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髪を乾かしていたら、新一がやって来た。
なんかこのパターン、最近恒例になって来てる気がする。


『どうしたの?』

「…」


自分からあたしの部屋に来たクセに、新一は何を話すか考えてなかったみたいだ。
何から言い出すか悩んでる新一の顔を見ながら、髪を乾かしてブラッシングをしていたら、やっと新一が口を開いた。


「さっきの服、すげー似合ってた」

『さっきのってご飯に行った時の服?』

「おう」

『あたしのこと、全然見ようとしなかったのに?』

「あれはっ!」

『あれは?』

「その…可愛い過ぎて直視出来なくて、だな…」


視線を逸らして、顔を染めた新一は吃りながらそんなことを言った。
おかげで、あたしまで伝染して顔が熱くなった。

こいつ、不意打ちで何言い出すの!?


『あ、ありがと』


それを言うのが精一杯だった。
ブラッシングの手が完全に止まってしまっている。


「あの、さ」

『な、何?』


次は何を言われるんだろうと、心臓がバクバクと煩い。
落ち着け!あたし!


「今日の部活のことなんだけど」

『うん?』

「俺が周り見えなくなってたのに気付いてくれただろ?」

『え?あ、うん。なんか違和感感じてさ。無理矢理強引に行ってるなぁって思って』

「気付いてもらえたのがすっげー嬉しかった」

『え?』


嬉しかった?
サッカー部の人たちが散々文句言ってたよね?


「俺のこと、ちゃんと見てくれてんだなぁって」

『あ、あれはそういう意味じゃ!』


やっと落ち着いてきたはずの顔の熱がまた集まり出した。
いや、確かにいつも練習見てた時も新一のこと見てたけど!でも!


「後半も応援してくれてただろ?」

『う、うん。後半は新一のプレイがいつもみたいに楽しそうにやってた、から』

「結構周りにギャラリーいたのに、なまえの声だけは、しっかり聞こえてたんだよな」

『…』

「俺のこと応援してくれてんだと思うと、嬉しくてテンション上がって大変だったんだぜ?」

『え、っと…』

「ありがとな」


自然に、あまりにも自然に頭を撫でられて、しかもあたしを見てる新一の顔は優しく柔らかく微笑んでいて。

あたしの心臓は爆発してしまうんじゃないかってくらいにバックバックと煩く脈打っている。

違う。これは新一が急に変なことを言って、あんなことをしたからだ。
そうに違いない。

あたしはこのドキドキを鎮める為に、一生懸命自分にそう言い聞かせていた。

でも、優しい声色で言われた言葉が耳から離れない。
新一ってあんなこと普段から言ってたっけ?

軽くパニックになってるあたしを置き去りにして、


「それじゃあ、おやすみ」


って新一はあたしの部屋を出て行ったけれど、それに言葉を返す余裕もないくらい、思考はさっきの新一をリプレイしていて、金縛りにあったみたいにあたしの体は動かなかった。


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