『ところで望月さん。この写真撮影は何なんですか?』
「ん?もちろん、なまえ姫の記念撮影だよ?」
部屋を出たあたしを待っていたのは、カメラを準備していた望月さんで、お姫様気分だったあたしは誘われるままに撮影スペースへと行って、素直にニコニコと写真を撮られていた。
自分で写真嫌いを忘れてしまうなんて、お姫様の魔法恐るべしっ!!
で、やっと我に返ったあたしの間抜けな質問で冒頭に戻る。
『それなら、記念に望月さんとも一枚撮りたいです』
「え?いいのかい?俺が写るとお姫様の魔法が半減しちゃうよ?」
『そんなわけないじゃないですか!ダメ、ですか?』
そういえば望月さんはプロのヘアメイクさんっていうすごい人だったことに、誘った後で気が付いた。
なんて愚の骨頂を侵してるんだ!
今日のあたしはお姫様っていうより、頭に花でも咲いてるのかもしれない、としょぼんと項垂れた。
「いいよ。本当はお姫様の写真一枚貰うだけにしようと思ってたんだけど、俺もキレイになったなまえちゃんと一枚記念に欲しかったし」
『いいんですか!?』
「タイマーにするからそのままでいてね」
大人しくそのまま動かずにいたら、後ろに来た望月さんに手を取られて、自然と笑みが浮かんだところでシャッターが下りた。
「さぁ、記念撮影もこれでオシマイ。出来上がったら有希ちゃんに渡しておくから受け取ってね」
『はい。何から何までありがとうございました!』
「そんなに頭振っちゃうとせっかくのヘアが乱れちゃうよ?」
『すみません…』
つい、いつもの癖で、ペッコンと頭を下げたら、望月さんに笑いながら窘められた。
ホントに恥ずかしい…。
「たぶん、工藤先生、もう下で待ってるんじゃないかな?」
『え?先生お迎えに来て下さってるんですか?』
「その格好のままどこかに行くつもりだったの?」
『あ…』
今日のあたしは浮かれすぎてドコまでもダメダメらしい。
ホント、穴があったら入りたい…。
「それじゃあ、俺もなまえちゃんの荷物持って降りるから、一緒に降りようか」
『はい…』
せめてこれ以上墓穴を掘らないように精一杯余所行きのオシトヤかな声を出すことくらいしか今のあたしには出来ることがなかった。
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