部活も終わって、みんなであたしが差し入れをしたお菓子を食べている頃、あたしは肩身の狭い思いをしていた。
「それにしてもなまえちゃんの一言は鶴の一声だったよな」
「ホント、ホント!俺らが何言っても聞かなかった工藤のプレイを一発で変えちまうんだもんな」
「しかもなまえちゃんが応援してる時のシュートはきっちり決めて外さねぇし?」
『あの…そのくらいにしてもらえませんか?恥ずかしいんですけど…』
さっきから話題があたしから離れないのだ。
ホントに恥ずかしくて消えてしまいたい…。
「そんなに気にすんなって!俺らなまえちゃんに感謝してんだから!」
「そうそう!こんな美味い差し入れまで持って来てくれるし、何てったって工藤が」
「あー!もうっ!今日はホントにすみませんでしたっ!!」
工藤くんもガマンの限界だったらしく叫び声を上げた。
残念ながら、あたしは自分が恥ずかし過ぎて顔が上げれないので表情は見えないけれど。
先輩方がとても楽しそうなのだけは声と雰囲気で分かるんだけど。
「でもな、工藤、いっくらなまえちゃんが近くで試合見てるからって前半のあれは」
「あーーっ!ストップ!先輩、マジでストップ!!」
『え?あたし?』
前半の新一の不調はあたしのせいなの?
それなら来ない方が良かったのかな?
何か重ね重ね申し訳ない…。
『あたし、新一に迷惑かけてたの?ごめん…』
「違っ!ホントに違うから!あれは俺がっ!」
「そうそう。後半の工藤の絶好調はなまえちゃんのおかげだけど、前半のは工藤が悪いだけだから、なまえちゃんが気にすることじゃないって!」
そんなこと言われても、あんな風に言われて気にするなって言うのが無理な話で。
「なまえちゃん、そんな不安そうな顔すんなよ!これマジでうめーしっ!」
「なまえちゃんの差し入れがある日は俺らの気合いの入り方が違うからな。試合ん時なんて負ける気しねーし!」
『えっと…あたし何も出来ないですけど、差し入れくらいなら出来るので、喜んでいただけるならまた持って来ます』
「マジで!?」
「楽しみにしてっから!」
結局、新一の試合での不調があたしのせいかどうかは分かんなかったけど、差し入れを喜んで貰えたのだけは分かったので、何とかテンションを戻そうと試みてみた。
上手くいったかどうかは分からないけど、先輩方に気を遣わせてしまうのは申し訳ない。
その後は、何だか何かの打ち上げのようにサッカー部の部室は盛り上がっていた。
「今日は先輩たちのせいで気ぃ遣わせちまって悪かったな」
『ううん。逆だよ。なんかあたしが先輩方に気を遣わせちゃって…』
二人きりの帰り道、話題はやっぱりさっきの部室での話で。
この話題、実はもうイヤだったりするんだけど、仕方ない。
『なんか、ごめんね?』
「は?何が?」
『あたし、新一にも迷惑かけてたみたいだし…』
「だから!それは違ぇっつっただろ!」
『でも…』
「気にすんなって!メンタル調整も選手に必要なもんだし!」
『うん…。でも迷惑ならもう見に行かないから』
「迷惑じゃねぇって!寧ろ来て欲しいし!!」
『え?』
新一の言葉にビックリしてうつ向いてた顔を上げるとしまった!って顔をした新一はあたしから思いきり顔を逸らしてしまった。
「あ、いや、その…」
『その?』
「今日みてぇに応援、してくれると嬉しい、なって…」
段々と声を小さくした新一の顔は真っ赤で何だか笑ってしまった。
最近新一の様子がオカシイと思ってたけど、ただの気のせいだったのかな?
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