しまった!
何故車にあたしの荷物を入れた時点で、この可能性を視野に入れなかったんだ、あたしのバカっ!!
只今、工藤邸に車が横付けされ、本気で頭を抱えています。
あの後、心配していた記者の人たちもいない裏口から入って、劇も楽しんで、先生のテンションも落ち着いて、いつものように楽しくお食事をした帰り。
まさかまさかの(いや、ある意味一番妥当な)工藤邸へのご帰宅にちょっと真剣に頭が痛いです。
いや、だって…
「キャー!!なまえちゃん、かーわーいーいーっ!!!」
『有、希子、さん、苦し、』
こうなることが分かっていたから。
「もうっ、さっすが朔夜くんねっ!なまえちゃんお姫様じゃないっ!ね、新ちゃん?」
「……」
解放されたかと思ったら、両手を取られブンブンと上下に振られるがままにされていたんだけど、呆けてるまんまの工藤くんを見つけて、なんで有希子さんも工藤くんも正装したまま何だろう?
って思っていたら
「さぁ、カメラさんも来てるから4人で記念撮影しましょうねっ!!」
ってハートをありったけに飛ばした有希子さんに答えられた。
は?記念撮影?
「んだよ、ソレ!聞いてねぇぞ!!」
「さぁ、新一。カメラさんも待たせていることだし、早く行こうか」
心の中で、そうだ!頑張れ工藤くん!!
って応援していたら、あっさりと先生に連れられて工藤くんはフェードアウトした。
メゲルな、名探偵。
「ほら、なまえちゃんも行きましょう?」
『え?家族写真なんじゃないんですか?』
「そうよ!だからなまえちゃんも入るんじゃないっ!!」
ごめん、工藤くん。
あたしも有希子さんに勝てなかった。
手を掴まれ、ぐいぐいと連れて行かれた先には、どこから呼んだよ?このカメラさん!?
っていうくらい立派なカメラが待っていた。
「はい、それでは奥様とお嬢様は前の椅子におかけ下さい」
え?お嬢様ってあたしのことですか?
とか思ってたんだけど、ここでも有希子さんの実力公使により、有希子さんの隣に座らされた。
「それでは旦那様は奥様の後ろへ。お坊っちゃまはお嬢様の後ろへとお立ち下さい」
後ろでも工藤くんが抵抗してる声が聞こえたけど、きっと先生から有無を言わさぬ攻撃を食らっているのだろう。
「「新一」」
先生と有希子さんによる威力抜群の静かなW呼びによって大人しくなった様子の工藤くん。
…ご愁傷様。
「それでは撮りますよ。お嬢様、お坊っちゃま、にこやかにお願い致します」
あたしの笑顔は張り付いたようにひくついているんだろうが、一体後ろでは工藤くんがどんな表情になっているのか、恐ろしくて後ろが向けない。
「ほら、なまえちゃん!笑って笑って!!」
隣のにっこにこな有希子さんの顔を見て、あぁ、きっとこの夫婦は今とてつもなくいい笑顔をしてるに違いないと思ったら肩の力が、というより全身から力が抜けた。
「それでは皆様撮りますよ」
カメラさんの声に前を向き直すとシャッターが下りる軽快な音が響いた。
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