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『という訳で、とりあえずは落ち着きました。ご心配おかけしてすみませんでした』


放課後、昨日と同じくいつもの喫茶店で先生と待ち合わせをして事の経緯を説明すると、先生は何だか苦笑いをしていた。


「まぁ、なまえ君が元気になったことだし、私が余計なことを言う必要もないだろうが…」

『はい?』

「いや、今後に期待、と言った感じかな」


先生の顔を見るとあたしの心の中を全部見透かされてる気がした。
あたしも先生も詳しいことは何も言わなかったけれど。

でも、今後に期待、は何に期待してるんだろう?


「昨日の様子じゃしばらくは無理かとも思ったんだが、また私の家にも遊びに来れそうかい?」

『はい、もちろんです!』

「そうか。それは良かった。有希子がまたなまえ君と出掛けたいと言っていたよ。だが、新一のせいでなまえ君に連絡しづらいとえらく怒っていてね」

『えっと…それって新一を怒ってたってことですか?』

「もちろん。まぁ、私も止めはしなかったがね」


…新一、ホントに昨日は散々な目に遇ってたんだな。
家でもそれとか…なんか申し訳ない、というか新一が哀れになってきたんだけど。


「昨日も言ったが、なまえ君が気にすることはない。新一の自業自得だ」

『有希子さんにはもう大丈夫なので、いつでも連絡して来て下さいとお伝え下さい』

「そうするよ。放っておくと有希子の怒りは収まりそうにないからね」


そもそも、新一とギクシャクしたからといって有希子さんが遠慮することなんかないと思うんだけどな。
有希子さんには関係ない話なんだし。
やっぱり家族だから気にするのかな?


『なんか、家族って有難いですね』

「急にどうしたんだい?」

『いえ、息子さんのしたことに怒ったりとか、そんな風に気をかけてくれる存在がいるっていいなぁと思いまして』


しみじみと言って珈琲に口を付けると、先生はあたしを見て安心させるように微笑んだ。


「なまえ君には私がいるじゃないか」

『そう、ですね。今回、先生がいて下さらなかったらあたしはずっと新一を避けて逃げていたかもしれません』


縺れた糸が絡み合って、先生の言っていた“修復出来ない関係”をあたしが作ってしまったかもしれないと思うと、感謝の言葉しか出ない。


『本当にありがとうございました』

「私で良ければいつでも力になると言っただろう?まぁ、有希子には私ばかりズルイと拗ねられたがね」


楽しそうに笑う先生につられてあたしも笑った。
確かに有希子さんなら言いそうだ。


『普通の女のコだったらこういうことはお母さんに頼るんですかね?あたしは一番に先生が浮かんだんですけど』

「普通なんて考える必要はないさ。なまえ君はなまえ君らしくしていたらいい。それに、正直な話、なまえ君に頼ってもらえるのは私としても嬉しいからね」

『そう言っていただけるとあたしも気が楽です』


先生みたいに頼れる存在が近くにいて下さるなんてあたしは幸せ者ですね。
そう続けると先生は何も言わず優しい微笑みを浮かべてあたしを撫でてくれた。

この手の温もりに、先生の優しさにあたしはどれだけ救われているんだろうと、大好きな先生に撫でてもらう心地いい感覚を感じながらそんなことを考えていた。




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