「それで、劇のことをなまえが怒ってなかったのはいいけど、今度は自分が全く意識されてないってことに気付いてヘコンでるわけ?」
「だってそうだろ?」
「意識してないんじゃなくて、なまえは“あれはお芝居だったから”って思ってるのよ」
「対して変わらねぇじゃねーか」
蘭に愚痴っても仕方ねぇことだって分かってっけど、俺からのキスを芝居だからで片付けられたことにショックがデカイ。
思わず頭を抱えた。
俺、あれ以上にアピールしねぇとなまえにキモチ伝わらねぇのか?
そんなのどうしたらいいんだよ!
「ねぇ、新一。そんなに落ち込むこともないと思うけど?」
「なんで、んなこと言えんだよ?」
「だって新一、なまえの仲が良い人リストに名前入ってるもの」
「何だ?ソレ」
「前になまえが言ってたのよ。学校で仲が良いって言えるのは私と園子と河野さん、それに新一くらいだって」
「マジで!?」
河野と並んで俺の名前が入ってんのか!?
それってスゴくね?
寧ろ男で名前が入ってんのが俺だけって事実がかなり嬉しいんだけど!
「だからそんなに落ち込むことないわよ」
「ん?ちょっと待て。それ、“学校で”って言ってたんだよな?」
「え?そうだけど」
「学校外じゃ俺の父さんの名前が一番に上がりそうな気がする」
「あー…それは、まぁ…仕方ないんじゃない?」
浮上しかけたテンションが一気にガタ落ちした。
情けねぇけど、父さんと張り合って勝てる自信がねぇ…。
「でも、園子から聞いたんだけど、なまえ、時々サッカー部の練習見てるんだって!」
「は?俺、あいつ見たことねぇぜ?」
「グラウンドじゃなくて、教室から。なまえって人混み苦手だから、教室で見てるんじゃないかな?」
なまえがサッカー部の練習を見てる、だって?
これから練習手が抜けねーじゃねぇか!
待てよ。それなら…
「一緒に帰れる、か?」
「うん?」
「練習見てるってことは一緒に帰れるかもしれねぇよな?」
「あ!そうだよ!新一、早速なまえ誘ってみたら?」
そこでちょうどチャイムが鳴って、蘭への恋愛相談が終わった。ところで、何であいつ俺がなまえ好きだって知ってたんだ?
『え?今日一緒に帰らないかって?』
「お、おう」
早速授業合間の休憩時間になまえんとこに行って、一緒に帰らないかと誘ってみた。
なんか俺、今スゲー緊張してんだけど。
『新一、今日部活は?』
「ある、けど」
んー、と考え出したなまえにやっぱりダメだったかと諦めはじめていたら、予想外の返事が来た。
『じゃあ、あたし教室で待ってていい?』
「え?」
『だから、前みたいに教室で待ってていい?って聞いたの』
「おう!部活終わったらすぐに迎えに来っから!」
何故か分からないけど、新一はそのまま上機嫌で自分の席へと帰り、あたしはというとさっきからクラスの人たちに生暖かい目で見られている。
新一や園子だけじゃなく、クラス中がどうにかなっちゃったらしい。
一体全体、みんなどうしたっていうんだろう?
みんなの視線をスルーする為にも、あたしは小説の世界へと逃げ込むことにした。
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