「とりあえず、アメリカ行きは今すぐどうこうって話じゃないって言ってたわよね?」
『うん…あたしが2年生に上がる時までに決めてくれたらいいって。日本に残ってみて、ダメそうだったらアメリカに来るのでも構わないって話だった』
新一の話が終わった後は、またあたしのアメリカ行きの話に戻ってしまった。
今日は二人ともこの話をしに来てるんだし、先生の話じゃないだけマシかもしれないけど。
「ねぇ、なまえ。あんた、前に好きな人とは少しでも一緒に居たいって言ってたわよね?」
『え?うん。確かに言ったけど…それが何?』
うーんと唸った後に、急に随分と前にした恋愛話を始めた園子にあたしの思考がついていかない。
園子、何が言いたいの?
「じゃあさ、新一くんがなまえの恋愛を臆病にしてる壁をぶっ壊してくれたら、アメリカに行きたいってキモチもなくなるんじゃない?」
『え?』
「あっ!そうだよ!新一が頑張れば全て丸く収まるじゃない!園子ナイスアイデア!」
『え?えっ!?ちょっと待っ』
「新一くんもなまえがアメリカ行くって話聞いたら形振り構っていられないでしょうしね!」
「それは大丈夫だよ!私たちが何か言わなくても河野さんがアメリカなんて行かないでーとかって言うと思うし!」
「それでも新一くんが動かないようなら、蘭、頼んだわよ!」
「そこは任せといて!」
『ちょっと二人とも待ってったら!』
あたしの存在を完全に無視して話をまとめてしまった二人の間に割って入って話を止めた。
何でそういう話になってんのよ!
「なんでってあんたたち両思いなんでしょ?」
『え?』
「なまえが自分のキモチに気付かないフリしてるってだけで、あんただって新一くんのこと好きなんでしょ?」
『…』
「なまえは自分から告白しないタイプだって言ってたし、恋愛するの怖いって言うし、これはもう新一くんに頑張ってもらうしかないでしょ!」
『でも…新一の都合も無視してそんなプラン立てても…』
「大丈夫!新一がなまえがアメリカ行くかもしれないって話聞いて黙ってるわけないから!」
え?それって何が大丈夫なの?
あたしは新一と今の関係のままの方がいいんだけど…
「何言ってんの!両思いなんだからさっさとくっついちゃいなさいよ!」
『いや、だって…』
「だって?」
『あたし、好きだって意識しちゃうと相手のこと意識し過ぎてまともに話せなくなっちゃうし…』
「…」
「…」
あれ?何、この沈黙?
あたしまた何か変なこと言った?
「そん時は、あたしか蘭のとこに逃げて来ていいから!」
『…ホントに?』
「もちろんよ!ね?蘭!」
「うん!」
「「(とりあえずなまえがその状態になったらあと一押しってことよね?)」」
「とりあえずなまえはなーんにもしなくていいから、安心しなって!」
「そうそう!なまえはいつものなまえのままでいいから!ね?」
『え?うん?』
なーんか二人に丸め込まれてる気がするんだけど…。
明日からの学校、何か怖いな。
なんて、顔を見合わせてやる気満々ににっこにこと笑ってる二人に何も言うことが出来ないあたしは一人不安に思っていた。
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