×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



(番外編)新一side


「あ、もしもし?園子か?」


なまえの家から帰って来た俺は、とりあえず今日の報告を入れろと言われてた園子へと電話をかけた。


「随分遅かったわね。なまえに逃げられてたの?」
「あぁ、父さんとデートだっつって帰って来たの22時前だぜ?信じらんねぇだろ?」
「よく部屋に入れてもらえたわね」
「帰って来るまでなまえの部屋の扉の前でずっと待ってたからな」
「…」
(こいつも執念深いのか)

「園子?」
「何でもないから気にしないで。それで?どうだったのよ?」
「あー…微妙?何か悩んでくれたっぽいけど、日本に残るとまでは言ってくれなかったからな」
「まぁ、1回の説得で落ちるような子じゃないからね。悩ませられたんなら、まぁまぁってとこじゃない?」


まぁ、そうなんだけどよ。
今日の話聞く限りじゃ、俺が父さんに勝てねぇとムリっぽいし?
でも、


「最後の方とか俺、懇願してたんだけどな」
「そこまでしてんだったら、いっそのことなまえ抱き締めちゃえば良かったのに」
「いや、だからなまえ抱き締めて懇願してたんだって」
「マジ!?それで!?」
「それでって何だよ?」
「その時のなまえの反応に決まってんじゃない!」
「だから、少しは悩んでくれてたっつっただろ?」
「そうじゃなくって!新一くんに抱き締められて、なまえは逃げたり嫌がったりしたのかって聞いてんの!!」
「は?別に今日もそんなことされなかったぜ?っつーか、されてたら、俺今頃めちゃくちゃヘコンでるっつーの」
「ちょっと待って。今、今日“も”って言った?」
「言ったけど?」
「あんた、前にもなまえ抱き締めたことがあるってこと?」
「何回かだけどな」
「あんた何でそれが出来て告白出来ないのよ!?嫌がられないってことはなまえも新一くんに気があるってことでしょうが!!」
「いや、それとこれとは別っていうか…」


だって告白して断られたら、俺撃沈すると思うし。
寧ろ、また前みてーに避けられんのも遠慮してぇし。


「ん?悪ぃ、キャッチ入ったから切るわ」
「ちょっと新一く」
「もしもし?」
「新一、これからなまえ君を病院に連れて行くからお前も出かけられるように準備しとけよ」
「は?何言って」
「なまえ君が部屋で倒れてたんだが、意識がないんだ。呼びかけても反応しない」
「冗談、だろ?」


だって、ついさっきまでなまえは俺と話してたんだぜ?
第一、父さんが今なまえの家に居んだったら、俺が帰って直ぐに家を出たってことになるじゃねぇか。
また、父さんのタチの悪い冗談に決まって


「父さんは救急車に付き添うから、お前は有希子と一緒に病院に来い。いいな?」


父さんの後ろでは、確かに救急車のサイレンが鳴っていて、俺は自分の身体から血の気が引いて指先からだんだんと冷たくなっていくのを感じていた。


「母さん!今父さんから電話が来たんだけど、」
「新ちゃん、出掛ける準備出来た!?直ぐに病院に行くわよ!」


いつどこに出かける時だって、化粧とか完璧にする母さんが、素っぴんのまま髪型も整えずに出かけれる洋服に着替えてコートを羽織っただけで病院に行くっつってる。
オイオイ、マジかよ?
なまえが倒れたなんて、タチの悪い冗談、だよな?

母さんの車ん中で、なまえに電話をかけたけど、いっくら待っても繋がんなくて、コール音だけが虚しく響いていた。
頼むから出てくれよ!

病院に着いたら、父さんが待ち合い室で難しい顔をして座っていた。


「優作!なまえちゃんは!?」
「今、精密検査を受けてるが…」
「ねぇ、なまえちゃんは大丈夫なの!?」
「有希子、落ち着きなさい」


父さんに必死でなまえの容体を聞いてる母さんを見ても、実感が沸かなかった。
二人がまた俺を嵌めようとしてるって言われた方が、まだしっくりくる。


「なぁ、父さん。なまえが倒れてたってホントなのかよ?」
「お前が帰って来て直ぐになまえ君に連絡したんだが、電話が繋がらなくてな。心配になって見に行ったら、リビングで倒れていたんだ。玄関の鍵も掛かっていなかったから、たぶんお前が出て直ぐに倒れたんだろう」


俺がもう少し傍に居てやってたら、すぐに対応出来てたっつーことか…?
医者と父さんたちが難しい顔して何か話してんのが見えたけど、会話が全然耳に入って来なかった。



(誰か…誰か嘘だって言ってくれよ!!)



- 274/327 -
prev next

戻る
[ +Bookmark ]