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『園子!お待たせ!』

「遅いっ!何やってんのよ!」


待ち合わせしてたカフェに着くと園子様はもう待っていて、思いきり怒られてしまった。
遅いってこれでも急いで来たのに…酷くない?


「ほら、さっさと座ってランチ注文しちゃって!こっちは早く話が聞きたくてうずうずしてんだから!」


うずうずって…。
そんなに気になる話なのかな?
とりあえず本日のオススメパスタを注文して、園子に昨日の話を持ちかけた。


『ね?それってさ、彼女とか好きな人に言う台詞だと思わない?』


園子はさっきから頼んだランチも食べずにあたしの話を聞いている。
オムライス冷めちゃうよ?


「それよりなまえがそれにドキドキしたって話の方があたしは気になるんだけど」

『だって新一にそんなこと言われたの初めてだったし。新一があたしに触れてくることなんて手を繋いだことがあるくらいだったからさ』

「手繋いだりするの!?」

『え?んー、文化祭が終わって、新一の様子が変だった時かな?家に送ってもらってた時に繋いだけど。それが何?』

「どうだった!?」

『何が?』

「その時のなまえの心境!」

『あー…その時は新一があたしのこと避けてたから、あたし嫌われちゃったのかなぁって思っててさ。何かこの手が離れちゃったらもう終わりかもって不安だった気がする』


それを聞いた園子は何だかよく分からないけど、目をキラキラと輝かせてちょっと興奮気味だった。


「ねぇ、なまえ」

『なぁに?』

「もしかして新一くんのこと好きなの?」

『何でそうなるのよ…』


園子なら言うと思ったけど。
それとこれとは別問題だって。たぶん…


「でも、新一くんのこと意識してるっぽいじゃない!」

『そんなことない、と思う、けど…』

「そんなことあるって!」

『そうかなぁ?』


元々、友だちは男女問わずで作るあたしだから、友だちとして仲が良いってだけなら確かにこんなに気にはならないと思う。思うんだけど…


「どうしたの?そんな深刻な顔しちゃって」

『ちょっと怖いなぁって思ってさ』

「何が?」

『誰かを好きになるのが、怖いんだよ』


あたしの声色に何かを感じたのか、それまで携帯をいじっていた園子が真剣な面持ちで話の続きを促した。


『あたし、さ。好きになったらその人のことばっかになっちゃうから』

「それで?」

『自分でも重いのは分かってるんだけど、好きになっちゃったら自分のキモチ制御出来なくなっちゃうから…だから、恋愛するのが怖いの』


あたしは誰かに気を許すと頼っちゃうから。
少しでも距離を置かれると、嫌われたんじゃないかって、捨てられるんじゃないかって怖くなる。


「なまえの全部を受け止めてくれるような相手なら大丈夫なんじゃない?」

『そしたら頼っちゃうんだよ。頼り過ぎて、その人がいなくなっちゃったら自分が保てなくなっちゃうんだ』


だから、あんまり近づきたくない。
自分が好きな友だちの為なら、可能な限り何でもしようと自分を持ったまま行動出来るのに。
必要以上に好かれるのは怖いんだ。

そう自嘲気味に笑うと、園子は不安そうな顔をしたまま、考え過ぎだよって言ってくれた。


「なまえはさ、もっと自分のキモチに素直になってもいいと思うわよ?」


あんたは普段から自分を抑え過ぎてんのよって今まで何度も聞いたことのある言葉を聞いた。

でも、さ。抑えてないと不安で仕方ないんだよ。



(独りになるのが、怖くて仕方ないんだ)


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