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一度あたしの家に寄って、制服から着替えて先生たちへのお菓子を持って工藤邸に向かった。

自分で持つからいいって言ってるのに、新一はお菓子の入った袋を持ってくれた。
こういうところは先生に似てるかもしれない。


『でも、お昼も部活でも食べちゃったから飽きちゃったんじゃない?』

「んなことねーって」

『ホントに?それなら、一番上手く焼けたヤツだから楽しみにしててね』

「おう!」


そんなことを話していると工藤邸について、新一がただいまーって中に入った途端に有希子さんが飛び出して来た!


「なまえちゃーん!いらっしゃい!!」

『ゆ、有希子さん、お邪魔、します』


いつもの抱きつきをした後、有希子さんはあたしの両手を取ってブンブンと振った。


「でもホントに嬉しいわ!なまえちゃんからうちに泊まりたいなんて言ってくれるだなんて!」

『え?有希子さんがあたしに会いたがってるからって、今回のお泊まりお誘いして下さったんじゃないんですか?』

「あっ、それは、だな!」


何故か慌て出した新一を有希子さんは一瞥するとさっきまでの態度を一変した。


「そうなのよっ!なまえちゃん、文化祭で忙しかったじゃない?だからゆっくり話がしたくって!」

『…』


怪しい。
絶対何か隠してる気がする。


「今夜はディナーの予約をしたのよ!久しぶりに4人でご飯食べに行きましょうね!」

『はい…』


最近クラス中が変だとは思っていたけど、どうやらその余波はいろんなところに飛び火してるらしい。
サッカー部然り、有希子さん然り。


「これ、なまえからの差し入れだってさ!」

「ホントに?ありがとう!」


話を逸らすように新一が話に割り込んで来た。
やっぱりオカシイ。
でもここでは突っ込まないことにした。
後で本人に聞けば良いことだ。


『今回は新一からのリクエストを作って来たので、以前持って来たヤツと一緒なんですけどね』

「新ちゃんが突然なまえちゃんのお菓子アルバムを見せてくれって言い出したのはリクエストを決める為だったのね!」

「母さん!余計なこと言うなって!」

『あの…どうでもいいですけど、そろそろ中に入りませんか?』


ずっと玄関先で騒いでたので、ご近所さんに丸き聞こえだと思うんですけど。


「そうね。さぁ、上がって上がって!優作!珈琲入れて頂戴!なまえちゃんがお菓子作って持って来てくれたのよ!」

「ほう。それならちょっと私も休憩にするとするかな。ちょうど煮詰まっていたんだ」


工藤夫妻に先導されて、リビングへと向かう。
新一は何だかさっきからそわそわとしていて様子がオカシイんだけど、どうしたんだろう?


「新ちゃんの分は大きく切らなきゃね!」

『あ、それなんですけど、お昼も部活でも新一これ食べちゃったんで、もう飽きてると思うんですよ』

「大丈夫よっ!新ちゃんがなまえちゃんのお菓子残したりするわけないからっ!」


ルンルン気分な有希子さんに何が大丈夫なのか聞いてみたいんだけど、聞くのが何か躊躇われる。


制服から着替えてきた新一と4人でティータイムとなったんだけど、有希子さんはいつも以上ににっこにこしてるし、先生も何か含んだような笑みをしている。

ホントにみんな一体どうしたっていうんだろう?


「へぇー。今日の部活はなまえちゃんも見学に行ったの?」

『はい。先輩方のいいオモチャにされました…』


有希子さんの軽快な笑い声が心地いい。
何だか此処があたしの家のような錯覚を起こしてしまいそうだ。


「今日のディナーね、ちょっと時間を遅らせてあるから、用意はゆっくりでいいわよ」

『あたしは何を着て行けばいいんですか?』

「アクセサリーと一緒に部屋に出してあるから確認しといてね!」

『はい』


有希子さんはいつでも準備万端に整えていてくれるのは嬉しいんだけど、そのキラキラしてるにっこにこな笑顔がちょっと怖いです。
なんて言えないんだけど。


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