無事に試合が終わった後。
とりあえず俺自身でも得点も入れれて、みょうじとの約束が守れて安心しきっていたら、携帯がメールの着信を知らせていた。誰だ?
別に後から確認すればいいのに、何故か気になってメールを開いたら園子からだった。
from:鈴木園子
sb:緊急速報!
新一くん、脈アリかもしれないわよ!
マジで!?
いや、だってそんな素振り昨日まで何もなかったけど…。
あれか?女同士だからついポロリと言っちゃった、みたいな感じか?
とりあえず園子に詳しいことを聞こうと返信しようとした時、またメールが入った。
ったく、誰だよ?
今それどころじゃ…
from:みょうじなまえ
sb:おめでとう!
今日の試合カッコ良かったよ!
……。
カッコ良かった?
カッコ良かった!?
マジで!?
園子への返信なんか後だ後。
今ならみょうじもまだ帰ってねぇかもしれねぇし、一緒に帰れっかも!
返信を打ったら、すぐにメール着信のバイブで携帯が震えた。
from:みょうじなまえ
sb:もちろん!
じゃあ校門で待ってるね
っし!速攻で着替えて、先輩たちへの挨拶もそこそこに俺は部室を飛び出した。
「なんだ?あいつ」
「なまえちゃんから、試合カッコ良かったってメール来てたんだよ」
「マジで!?」
「で、一緒に帰ろうってメール打って、OKもらえたからあの浮かれようってわけだ」
「でも、俺らもカッコ良かったくらい言われたことあるよな?」
「それ言っちゃオシマイだって。絶賛片思い中な工藤にそんなこと考える余裕なんかねぇだろ?」
「確かに」
「まぁ、今日の試合はあいつが頑張ったから勝てたんだし、からかうのはまた今度ってことで」
「だな。なまえちゃん効果で俺らが勝てるんならそれでいいし」
「今度なまえちゃんに試合前に工藤に何か言うように頼んでみるか?」
「それいいな!そうしようぜ!」
本人のいない所で、かなり盛り上がっているサッカー部の部室はおいといて、その頃噂の工藤新一はというと先輩たちに捕まってからかわれないように学校から走って逃げていた。
この辺までくれば大丈夫、か?
『工藤くん、いきなり走ってどうしたの?』
「あ、悪ぃ。大丈夫か?」
『あたしは大丈夫だけど』
辺りを見回すと、すでにみょうじの家の近くだった。
これじゃあ何の為に一緒に帰ろうって誘ったのか分からねぇじゃねーか。とため息を吐いた。
あ、そうだ。
「今日のレモンパイも旨かったからさ、また差し入れしてくんねぇか?」
『いいよ?工藤くんが試合の日程教えてくれたらね』
っし!これでまたみょうじが俺の試合見に来てくれる!
サッカーに興味ないっつってたのに、見に来てくれるっつーことは、少しは期待してもいいんだよな?
ついでに欲を言えば…
「それと、さ」
『なぁに?』
「俺のこと、名前で呼んでくれねぇか?」
『新一くん?』
「じゃなくて、呼び捨てで!」
『新一?』
みょうじに呼ばれた瞬間、自分の名前が特別なモノになった気がした。
蘭にも園子にも名前で呼ばれてるから、慣れてるはずなのに、なんかむず痒い。
出来るなら俺もみょうじのこと、名前で呼びてぇけど…
『いいよ?』
あっさりOKされた!?
ヤベェ、めちゃくちゃ嬉しいんだけど!
「じゃあ改めてよろしくな!なまえ!」
『うん、よろしく?』
みょうじはよくわかんねーって顔してたけど、差し出した俺の手はちゃんと取ってくれた。
何だか今日はみょうじとの距離が近くなった気がする。
ただ、名前で呼びあうようになったってだけなのにキモチがすっげぇ軽い。
「ただいまー」
「新ちゃん、おかえりなさい。どうしたの?何か良いことでもあった?」
「実は今日なまえがさ」
「なまえ!?新ちゃん、いつからなまえちゃんのこと名前で呼ぶようになったの!?」
ヤベェ。浮かれ過ぎてついポロッと言っちまった。
母さんめちゃくちゃ目がキラキラしてんだけど、これって逃げ…れねぇよな。
「ねぇ、新ちゃんたら!」
「そんなこと、どうでもいいだろ!」
「良くないわよ!なまえちゃんが我が家の娘として来てくれるのかどうか気になるじゃない!」
「む、娘って何言って」
「新ちゃんはなまえちゃんのことが好きなんでしょう?じゃあ後は二人が両思いになればそうなるじゃない!」
飛躍し過ぎだっての!
その前に、その両思いになるってのが難しいってのに!
「新一、なまえ君は自分のキモチに気付くのが遅いと言っていたから諦めずに頑張るんだぞ」
「父さんまで何言って…って何でそんなこと知ってんだよ!?」
「なまえ君と話したことがあるからに決まってるじゃないか」
この親父、ぬけぬけと抜かしやがって!
何でなまえとそんな話してんのかって聞いてんだよっ!!
「気付いた時にはどうしようもない程に相手に惚れてるくらい気付くのが遅いらしいが、それだけなまえ君を夢中にさせないとダメだということだ。ま、他の男に取られないように頑張るんだな」
「誰が他のヤローなんかになまえを渡すかよっ!」
「有希子、聞いたかい?」
「聞いた聞いた!やっぱり新ちゃんはなまえちゃんが大好きなのね!」
この夫婦、また俺を嵌めやがって…っ!
「新一、さっきの話は本当だから、しっかりやるんだぞ?いやー、なまえ君が我が家の娘になってくれる日が楽しみだ」
「ホントよね!」
二人で仲良く奥に入って行くのを見て、俺は震える程に握った拳をどうするかを真剣に考えていた。
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