次に目が覚めた時、あたしの目に映ったのは知らない天井だった。
此処は、どこだろう…?
「なまえちゃん!?気がついたの!?」
『有希子さん?』
「良かった!気がついたのねっ!!」
少し上体を起こしたあたしを優しく抱きしめてくれた有希子さん。
周りを見る限り、病室、に見えるけど。
『有希子さん、ここは病院、ですか?』
「そうよ。なまえちゃんが倒れてたのを優作が見つけたの。なまえちゃん、3日間も眠ってたのよ?」
あたしを離した有希子さんは滲んだ涙を指で拭いながら状況を説明してくれたけど、理解が出来なかった。
倒れてた?3日間眠ってた?
だって、あたしはさっきちょっと夢を見てただけで…いや、あれはホントに夢、なのか?
『あの、倒れてたって…?』
「新ちゃんがなまえちゃんとこに話に行ったのは覚えてる?」
『はい』
それこそ、ついさっきのことじゃないか。
あたしは玄関の鍵を閉めて、珈琲カップを片付けようとしてたんだから。
「あの日、新ちゃんが帰って来て、優作がなまえちゃんに連絡しようとしたんだけど、電話が繋がらなくてね?それで、心配した優作がなまえちゃんの家に行ったらなまえちゃんが倒れてたのを見つけたの」
『そうだったんですか』
じゃあ、あの立ち眩みみたいな症状のまま倒れたんだ。
身体に力が入らなかったのは覚えてるし。
「でも、検査してもどこにも異常はないって…だから、いつ目が覚めるかも分からないって話だったからあたし…」
『ゆ、有希子さん、泣かないで下さい!あたしならもう大丈夫ですから!』
また瞳を潤わせて言葉を詰まらせた有希子さんに慌ててしまった。
先生、今こそ助けて下さい!
あたしには有希子さんを泣き止ませるスキルなんてありません!!
「でも、なまえちゃんが目を覚ましてくれてホントに良かったわっ!」
むぎゅーっとまた抱きついてきた有希子さんに、ちょっと苦しいと思いながらも泣かれるより全然マシだと大人しくされるがままにしていた。
「有希子、なまえ君の様子は…なまえ君!目が覚めたのかい!?」
『あ、先生。ご心配おかけしたみたいですみません。さっき気がついたところです』
未だにあたしから離れない有希子さん越しに先生に挨拶をすると、先生はあたしに近づいてきてそっと頭を撫でてくれた。
「そんなことは気にしなくていいんだ。なまえ君が無事に目を覚ましてくれたんだから」
『ありがとうございます』
先生の安心したって感じの優しい微笑みにあたしも笑顔で返したんだけど…有希子さんはいつになったらあたしを解放してくれるんだろう?
「有希子、先生にはもう知らせたのかい?」
「あら、イヤだ。すっかり忘れてたわ。あたし、先生呼んでくるわね」
やっとあたしを解放してくれた有希子さんは、笑顔で病室を出て行った。
良かった。泣き止んでくれて。
「なまえ君、どこか調子の悪いところはないかい?」
『いえ、大丈夫です。普通に少し寝て起きたって感じなので、3日間も眠ってたって聞いて少しビックリしましたけど…』
「そうか。それなら良かった」
そう言って、先生もあたしを優しく抱きしめてくれた。
先生の温もりが心地いい。
有希子さんがお医者さんを連れて帰って来るまでの間、あたしは先生の腕の中で安心感に包まれながら、優しく頭を撫でてもらっていた。
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