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「なまえちゃん!目が覚めたって聞いたけど、大丈夫か!?…って、工藤。そんなとこで何してんだ?」


サッカー部の先輩方数名がお見舞いの果物を片手にあたしの病室を訪れた時も、新一は未だに床から起き上がれない状態だった。
だから、キミはどんだけ無茶してここまで来たんだ?


『わざわざお見舞いありがとうございます』

「目が覚めたばっかだって聞いてたから心配してたんだけど、なんか元気そうじゃねーか!」

『はい。ご心配おかけしてすみません』

「気にすんなって!俺らなまえちゃんの笑顔が見れて安心したし!な?」

「そうそう。なまえちゃんが倒れたって聞いた時はマジでビックリしたけど、検査結果も大丈夫だったんだろ?」

『はい。でも、念のために2、3日入院らしいですけど、至って元気です!』

「そっか!まぁ、今はムリせずにゆっくり休んでくれよ?なまえちゃんが笑顔ってだけで、俺らは十分だし!」

「あ、これお見舞いの品な。何にしたらいいか分かんなかったから、定番になっちまったけど…」

『あたし果物大好きなので嬉しいです。ありがとうございます!』


それから少し、先輩方とお話をしてたんだけど、起きたばっかでムリさせちゃ悪いからって早々に先輩方は帰られてしまった。
なんかあたしサッカー部に関係ないのに、文化祭では花束もらったり、今もお見舞いもらったりお世話になりっぱなしだな。


「なぁ、なまえ。俺の存在忘れてねぇか?」

『起きれるようになったの?』


すっかり空気と化していた新一に声をかけられるまで、新一がいることを忘れてたけど、声がした方を向くとやっと新一が床から立ち上がろうとしてるところだった。


「ったく、先輩たちも俺の存在ムシしやがって。先輩たちに邪魔されてなきゃ、もっと早くなまえんとこ来れてたってのに」

『…新一、部活サボってばっかだとレギュラーから外されるよ?』


あたしがアメリカ行きのお誘い受けてたって話聞いた時だってサボってたクセに。


「しゃーねぇだろ?俺にとってはオメーのことが最優先なんだからよ」


そんなことをさらりと言わないで欲しい。恥ずかしくて顔に熱が集まるから。


『でも、あたしサッカーしてる新一好きなんだけどなぁ』

「え?」

『新一、高校ではサッカー続けるつもりないんでしょ?それなら今の内にたくさん見ておきたいなぁって』

「何でオメーがそのこと知ってんだ?俺、まだ誰にも言ってねぇぜ?」

『新一は分かりやすいんだよ』


なんて、驚いてる新一を見ながら、笑って誤魔化した。
元から知ってたから、とは言えないもん。


「その割りには俺のキモチに気付くの遅かったけどな?」


新一がベッドに座りながら、あたしを見て悪戯っぽく笑った。


『違ったらいいなぁーって思ってたから』

「え?」

『園子か蘭に聞いてるかもしれないけど、あたし、誰かに必要以上に好かれるのが怖いんだよ』

「…」

『だから、あたしの勘違いだったらいいなぁって思ってたの』


新一のあたしへのキモチも、あたしの新一へのキモチも。
両方勘違いだったらいいなぁって思って気付かないフリをしてたの。

先輩にもらった果物を見ながら、そんなことを思ってた。


「なぁ、なまえ」

『なぁに?』

「ちゃんとこっち向いてくんねぇか?」


さっきから果物に向けていた視線を新一に向けると、ちょっと緊張してる感じの新一がいた。



(お願い、まだ言わないで)


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