「そうか。なまえ君と新一がロミオとジュリエットをするのか」
「そうなの!衣装も作ってもらえることになったし、これは絶対に見に行かなきゃね!」
「しかしあの終わり方は…」
『あ、最後はハッピーエンドに変えるらしいですよ?』
「は?そんなの聞いてねぇぞ!」
『だって聞かれなかったもん』
ただ今、ご飯も終わって皆でコーヒータイム。
話はもっぱら文化祭の話題です。
『粗筋がロミオとジュリエットってだけで、結構話変えちゃうんだって』
「それ、ロミオとジュリエット選択した意味あんのか?」
それはあたしも思うけど、文化祭なんてこんなもんじゃないの?
あたしの高校の演劇部なんかロミオとジュリエットどころか他の童話までごっちゃになったコメディパロやってたし。
『あ、電話だ。もしもし?園子?』
「あんた、歌やってるってホント!?」
『え?』
「放課後になまえが河原で歌ってるのを聞いたって子がいるのよ!」
『え?確かに歌ってたけど…それが何?』
「よっし!じゃあ文化祭でも歌ってね!」
『え?ちょっと!文化祭のは劇であってミュージカルじゃないんでしょう!?』
「そうだけど、ロミオへの熱くて切ない想いを歌うシーン作るから。それじゃ、よろしく!」
一方的に話すだけ話して園子は電話を切ってしまった。
もう、ホントに勝手なんだから!
「園子のヤツ、今度はなんだって?」
『劇の途中であたしがロミオへの熱くて切ない想いを歌えってさ』
「なまえちゃん歌うの!?」
「それは是非とも映像に残しておきたいな。うちにビデオカメラはあったかな?」
「この際だから、デジカメと一緒に新しいの買っちゃえば?」
「それもそうか」
楽しそうに声を揃えて笑う先生たちに、あたしの頬がひきつるのを感じた。
皆の前で歌えだと?
園子のヤツ、どんだけ無茶な要求してくるんだ!
『工藤くんも歌うってことは…ないよね。ごめん』
「オイ。何だよ、その哀れみの目は!」
だって、音楽の授業のキミの歌声を思い出したんだもん。
外そうと思ったってあそこまでは外れないっていうあの悲惨な
「思い出すな!」
『あれ?バレちゃった?』
「オメーの顔見てたら何考えてるかくれー分かるっての」
ポコンと軽く頭を叩かれた。
そして、夜も更けて来たので、先生に家まで送ってもらうことになった。
文化祭に向けて、これから本格的に忙しくなるらしい。
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