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3人が帰ってしまって、静かになった病室で、先生が暇つぶしにって持って来てくれた小説を読んでいると突然扉が勢いよく開いた。


「なまえっ!!」

『あ、新一。部活お疲れさま』


何やら相当急いで来たらしい新一は制服も着崩れているし、息も切れて肩で呼吸をしていた。
けど、あたしを確認するなり病室に駆け込んで来て、あたしを力いっぱいに抱き締めた。

ちょ、苦しいからっ!
何コレ!?文化祭の苦痛再び!?


「良かった…」

『新、一?』

「なまえの目が覚めて…ホントに良かった!」


感極まったらしい新一が、更に腕の力を強めるから、息をするのも難しくなって来た。
蘭たちに様子を聞いてたし、有希子さんのこともあるから、多少なら我慢しようと思ってたけど、これはムリだから!


『し、いち。苦し、から、離、して!』

「どっか苦しいのか!?医者呼ぶか!?」

『じゃなくて!新一が抱き締める力が強すぎて、息が出来なくて苦しかったの!!』


あたしを解放した途端に肩を掴んで揺さぶった新一が、ナースコールを押そうとするから慌てて奪い取った。
キミ、少しは落ち着け!!


「あ、悪ぃ…」

『少しは落ち着いた?』

「おう…」


やっと我に返ったらしい新一にあたしも安堵の息を吐いた。
いや、蘭たちに話は聞いてたから、多少は覚悟してたけど、まさかここまで取り乱して我を忘れてるとは思わなかった。


「で、オメー大丈夫なのかよ?」

『大丈夫だよ?検査結果も異常なかったって聞かなかったの?』

「いや、それは聞いてたけどよ…ずっと寝たまんまだっただろ?どっか調子悪いとかないのか?」

『ないよ?至って普通。寧ろ3日間眠ってたって聞いてビックリしたくらいだし』

「そっか…。なら良かった」


そこまで会話を終えると、新一は力尽きたみたいに床へと座り込んだ。
あんた、一体どんだけ無茶してここまで来たんだ…。


『蘭たちから聞いたんだけど、あたしが目を覚ましたって聞いてから暴れてたんだって?』

「バーロー!3日間も寝たまんまで、医者にもいつ起きるかわかんねぇって言われてたオメーが起きたって聞いてじっとしていられっかよ!」


この血は絶対有希子さん譲りだな。
もう少し、先生みたいに余裕を持ってくれ。
…いや、中1であんだけ冷静だったら逆に怖いけど。


「それに、オメーは知らねぇだろうけど、オメーが寝てる間何しても反応なかったんだぞ?寝てるっていうより、呼吸してるだけって状態だって医者にも言われてたんだ。気になるに決まってんだろーが!」


え?何?
あたし、軽く植物状態だったわけ?
よくそんなんで起きた途端に普通に過ごせてるな、あたし。
そりゃあ、有希子さんも泣くわけだ。


「それに…」

『うん?』

「俺があん時帰ってなきゃ、オメーのこと助けられたかもしんねぇってずっと思ってたんだ。早く目が覚めた状態を確認して安心したかったんだよ…」


助けられたかもって聞きようによってはあたしが死んでるみたいに聞こえるんですけど?
なんて、未だに肩で息をして呼吸を落ち着けてる新一には言えないけど。


『別にあたしが倒れたのも寝たきりになったのも、新一のせいじゃないと思うけど…あたし見て少しは安心した?』

「おう。いつものなまえで安心した」


あたしの感覚では、ついさっきまであたしのアメリカ行きの話で苛ついて不機嫌だったり、悲しそうな顔してた新一が極上のキラキラスマイルを見せたので、あたしの心臓は勝手に鼓動を早めていた。

急にその笑顔をするのは辞めて欲しい。



(ホントに心臓に悪いんだから)


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