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園子が帰ってからグラウンドを見ると、既にサッカー部は後片付けをやっていた。
だから園子が帰ったのか、と納得はしたけど、サッカーしてる新一が見れなかったのが少し残念だったりする。


『はぁ』


終わってしまったものは仕方ないので、ため息一つで諦めて、あたしも帰り支度を始めた。
もう少ししたら新一が迎えに来てくれるはずだから、それまで小説でも読んで気分転換していよう。


「なまえ!帰ろうぜ!」

『新一、部活お疲れ様』


教室にやって来た新一はやっぱり急いでやって来たらしく、息を切らしていた。
いつも思うけど、そんなに急いで来なくても大丈夫なのに。
小説をカバンに仕舞って、新一の元へと向かった。

あれ?この前まで気づかなかったけど、新一、背伸びた?
一学期は確かにあたしの方が高かったはずなのに、視線が変わらない。


「どうした?」

『ううん。何でもない。帰ろっか?』


成長期なんだもん。
背が伸びてて当たり前か。
男の子だから、これからどんどん伸びてくんだろうなぁ、って思うと少し羨ましい。
あたしはあと数センチ伸びたら止まってしまうんだから。


「なまえちゃんじゃんか!」

『あ、先輩。部活お疲れ様でした』


グラウンドを抜ける時、ちょうどサッカー部の先輩方とすれ違って声をかけられたので、ペコリと挨拶をした。
けど、なんか、先輩方、楽し、そう?


「なまえちゃん、工藤と帰んの?」

『え?はい。今日は一緒に帰ろうって誘われたので』

「ふーん?そうなんだ?」


訂正。絶対楽しそうだ。
新一は別の先輩に捕まってるし。
あたし、まだ帰れないのかな?


「また今度部活見においでよ」

『邪魔になりませんか?』

「全然!なまえちゃんなら大歓迎だって!」

『なら、またお邪魔させていただきますね』


これで会話も終了しただろうって思っていたら、先輩が内緒話でもするように声を潜めた。


「後さ、お願いがあるんだけど」

『何ですか?』

「試合の前にメールでもいいから工藤に頑張れ!とかって言ってやってくんねぇかな?」

『?いいですけど』

「マジで!?良かった良かった!あ、これ工藤には内緒な!」


いいですけど、それがどうかしたんですか?とは最後まで言えなかった。
どうやら先輩の用件はそれで終わったらしく、他の先輩方と一緒に帰られてしまった。
一体、何だったんだろう?


「悪ぃな。なまえ、先輩になんか変なこと言われなかったか?」

『また部活見においでって誘われただけだよ?』

「そっか!」


何やら安心したらしい新一に、新一は一体何を言われたんだろうと気になったけど、部活のことだとあたしには分からないので聞かないことにした。


「あの、さ」

『うん?』

「今度の週末、うちに泊まりに来ねぇ?」

『え?』


帰り道、何かを言いたそうにしていた新一の口から出たのは意外なお誘いだった。
別に週末何も予定ないから構わないんだけど…何で?


「母さんが久しぶりになまえと一緒に過ごしたいって言っててさ」

『あ、そうなんだ?』


そういえば、もうそろそろ冬物の服が販売される頃だ。
またあの買い物に連れ回されるのかと思うとちょっとだけ苦笑いが漏れた。


『いいよ、じゃあ金曜日も一緒に帰ろうか?どうせ行き先一緒なんだし』

「っし!」

『何か言った?』

「何でもねぇって!」


何だか嬉しそうに笑う新一とそんな話をしていたら、マンションについてしまった。
やっぱり一人で帰るより、誰かと話ながらの方が距離が短く感じるな。


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