和やかな(?)ティタイムも終わって、早速自分の部屋へと入ったら、見たことのないワンピースが飾られていた。
…有希子さん、また勝手に買いに行ったな…。
化粧台に出されていた小箱には、ワンピースに似合う可愛いイヤリングとネックレスが入っていた。
その隣にはバックまで準備されている。
さすが有希子さん、準備に抜かりがないですね。
もうここまでくると感心する他ない。
『有希子さーん、ちょっといいですか?』
「なぁに?」
ちょうど後片付けを終わらせた有希子さんが、こちらを向いてくれた。
『さっきワンピースとアクセサリーは見て来たんですけど、髪型はどうしたらいいんでしょうか?』
「んー。そうねぇ、今回は堅苦しい所に行くわけでもないし、なまえちゃんの好きにしてもらっていいわよ?」
『そうですか?了解しました』
「なまえちゃんがオシャレするのあたしも楽しみにしてるからっ!」
有希子さんのテンションが今日はヤケに高い気がするんだけど、気のせいだろうか?
自分の部屋に戻ったあたしは、時間があるのは重々承知で、着替えてメイクをして、髪型をいじって万全の準備をすると先生の仕事部屋へと向かった。
『先生、お仕事中すみません。ちょっと相談に乗ってもらいたいことがあるんですけど、いいですか?』
「ん?何かな?」
文化祭からこれまでの経緯を先生に大まかに話すと、先生はそれはそれは楽しそうに笑ってくれた。
どうやら分かっていないのはあたしだけらしい。
「大丈夫。なまえ君も時期に分かるようになるさ」
『…それならいいんですけど』
分からないから苦労してるんです、とは何だか言えない雰囲気だ。
先生に相談したら解決すると思っていたのに。
「なまえ君、それは人から聞くんじゃなく、自分で気づかないといけないことなんだよ」
『はい…』
「そんなに落ち込むことはないよ。なまえ君ならすぐに気が付くさ」
『そうでしょうか?』
「そうとも。さぁ、そろそろ出かける時間だ。化粧直しをしてきた方がいいんじゃないのかい?」
『そうですね。お仕事の時間を割いていただいてありがとうございました』
先生の仕事部屋を後にして、自分の部屋でメイクと髪型を直し終わると、ちょうど新一が呼びに来てくれた。
「なまえー!そろそろ出かけるってよ」
『うん。支度終わったから、すぐに降りるね』
「なぁ、さっき父さんと何話してたんだ?」
『ん?ちょっと相談聞いてもらってたの』
「そっか…」
何か元気のない新一の顔を覗き込もうとしたけど、その前に顔を逸らされてしまった。
なんか悔しそうな顔をしてた気がするのは、気のせい、かな?
「ほら、行くぜ?」
『うん!』
いつもの爽やか笑顔で手を出してきた新一に自分の手を重ねた。
新一はいつもしっかりとあたしの手を握ってくれる。
これにちょっとほんわか安心しちゃってるのはあたしだけの秘密だ。
「新ちゃーん!なまえちゃーん!準備出来たー?」
『はーい』
「それじゃあ行きましょうか」
と先生は有希子さんをエスコートして、新一はぎこちなくあたしをエスコートしてくれた。
ぎこちないながらも一生懸命エスコートしてくれる新一がなんだか可愛いくて仕方なかった。
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