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文化祭当日。
母さんが注文付けた衣装なだけあって、みょうじはすげーキレイだった。

俺と出会うシーンから、俺だけを思って俺だけを映す瞳が単純に嬉しかった。
ロミオもこんなキモチをジュリエットに抱いてたのかもしれねーな。

……ちょっと待て。それって俺がみょうじのこと…。

思い当たる節なんて…山ほどあるな。
父さんにみょうじのこと負けたくねーと思ったのって要は父さんに嫉妬してたんじゃねぇのか?
俺の知らないみょうじを知ってる父さんに嫉妬して、俺の知らない表情を父さんに見せるみょうじに悔しく思ったのだって要はそういうことだろ?
みょうじのこととなると余裕が無くなって、みょうじの一挙一動に一喜一憂してたのだって!

うーわっ!ヤベェ、今更気付いたとか、俺バカか?
顔に熱が集まって来て、引きそうにねぇんだけど!これってどうしたらいいんだ!?
しばらく俺の出番はねぇけど、ラストに俺がみょうじを抱き締めるシーンが残ってんのに!!


「ねぇ、皆集合!」
「何?鈴木さん」
「新一くんがたった今自分のキモチに気付いたみたいだからさ、どうせなら皆で後押ししてやらない?」
「は?工藤のヤツ、今までみょうじさんのこと好きだって自覚してなかったのかよ!?」
「残念ながらなかったのよ」
「じゃあ何で今気付いたってわか…あ、説明いいや。あいつの顔見たら分かったから」
「あの顔見る限り、どうせ今だっていっぱいいっぱいでしょ?ラスト出て行かない可能性だってあるじゃない?」
「あー確かに。練習でも結局2回しか出て行けなかったもんな」
「だからさ、あの小瓶にホントに毒が入ってるって言ってやるのよ!」
「そんなことしたら、工藤、出番より先に出ちまわねぇ?」
「そうだよ!それに“ジュリエット!”じゃなくて“みょうじ飲むな!”とか叫んじゃうって!」
「だから!皆で羽交い締めにして口押さえて黙らせんのよ!」
「…鈴木さん、その布どっから出したの?」
「細かいことは気にしない気にしない!じゃあ皆いいわね?」
「「「OK!」」」


「新一くん、あのさ」
「んだよ。俺は今それどころじゃ」
「あの小瓶、ホントに毒が入ってるの」
「な…むぐぅ!?」


こいつら、何しやがる!離せっての!!


「鈴木家に伝わる毒で、即効性なんだって」
「んー!んんーっ!」


何だってそんなもん文化祭に持って来たりしたんだよ!?


「なまえが舞台の上で死にたいって言うから持って来ちゃたんだけど…新一くんならなまえ止めてくれるわよね?」
「…」
「なまえ、新一くんが出て来れないと思ってるからホントに飲んじゃうと思うんだ」
「…」
「だから、ちゃんと“ジュリエット!”って叫んで舞台続けさせてなまえの自殺止めて!」


無理矢理猿ぐつわかまされて、次いでに体も羽交い締めにされてる状態では頷くのが精一杯だったけど、真剣に園子を見て頷いた。

俺がキモチに気付いた途端に死ぬだって?
んなこと誰がさせっかよ!!


『私も直ぐにそちらへ参ります』


みょうじのその台詞が聞こえた途端に周りの奴らを振りほどいて、舞台へと走った。
みょうじ、早まんなっ!


「ジュリエーットっ!!!」


とりあえず毒が入ってるっていう小瓶を叩き落として、みょうじを抱き締めた。
大丈夫、みょうじはまだ生きてる


「良かった…。ジュリエットが無事で、本当に良かった…!」

『ロ、ミオ様』


弱々しい声も、恐る恐る俺の背中に回された腕も、俺を見つめる揺れた瞳も、全部が愛しくて、気がついたら舞台やってるってことも忘れてキスしてた。


んだけど。


「園子、テメー何が毒だって?」
「バカねぇ。そんなもん、そう簡単に手に入るわけないじゃない」


笑い過ぎて涙が滲んでる園子に、本気でぶん殴ってやろうかと思った。
女を殴りてーとか思ったの初めてなんだけどな?


「んで?テメーらは揃いも揃って園子の陰謀に手を貸してたっつーわけか?」
「まぁ、そのお陰でみょうじさんと公衆の面前でキス出来たんだから良かったじゃねーか」
「いいわけねぇだろーがっ!!」
「でも、工藤くんあのままじゃラストのシーン出られなかったでしょ?」
「うっ…そ、それは…」
「皆で作ってきた舞台、お前の勝手な都合で台無しにされても困るしな?」
「…」
「ま、大好評で良かったってことでいいじゃない!」
「絶対良くねーっ!!!」


カーテンコールも終わって、人も疎らになった舞台裏で園子に手を貸していた連中が笑い転げてる中、俺の絶叫だけが虚しく響いた。


俺が父さんと母さん、サッカー部の先輩たちに遊ばれるのはこの十数分後だったりする。



(チクショーっ!テメーら覚えてやがれっ!!)


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