時に傍に居てやれなかった。
俺が後少し、ほんの少しでもなまえの傍に居たら、状況は違ったかもしんねぇのに。
倒れた時に傍に居てやれてたら！
「悪ぃ…なまえ…」
三人が帰った後、父さんに聞いた言葉が耳から離れねぇ。
「なまえ君の今の状況は眠っている、というよりは呼吸だけしている状態らしい」
それって植物状態と何が違うんだよ。
大脳に異常があるかどうかだけの違いじゃねぇのか？
いつ起きるかわかんねぇって…起きるかどうかもわかんねぇって…そんなのあるかよ…
なぁ、なまえ。俺、まだオメーに俺のキモチちゃんと言ってねぇんだぜ？
頼むから起きてくれよ…
また、前みてぇに笑ってくれよ…
「なまえ…っ！」
ずっと手を握ってたら、俺の体温がなまえに渡って、なまえが目を覚ますんじゃねぇかって非科学的なことを思って、入院して２日間はほとんど寝ずになまえの手を握ってたけど、父さんにそろそろ学校に行けって言われて家に追い返された。
学校に行っても、授業なんか頭に入んねぇし、部活してても全然集中出来ねぇ。
こんなんなら、ずっとなまえの傍に居た方がマシだと思っていた翌日、授業中に別の教師が教室に入って来た。
「お前ら、朗報だ！みょうじがさっき目を覚ましたって連絡が入ったぞ！！」
今、何っつった？
騒がしくなった教室内で、俺の頭だけが働いてねぇ。
「新一、良かったね！なまえが目を覚ましたんだって！」
蘭が軽く涙ぐみながら言った言葉が頭ん中でグルグルと回った。
なまえが目を覚ました？
なまえが目を覚ましただって！？
「コラ！工藤！まだ授業中だぞ！どこへ行く気だ！」
「俺、これから病院行くんで早退しますっ！」
「工藤、落ち着けって！キモチはわかっけど、この授業終わったら放課後だろうがっ！もうちょっと待てって！」
「離せ！俺はなまえんとこ行くんだよっ！！」
「おい、お前らも工藤止めるの手伝えっ！」
「テメーら、離せっつってんだろーがっ！！」
なまえが目を覚ましたっつーのに、授業なんか聞いてられっか！
もう起きねぇかもしれねぇって言われてたんだ！
あいつが起きたら、俺が傍にずっと居てやるって決めてたんだ！
「離しやがれーっ！！」
って暴れてる間に授業は終わったってのに、どっから聞き付けたのかサッカー部の先輩たちが教室まで迎えに来た。
「なまえちゃんも目を覚ましたことだし、今日はちゃーんと部活に集中すんだよな？」
「俺、これからなまえんとこ行くんで、今日は部活休みま」
「誰がんなことさせっかよっ！俺らだってなまえちゃんのこと心配してたんだ。ちゃーんとお前にも部活に参加してもらうからな！」
「いや、だから俺は今日は休みま」
「お前一人だけ行かせるなんて不公平なことはさせねぇからな！なまえちゃんとこ行きたかったら、きっちり練習ノルマこなしてから行け！！」
何で先輩らまで邪魔すんだよ！？
俺はただなまえのとこに行くっつってるだけじゃねぇか！
人伝に聞いたんじゃなく、なまえがちゃんと起きてるとこ見て安心してぇんだよっ！！
「お前と今日なまえちゃんの見舞いに行く奴らの分はちゃんとノルマ減らしてあっから、なまえちゃんとこに早く行きてぇんだったら、きっちりノルマこなしてから行け！いいな！？」
無理矢理部室まで連れて行かれた俺は仕方なく、ユニフォームに着替えて、ノルマをハイペースでこなしてから病院までダッシュした。
父さんたちは病院に居るし、博士に車で迎えに来てもらう時間を待つのも、もう嫌だった。
これ以上待たされてたまるか！
俺は早くなまえに会いてぇんだよっ！！
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