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「おい、みょうじ。これはどーいうことだよ?」

『あたしに聞かないで』


連れて来られたのは望月さんを連想させるような高層マンションの一室。
違うことと言えば、広い部屋のあちこちにマネキンが立ってるってことくらい。


「有希子さん、いらっしゃい!」

「藍那ちゃん、急にゴメンナサイね?でも急ぎなの!」

「有希子さんの頼みなら最優先で作りますよ!」

「ホントに!?ありがとう!」


感動の対面って感じで抱き合ってる二人には悪いけど、話が全く見えてこない。
イヤ、話の流れ上どうなるかは分かってるんだけど、理解したくない。


「なまえちゃん、こちらデザイナーの藍那ちゃん」

「よろしく。新一くんには前にも会ったことあるよね?」

「あ、ども」

「貴女がなまえちゃんかぁ!あたし、ずっと会いたかったの!有希子さんにも朔夜くんにもずっと話は聞いてるよ!」


…やっぱり有希子ネットワークで広まってんのか、あたし。

寧ろ何故ここで望月さんの名前が出るのか教えて欲しい。
もしや望月さん、貴方まであたしをネットワークに流してるんですか!?


「二人はとりあえず採寸からだね。みんな!やっちゃって!」


どこから出てきたんだ?っていうくらい女の人たちが出てきて、あたしと工藤くんは別々の部屋に収納された。

あっという間に服を脱がされ、体のあちこちをメジャーで計られる。
…あたし、まるでオモチャだな。

服を着直して、部屋を出るとぐったりとした様子の工藤くんとばったり会った。


『工藤くん、大丈夫?』

「俺、これだけは何度やってもダメなんだよ…」


そんなに何度もオーダーメードしてるんですか。
さすがお坊っちゃま。


「んー、有希子さん、こんな感じでどうかな?」

『素敵!新ちゃん、なまえちゃん、ちょっとこっちに来て頂戴!』


何やら興奮気味の有希子さんの元へ行くと何枚かのデッサンが広がっていた。
どれのことを言ってるんだか、全くもって分からない。


「新ちゃんがこれで、なまえちゃんがこっち!どう?素敵でしょ?」

「…」


どうやら机に広がってたのは試作品だったみたいで、有希子さんが2枚のデッサンを見せてくれた。

ここまで来ればさすがに工藤くんも何の為にココへ連れて来られたのか分かったらしく、あたしをじとーっとした瞳で睨んで来た。


「みょうじ、後で話があるから逃げんなよ?」

『…』


逃げたい。
あたしも巻き込まれた被害者であって


「みょうじ?」

『はい…』


どうやら逃がすつもりは端からなかったみたいだ。

出来上がったデッサンにまだ注文を付けているらしい有希子さんと、それを聞きながら真剣に鉛筆を走らせている藍那さんをただ後ろから見ていることしか出来なかった。



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