「あら、そうなの?新ちゃんとなまえちゃんでロミオとジュリエットをするの?」
一通り服を確認し終わった頃、有希子さんにお茶にしましょうと誘われたので、場所をリビングへと移した。
いつもより興奮具合は抑えられているが、文化祭の話に興味深々といった感じだ。
「それで今、現代版にするかどうかで悩んでるんです」
「設定はそのままで行きましょう!」
『有希子さん?』
「なまえちゃんの衣装、是非あたしに用意させて頂戴!」
言うと思った。
言うと思ってたけど!
たかが文化祭の衣装なんだから、現代版じゃなくても手作りとか、よくてレンタ
「お願いしていいんですか!?」
「もちろんよ!」
「それなら、新一くんの衣装もお願い出来ますか?二人の衣装だけ映えさせたいんですが、手作りやレンタルじゃどうしても限界があるからって現代版って案が出たんです」
「任せて頂戴!」
あのー、盛り上がってるとこ悪いんですが、お二人さん?
たかが文化祭の衣装で保護者の手を借りるっていうのはどうかと思うんですけど?
「何言ってんのよ、なまえ!文化祭だからこそ保護者の方と力を合わせて劇を作っていくんじゃない!」
燃えてる園子様は置いといて、隣でうんうんってにっこにこ笑ってる有希子さんが怖いんですが…。
「そうと決まれば衣装急がなくっちゃね!なまえちゃん、採寸しに行きましょう!」
「おば様、よろしくお願いします!あたしは脚本係のみんなに連絡しなくっちゃ!」
『え?えっ!?』
どうやらあたしが狼狽えてる間に話はまとまったらしく、園子はそのまま退散してしまった。
これ、どーすんのよ?
「もうっ!新ちゃんたら何にも教えてくれないんだからっ!」
『あ、有希子さん、ロミオとジュリエットに話が決まったのは今日で』
「でも良かったぁ。なまえちゃんたちの衣装あたしが用意出来ることになって!」
『有希子さん?』
「あ、藍那ちゃん?ちょっと衣装を頼みたいんだけど、採寸だけでもこれから行っていいかしら?」
あたしの言葉なんて聞こえていないかのように有希子さんはドコゾに電話をかけ始めた。
なーんか、すっごくイヤな予感がするんですけど。
「ただいまー。おっ、みょうじ、来てたのか?」
『工藤くん、あのね』
「新ちゃん、丁度良かったわ!これから出かけるから、早く着替えてらっしゃい」
「え?」
「あ、なまえちゃんも制服のままだったわね。それならこのままでいいかしら?行きましょう!」
『有希子さん、ちょっと待って!』
あたしの制止で止まるような有希子さんなわけがなく、訳も分からない工藤くんを引き連れてこのまま採寸とやらに出かけることとなった。
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