プロのメイクの腕前にビックリしていても、準備は着々と進んでいって、今は髪を弄ってもらっている。
なんか前回が楽しく気楽にお喋りしながらだったせいか、お仕事モードな真剣な表情の望月さんの横顔が普段のカッコよさに拍車をかけているように見えた。
何だろう?大人の色気、かな?
「どうしたの?俺の顔ばっかり見て」
『えっ!?いや、その…真剣な表情の望月さんって、いつもより断然カッコイイなぁって、思っ、て…』
まさか見ていることがバレるとも思ってなかったあたしは、チークを塗っていても分かるほどに赤面してしどろもどろになってしまった。
改めて鏡越しに望月さんを見ると、真剣な眼差しはそのままに楽しそうに笑っている。
「もうすぐ仕上げだよ」
『何か望月さんの手って魔法が使えるみたいですよね』
「え?」
『だって、鏡に映ってるあたし、来た時のあたしじゃないですもん』
「それなら、俺の魔法じゃなくてなまえちゃんの魔法だよ」
『え?』
「女の子は元々、誰でもキレイになれる魔法がかかってるんだ。俺はそれをお手伝いしてるだけだからね」
普段、工藤くんの笑顔でキラキラスマイルには慣れてるつもりだったけど、この笑顔は不意打ちだった。
そんなこと言われたことなかったから、ズッキュンと来ちゃったじゃないですか。
望月さんはきっとヘアメイクの腕だけじゃなくて、この人柄も人気の秘訣なんじゃないかと改めて感じた。
「さぁ、お姫様。最後は魔法のドレスが待ってますよ」
あたしの隣で笑っている望月さんと鏡越しに視線を交わして、頷いて席を立った。
最初はあんな高そうなドレス着れるかって思ってたけど、ここまでキレイにしてもらうと、逆にあれを着ないと勿体なく思えてしまうのだから不思議だ。
隣に用意されていた着替え用の部屋に入って、ドレスに腕を通すとホントに自分がお姫様になったような不思議な気分になった。
部屋を出て、望月さんに一礼してみると、望月さんはさっきよりも笑みを崩して、
「お姫様、ようこそおいで下さいました」
と恭しく一礼を返してくれた。
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