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「は?」


先生の家での話を伝えると園子は唖然としていた。


「アメリカってどういうこと!?なまえちゃん、アメリカに行っちゃうの!?」

『明日香、落ち着いて。まだそういうお誘いを貰ったってだけで行くと決めたわけじゃないから』


瞳いっぱいに零れそうな程、涙を浮かべて明日香があたしの服を引っ張った。
まるで小さな子どもがお母さんを引き留めるように、握った服を揺さぶっている。


「ねぇ、なまえ。その話、新一は知ってるの?」

『え?あたしは直接先生たちに言われただけだから分からないけど…知らないんじゃないかな?』


冷静を装ってる蘭も動揺しているんだろう。
瞳が不安気に揺れている。


「なまえ…あんた、ホントにアメリカに行くつもりなの?」


それまで黙っていた園子が発した言葉はそれだった。


『正直なとこ迷ってるんだ。行くか行かないか…』

「イヤだよっ!なまえちゃん行かないでっ!!」

『明日香…』


必死にあたしを引き留めようとしてる明日香は軽く錯乱状態に入ってしまっている。


『行くにしても行かないにしても、こういう話があるってこと、早めに三人にはきちんと話しておきたかったんだ』


あたしの言葉を聞いて三人は黙ってしまった。

未だにあたしの服を握り締めている明日香の手が不安に耐えきれずに震えている。
明日香の手の上からあたしの手を被せた。
このくらいで落ち着くとは思えないけど、何も出来ないあたしが歯痒くて、つい手が出てしまった。


「あ、たしはっ…なまえちゃ、んに傍に、いて欲し、いよっ…そん、な遠くに行、っちゃうなんて、イヤだっ!」


ついに溢れだした明日香の涙を優しく拭うけれど、とてもじゃないけど、直ぐに泣き止むような感じじゃなかった。


「なまえちゃんはっ、あたしの特別な友だちでっ、親友でっ…お姉ちゃんみたいな存在でっ…近くに、居て、欲しいんだよっ!」


涙をボロボロと溢しながら、あたしに抱きついて取り乱した明日香を優しく抱き締めて背中を擦りながらそっと頭を撫でる。


『あたしにとっても明日香は大事な友だちで、可愛い妹みたいに大切で、かけがえのない存在だよ?』

「だったらっ!アメリカなんて行かないでっ!!」


その後は泣きじゃくる明日香を慰めるだけで時間が過ぎてしまった。

園子と蘭は二人して複雑な顔をして、顔を見合わせていたけれど、明日香の状態を見て、今は自分たちが話せる状況じゃないと言葉を飲み込んでいるようだった。


「ねぇ、なまえ。明日、園子と一緒になまえの家に行ってもいい?」


明日香がやっと落ち着いて先に帰った頃、蘭がやっとあたしに話しかけてくれた。

断る理由なんてもちろんない。
明日香みたいに二人には二人の言い分があるんだろうって分かるから。


『もちろん、いいよ。何もおもてなしは出来ないけどね』

「そんなことはどうでもいいのよ!あたしたちは、なまえに話したいことがあるだけなんだから!」

『お手柔らかにね?』


何を言われるのかが怖くて苦笑い気味に返したら、それは保障出来ないわね。と一蹴された。



この週末は嵐の予感だ。



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