「え?夢?」
『そう。時々見るんだよね。そういう夢。そんな時は決まって泣きながら起きちゃうの』
とりあえず昨日の正しい顛末を話してみたら、今度は蘭がきょとんとしてしまった。
まぁ、これが普通の反応だろうなとアイスティを一口飲む。
『夢なのか現実なのか分かんなくなっちゃって、落ち着くまでしばらく涙が止まんなかったりするんだよねぇ』
「ねぇ、それって…」
『ん?』
中途半端な所で話を止めてしまった蘭に、どうしたのだろうとそちらを向くと、蘭が戸惑いがちに話を続けた。
「それって、私の夢も見たことある?」
『あるよ?蘭も園子も明日香もあたしから離れて行っちゃう夢』
「そんなことあるわけないじゃないっ!!」
急に怒鳴り散らした蘭に驚いて、再度蘭の顔を見ると、えらく怒ってるような、でもどこか悲しそうな顔をして、興奮のせいで瞳にうっすらと涙を浮かべていた。
「私が…私たちがなまえ見捨ててどっか行っちゃうわけないじゃないっ!!」
『蘭…』
「私、なまえ大好きだもん!絶対なまえ置いて離れて行ったりしないんだからっ!!」
感情を抑える為に拳を握って震わせてる蘭の手の上からあたしの手を被せて、落ち着かせるようにゆっくりと話しかけた。
『ありがとう。その言葉だけで十分だよ』
「違うの!ホントに離れて行ったりなんかしないんだから!!
私も園子も、河野さんだってみんななまえのこと大好きなんだからっ!!!」
『うん…』
「だから、そんな悲しい夢で泣く必要なんかないんだよ?私たちはみんななまえの味方なんだからっ!」
そこまで言うと堰を切ったように蘭が声を上げて泣き始めてしまったので、そっと抱き締めて背中を擦った。
あたしは余計なことを言ってしまったのかもしれない。
友だち思いの蘭が悲しい思いをすることくらい分かっていたはずなのに、どうして言ってしまったんだろう。
なかなか泣き止みそうもない蘭を宥めながら、さっきあっさりと昨日のことを話してしまった自分を悔やんだ。
だけど、それと同時にこんな風にあたしの為に蘭が泣いてくれることに嬉しさで胸が震えた。
蘭、ホントにありがとう。
あたしも蘭が大好きだよ。
大好きだから、離れて行ってしまうのが…置いていかれるのが怖いんだよ……。
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