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今日こそは父さんに文句言ってやる!と本屋に行くのも辞めて、家に直帰した。


「父さん!!」

『あ、新一。部活お疲れ様』


父さんの書斎をバタンと思いきり開けたら、そこには何故かなまえが居て、にっこり笑って俺を出迎えてくれた。
は?何でここになまえがいるんだ?


「新一、扉は静かに開けなさい。なまえ君がビックリしてるだろう」

「あ、悪ぃ」


何かなまえの笑顔にイラつきとか全部ぶっ飛んじまったせいで、普通に謝っちまった。
あれ?俺、今日こそは父さんに文句言おうと思って来たんだけど…。


『新一、先生に用事なんだよね?あたし出ようか?』

「あ、イヤ。特に用事があったわけじゃ…」

『そうなの?先生のこと呼びながら入って来なかったっけ?』

「あ、それは、その…」

『ん?』


なまえが不思議そうな顔をして俺を覗き込む。
くそっ!なまえの前で父さんに文句なんか言えるわけがねぇじゃねーかっ!!


「新一、なまえ君が美味しいケーキを見つけたと差し入れしてくれたんだ。食べて来たらどうだ?」

「へ?」

『今日園子と出かけててね、たまたま入ったカフェのケーキが美味しかったから買って来たの』

「父さんたちはさっきなまえ君と食べてしまったが、新一の分はちゃんと残してあるぞ」

「お、おう。じゃあ食ってくる」

『いってらっしゃーい』


なまえにひらひらと手を振られてその場を後にしたけど、何か釈然としねぇ。
何でこのタイミングで父さんの部屋になまえがいんだよ!!


『先生、これで良かったんですか?』

「あぁ、お陰で助かったよ」

『よく分からないですけど、あたし先生とお喋りしてただけですよ?』


ケーキを差し入れして、すぐに帰るつもりだったのに、何故か先生に「新一が帰って来るまでで構わないから少し話していかないかい?」って誘われて、珈琲タイムの後、ダラダラと先生の部屋でお喋りしてたのだ。
(ちなみに先生はお喋りをしながらも原稿をきっちりと仕上げていた)


「いやいや、なまえ君が居てくれたお陰で台風が威力を無くしたじゃないか」

『台風?新一のことですか?』

「あぁ、大型の台風が私に直撃するところだったのが、ただの低気圧になってしまった」


なんて先生は楽しそうに笑っている。
確かに新一が部屋に入って来た時の勢いは凄かったけど。


『先生、よく今日台風が来るって分かりましたね?』

「そろそろ来るんじゃないかと思っただけだよ。別に台風が来なくてもなまえ君と楽しく話しながら仕事が出来るなら私にとって一石二鳥だからね」

『あたし、ただ単に先生のお仕事の邪魔してるだけじゃないんですか?』


只でさえ今週は先生のお時間を散々割いてもらっていたのに、それだと申し訳ない。


「そんなことはないさ。現に私の手は止まってないだろう?」

『はい。器用だなぁって思ってたところです』


それからもう少し先生とお話をして、あたしは先生に送ってもらって工藤邸を後にした。

帰り道、新一から「帰るんなら声かけてくれれば俺が送ったのに」ってメールが来たけど、先生に送ってもらってるから大丈夫だよって返信したら「今度は絶対俺が送ってやるから!」って返って来た。

何をムキになってるんだろうと不思議に思ってる中、先生にメールを見せると予想通りだったのか、楽しそうに笑った後、してやったりって感じな不敵な笑みを浮かべていた。


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